【制度理解】就労支援事業所における「賃金等」について

法理解

【制度理解】就労支援事業所における「賃金等」について

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。今回は制度理解のコーナーです。障害者総合支援法の条文とその解釈に関する基準を含め、丁寧に確認していきましょう。

 今回は賃金等についてご説明いたします。雇用契約に基づく賃金や、利用契約に基づく工賃が該当します。事業所が障害者に支払う場合に、基準上のルールを遵守する必要があります。しっかりと確認していきましょう。

※当記事は令和3年度の報酬改定時に発表された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準について【新旧対照表】」を参考に作成しています。法解釈は運営している市区町村によって変わる可能性がありますので、事業を実施する地域の管轄市区町村にご確認いただきますようお願い申し上げます。

本記事の結論

 事業所は、障害者に支払う賃金および工賃の大原則として、支払う総額は、障害者が実施している作業の利益よりも低い金額である必要があります。工賃については、最低支払額が定まっており、個人の障害者への支払いが、当該金額を下回ることはできません。

「賃金等」とは

 基準附則第8条には、以下のように記載されています。

(要約)

  • A型事業所は障害者の賃金水準を向上させるように努めなければならない
  • B型や移行型に該当する工賃は、生産活動の利益相当額を支払わなければならない
  • 工賃の最低支払い月額は3,000円を上回る必要がある

実務ポイント

 当該基準は就労支援事業所における会計基準を十分に理解した上で、利用者の生産活動による損益状況を正確に把握した上で実施する必要があります。加えて、実務上は以下の点に留意する必要があります。

  • A型事業所は生産活動による利益に相当する金額が障害者に支払う賃金の総額よりも高い金額である必要がある
  • 余剰金は基本的に発生しないが一定の条件下であれば「工賃変動積立金」「設備等整備積立金」を計上することができる
  • 当該基準を満たさない場合には、経営改善計画の提出が必要となる
  • 経営改善計画による改善が見られない場合には事業所は勧告や命令、指定の取り消しなどを検討することがある
  • A型事業所において著しく就労能力が低いまたは低下した障害者に対して、特例的に最低賃金の減額の特例許可手続きを行うことができる
  • B型、移行型が対象となる工賃は、生産活動による利益相当分の金額を障害者に支払う
  • 1月あたりの最低支払金額は3,000円とするが、極端に利用日数の少ない障害者は都道府県知事の判断により当該基準を満たさないことが認められる
  • 利用者への支払いにかかる費用を、訓練等給付金から工面することは認められない

  生産活動による利益から障害者への賃金・工賃が支払われますが、障害者の通所状況により、特例措置を受けることもできます。あくまでも「特例」なので、やむを得ない事態のときのみ、都道府県に対して相談し手続きを進めることを検討してはいかがでしょうか。

まとめ

 工賃・賃金課題は、就労継続支援事業所にとって大変難しい課題です。常に新しい挑戦を行い、生産活動の内容を見直して行く必要があります。ただし、こちらが生産活動を用意しても、障害者の体調が安定しないことには売上につなげることはできません。利益が上がらず、賃金・工賃の支払に苦慮するところでありますが、特例措置など柔軟な対応を踏まえ、進め方を検討いただければと思います。

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参考資料

厚労省HPより

https://www.mhlw.go.jp/content/000762248.pdf