【制度理解】就労支援事業における工賃の支払等について

法理解

【制度理解】就労支援事業における工賃の支払等について

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。今回は制度理解のコーナーです。障害者総合支援法の条文とその解釈に関する基準を含め、丁寧に確認していきましょう。

 紹介するのは「工賃の支払い等」についてです。特に就労継続支援B型事業では、重要な内容になります。障害者に提供されるお金の話であるため、基準の内容をしっかりと確認するようにしましょう。

※当記事は令和3年度の報酬改定時に発表された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準について【新旧対照表】」を参考に作成しています。法解釈は運営している市区町村によって変わる可能性がありますので、事業を実施する地域の管轄市区町村にご確認いただきますようお願い申し上げます

本記事の結論

 就労継続支援B型事業所は、障害者に対して3,000円を下回る工賃の支払は認められません。ただし、障害者の通所日数が明らかに少ない場合などは、都道府県知事の判断により認められる場合があります。

就労支援事業所における工賃とは

 基準第29条に規定されています。

 当基準上、就労支援事業所で生産活動に従事しているもの(障害者)に対して、生産活動の収入と生産活動に必要な費用を差し引いた額を工賃として支払わなければならないとされています。

 当該基準には以下のポイントも記載されています。

  • 就労継続支援B型事業所はサービスの提供にあたり障害者それぞれに支払われる1ヶ月あたりの工賃の平均額を、3,000円を下回ってはならない
  • 就労継続支援B型の提供にあたっては障害者が自立した日常生活または社会生活を営むことを支援するため、工賃の水準を高めるように努めなければならない
  • 就労継続支援B型の提供に当たっては、年度ごとに、工賃の目標水準を設定しなければならない
  • 就労継続支援B型事業所は、「工賃の目標水準」と「前年度に障害者に対して支払われた工賃の平均額」を障害者に通知し、都道府県に報告しなければならない

実務上のポイント

  • 事業所を管轄する都道府県における3,000円を下回る工賃が許容されるラインを確認する
  • 障害者への支払明細書に「前年度の平均工賃額(全障害者を対象とした)」「工賃の目標水準」を記載する

 就労継続支援B型事業所の障害者は、他の移行型、A型と比較すると、障害の重症度が高い方が多くなる傾向です。平均通所日数も下がるため、実際に3,000円を下回る工賃の支払いとなる可能性があります。しかし、基準上は3,000円を下回ることが許されず、都道府県知事に判断を仰ぐ必要があります。事業所の指定を管轄する都道府県に確認した上で、障害者の通所、作業状況を踏まえた支払い工賃の許容範囲を確認することが望ましいです。

 工賃の内容について、前述の通りいくつか障害者に通知するポイントがあります。これらを実務上スムーズに実施するためには、工賃の支払い時に配布される「支払明細書」を活用することでスムーズに情報共有が可能であると考えられます。事業所によって活用している書式が異なるため、実際に自社施設の運営を内容踏まえて確認いただければ幸いです。

まとめ

 就労支援事業を運営するにあたり、生産活動は事業運営の中核を担うほど重要な項目です。そして、生産活動には対価が必要です。事業者は工賃や賃金と表現される障害者への対価に関する基準を十分に理解したうえで、ぬけもれなく実務に反映することが求められます。万が一、対価支払いに関する運用方法を誤れば、障害者と事業者間の信頼を大きく損ねるリスクがあります。十分にご留意いただければと思います。

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参考資料

厚労省HPより

https://www.mhlw.go.jp/content/000762248.pdf