【制度理解】就労支援事業における「生産活動」とは

　こんにちは！就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。今回は制度理解のコーナーです。障害者総合支援法の条文とその解釈に関する基準を含め、丁寧に確認していきましょう。

　紹介するのは「生産活動」についてです。就労継続支援と一部の就労移行支援で当たり前のように提供されている生産活動ですが、基準上規定されている運用ポイントがあります。しっかりと確認していきましょう。

※当記事は令和3年度の報酬改定時に発表された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準について【新旧対照表】」を参考に作成しています。法解釈は運営している市区町村によって変わる可能性がありますので、事業を実施する地域の管轄市区町村にご確認いただきますようお願い申し上げます

本記事の結論
就労支援事業所における生産活動とは
実務上のポイント
まとめ
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参考資料

本記事の結論

　就労支援事業所は、多種多様な障害者が生産活動に従事できるよう業務のバリエーションを揃える必要があります。更に地域の需要を満たすような生産活動が望ましいとされています。ポイントは、身体的負担、精神的負担、安全性、作業難易度に集約されます。

就労支援事業所における生産活動とは

　「生産活動」は障害者総合支援法上明確に定義されていません。（定義されているかもしれませんが、見つけられていません。）

　基準第28条には、就労支援事業所が生産活動を提供する場合の以下留意点が記載されています。

地域の事情や製品・サービスの需給状況を確認して実施する
障害者の作業時間や作業量が過度な負担にならないように留意する
障害者の特性を理解した上で生産能率の向上に努める
防塵設備や消防設備を整え安全に配慮する

　これらの内容から、事業所側は、障害者に対する身体的・精神的負担の状況、作業内容に関する安全性・難易度に留意する必要があります。

実務上のポイント

　就労支援事業所で生産活動を実施する場合、実務を実施するうえで以下がポイントになります。

作業期間の7割時点で作業完了となるように受注する
職員は障害者と同じ生産活動を実施せず、障害者アセスメントとタイムマネジメントに徹底する
多様な業務を受注して障害者に合った仕事を与えるのではなく、一つの業務の工程分けして障害者に仕事を提供する

　就労支援事業所が沢山の生産活動を受注し、障害者個々に割り振ることができればよいのですが、現実はそう簡単ではありません。障害者の通所率が安定しない場合、事業所の生産力も安定しません。加えて、企業から受注した生産活動には納期があるため、期日に間に合わない場合は、事業所職員がフォローで実施するという場面がよく見られます。

　意識するポイントとして、作業開始日から納期までの7割地点で業務が終了できる量を受注することを意識します。これは、障害者の体調が安定しないことに配慮し、「余力を持った納期設定に努める」という点にあります。加えて、職員が障害者と同じ作業を実施してはいけません。また、受注や納品の手続きも職員が実施しないほうが望ましいです。職員が実施するのは、障害者が作業と向き合っている状態のアセスメントです。アセスメントの目的の一つとして、障害者の作業能力と実施工程の難易度にギャップが生じていないか確認することにあります。

　これらを効率的に実施するためには、業務の受注から納品までの一連の流れを見える化して、個々の障害者とマッチングさせることが必要です。

　全職員で連携し、［業務工程の見え化→各工程で必要となる能力→適した障害者の考察］を進めていくことが安定した生産活動につながります。

まとめ

　就労継続支援事業所では、近年工賃・賃金に関する話題が多く上がります。賃金や工賃を高めるために、「量を受注する」という選択肢を取りがちですが、「作業の質を改善する」という判断も大切です。基準を読んでみると、「質」の定義に役立つような考え方が豊富にあります。是非、再度読み込み、自社施設の運用方法と照らし合わせていただければと思います。

　就労支援事業運営.comでは、国内で就労支援事業所の開業・運営支援を行っております。興味のある方は、お問い合わせください。最後までご覧いただきありがとうございます。