【研修】就労支援事業所の職員向け「発達障害者の治療について」
こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。
今回ご紹介するのは、発達障害者に選択される治療についてです。主治医とご本人の選択により、発達障害者に対してどのような治療が提供されるのでしょうか?確認していきましょう。
発達障害者に対する治療選択とは
発達障害は、後天的なものではなく生まれながらの脳の構造と機能による先天的な障害とされています。「できないこと」を脳機能の向上によりできるようにする治療が選択されることはほとんどありません。その前提において、提供される治療は「対人技能訓練」と「薬物療法」の2つに大別されます。
発達障害者に実施される対人技能訓練
認知行動療法に基づく、様々技能訓練の中に「社会技能訓練」があります。集団の中で生活を送ることで、他者の考え方に触れ、自身の思考や症状による課題を知覚します。支援者が面談などで、対処方法を考察する機会を提供することで、対人技能の向上を目的とした対処方法を身に着けます。基本的にはグループワーク形式をとり、他者と接して議論を進めることが最大の特徴と言えます。
一般的には精神障害者など、後天的な障害に対して提供される治療選択であり、発達障害のような先天的な脳の器質性疾患の場合には、スムーズに技能を習得することが難しい場合があります。この場合重要となるのが、支援者側のサポートです。社会技能訓練内での、発達障害者本人の様子、課題、特徴、強みなどをアセスメントすることで、苦手なことに対する対処方法を考察します。加えて、考察した方法を本人と共有し、集団生活の中で実践できるようにフォローアップすることが大切です。
発達障害者に実施される薬物療法
大人の発達障害の症状を抑える方法として、服薬による薬物療法があります。薬物は世界各国で開発され、承認、保険適用となっています。以下は注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉スペクトラム症(ASD)のそれぞれで代表的に活用される薬物を見ていきましょう。
ADHD
有名な薬物として、「アトモキセチン」と「メチルフェニデート」があります。
アトモキセチン
- 脳の神経伝達物質であるノルアドレナリンの働きを促進する
- 効果を確認するまでに6~8週間かかると言われている
- 副作用として、眠気、食欲低下、口渇などがある
メチルフェニデート
- 脳の神経伝達物質であるノルアドレナリンとドーパミンを増加させる
- 衝動性の抑制、注意の持続などの効果がある
- 副作用として、食欲不振、不眠、頭痛などがある
ASD
有名な薬物として、「リスペリドン」と「アリピプラゾール」があります。
リスペリドン
- 脳の神経伝達であるドーパミンやセロトニンの作用を調整する
- 気持ちの高まりを抑制する
- 衝動的な行動や混乱、パニックを抑える作用がある
- 副作用として、立ちくらみやめまい、眠気、生理不順などがある
アリピプラゾール
- 脳の神経伝達であるドーパミンを調整する
- 不安や興奮状態の調整
- 衝動的な行動の改善
- 自傷行為の改善
- 副作用として、振戦、不眠、眠気、頭痛、めまいなどがある
就労支援事業所での考え方
集団生活を中心に訓練を提供する就労支援事業所は、発達障害者の治療で言う「社会技能訓練」を常に提供できる環境であるといえます。医療従事者が所属しているわけではないため、治療という考え方ではありませんが、発達障害者本人が集団ではどのように他者と関わっているのか、強みはどのように発揮されているのか、弱みはどのように影響を及ぼしているのか、弱みを克服する方法は?、強みをより活かす方法は?などの視点で向き合うことでアセスメントを実施します。
特有の症状である衝動性や注意力の欠如など、日常生活・社会生活に影響をきたしている場合には、薬物を活用して症状の調整を行います。薬物の中には、正しい用法・用量で、一定期間以上継続すること効果を実感できるものがあり、発達障害者本人の自己判断で服薬を中断することが無いように留意する必要があります。特に、支援者は正しい知識を基に声掛けを行っていく必要があります。
服薬にはそれぞれ特徴的な副作用があり、日中活動への影響を確認することが求められます。もし、副作用が日中生活や就労に影響を及ぼしているのであれば、対処方法をともに検討し、必要に応じて主治医のアドバイスを参考にしながら社会復帰を目指していく必要があります。
まとめ
就労支援事業所は、常に社会技能訓練を提供できる環境であり、発達障害者にとっては貴重な環境です。本人の障害特性を理解した上で、特性が集団に及ぼす影響に要注意する必要があります。また、本人の服薬に対する知識や意識を確認した上で、正しい対処ができているかを知ることも重要です。必要に応じて、主治医との関わり方をサポートする必要があります。
近年は、医療従事者を事業所の職員に含めることで、福祉と医療の連携体制を強化する事例が増えてきました。弊社がサポートする事業所でも、医療福祉連携に取り組んでいる事例が増えてきています。障害者の治療方針や、方針を踏まえて日中生活の状況を確認する上でも効果的です。今後の医療と福祉が連携する体制の中、障害者支援が提供されていくことを期待しています。
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