就労継続支援B型とは

就労支援事業の概要

就労継続支援B型事業所は、就労系障害福祉サービス事業所として、他の移行型、A型と比較しても施設数が圧倒的に多いです。これは、他のサービスよりも利用者の確保、生産活動における選択の自由度、利用期限の関係による利用者数が安定しやすいことなどの要因により、事業性が安定しやすいという点が考えられます。ただし、障害の重症度が高い方(障害が重い方)が利用する傾向があり、より専門的な支援を要求される場面があります。

 今回は、就労継続支援B型事業所について、まとめてみたいと思います。

就労支援事業の収支モデルが気になるという方!

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B型の特徴

 就労継続支援B型事業所については、他のサービスと比較して、施設数が圧倒的に多いサービスです。これは、他のサービスと比較したときに、収益性の観点で新規参入しやすいビジネスモデルであるという要因が上げられます。

 では、どのような点が優れているのでしょうか?他のサービスとの違いを含めて、解説していきます。

※個人的な主観による判断も含まれております

就労継続支援B型事業所の対象者は?

 就労継続支援B型を利用する対象者の特徴は以下の3点です。

  1. 雇用契約を締結して働くことは、難しい
    =最低賃金以上の時給をもらって就労活動を行うことは難しい
  2. 就労意欲がある
  3. 最低限の作業能力がある

 就労継続支援B型では、A型と比較し、利用者へ求められる作業難易度(生産力)が低いです。A型事業所では、雇用契約に基づいて最低賃金以上の賃金の支払いが実現しうる生産活動を実施する必要があります。しかし、B型事業所ではその必要がありません。この違いにより、A型事業所では、仕事を確保した上で利用者をつけることが大切ですが、B型事業所では利用者を確保した上で仕事をつけることが大切です。結果的に病気の重症度が高い障害者が集まります。

障害の重症度が高いとは?

 精神障害の中でも発症数が多い「うつ病」の場合、症状として「抑うつ気分、不安、ポジティブ思考の停止、自傷行為」などがあります。これらの症状から、「食欲不良、睡眠バランスの乱れ、倦怠感、自律神経の乱れ」などが生じます。

 重症度が高いということは、症状が「高頻度」かつ「持続的」、「不規則」に起こりやすいと考えられます。利用者は本来、医療機関との関りで、病状を服薬で調整し事業所に通所しています。しかし、中にはまだまだ服薬習慣が安定せず、病状が不安定という利用者も多いです。このことからも、B型事業所では生活面の課題が大きい方が多いかもしれません。

利用可能な期間は?

 定めがありません。

 加えて、前項に記載したように作業意欲があり、最低限の就労活動を実施できる方であれば、65歳を超えても利用者として在籍することができます。

 ※就労支援事業所の利用判断は、利用者の住所を管轄する行政窓口が最終的に行います。

ビジネス上のメリット

 冒頭で御伝えした通り、B型事業所は、他のサービスとビジネスモデルを比較したときビジネスメリットがいくつか見られます。

 代表的なポイントは以下の通りです。

ストックビジネスであるという事

 B型事業所の場合、利用者に利用期限はありません。事業所と一度契約すると、何十年も利用することができます。

雇用契約が不要という事

 B型事業と就労移行支援事業は、障害者と施設間の雇用契約は不要です。別で利用契約に基づいた契約関係が発生します。

 A型事業所では、利用者と雇用契約を締結するため、利用者に対して労働基準法に基づいた労働対価を支払います。つまり、最低賃金以上の給料を支払う必要があります

就労継続支援A型事業について気になる!という方

こちらを参照

就労継続支援A型事業所

 よって、B型事業所では、利用者に「作業」と「活動」を提供します。「労働」ではありません。

 この違いにより、B型では利用者の作業実績に応じて対価(工賃)を支払います。(ある意味、B型の利用者一人一人が業務委託を請け負うフリーランス?とも解釈できます。)同じ事業所で、同じ1時間の作業を行ったとしても、施設が支払う工賃は、利用者それぞれ異なるということです。

就労継続支援B型事業所で用意する作業については「自由」

 B型事業所で実施する作業は、A型と比較しても自由度が高いです。理由は、最低賃金以上の利益が上がる生産性が最低条件とされていないため、作業単価を気にせずに仕事を受注できるからです。

 A型事業所では、利用者に支払う給料は、原則として、利用者が事業所で行う仕事の利益から支払わなければなりません。A型を運営するためには、利用者に最低賃金以上の給料を支払えるように、仕事を提供する経営資源が必要です。

 一方、B型事業所では、最低賃金以上を支払う原則はありません。施設で提供される仕事は、事業所が自由に選択することができます。

 令和3年の法改定により、B型事業所は、利用者に支払われる工賃の平均額に応じて、国から受給する基本給付金単価が変わることになりました。事業所は、A型同様に高い生産性の確保が経営課題となりました。

例)B型事業所で実際に行われている作業
DM発送の代行、データ入力、オークションの発送代行、封筒のラベル張り、ポスティング など

B型事業所の問題点

 B型事業所は、A型、移行型と比較しても、利用者の継続利用や支出という点でビジネスモデルが優秀でした。しかし、それと引き換えに課題もあります。以下は主要例です。

施設数が圧倒的に多いため、集客に苦戦する

 事業所数は他のサービスと比較して圧倒的に多いです。地域の社会福祉法人だけでなく、営利法人も参入していることから、施設づくりや広報戦略をうまく立案しないと利用者は集まりません。市場はレッドオーシャンです。

 新規で事業所を立ち上げた場合、利用者0人からスタートします。売上が0円の状態で、人件費や地代家賃などのランニングコストがかかります。
 20人定員の事業所であれば、先ずは平均12人くらいの利用者が施設に通う状態まで、いかに早く達するかが事業成功のポイントとなります。

 今では、集客に時間がかかることが明確なため、継続運営の体力となる「資本力」が事業の鍵となっています。

※集客がうまく進まず、閉所する事業所が増加しています。

障害者の「成長の場」ではなく「居場所」で完結してしまっている

  就労支援事業の事業概要を見てみましょう。

 就労支援事業所は、いずれのサービス種別でも必ず「就労に必要な知識及び能力の向上」という表現が含まれています。この言葉が意味する通り、就労支援事業所は障害者のステップアップの場である原則を忘れてはいけません。

 近年は、事業所数が増えていることもあり、制度方針としても支援の質や実績を重視する傾向になりました。今までは、居場所として提供することで成り立っていた事業モデルも、障害者のステップアップを提供できなければ収益性が減少していくビジネスモデルにつながっていく傾向です。

施設利用者の高齢化

 B型は利用期限がありません。事業所としても、「障害者の居場所」として確立できたこともあり、長期間事業運営を行っていると、利用者が高齢化するという問題が顕在化します。

 この記事を読んでいただいている経営者に質問です。「利用者を増やすこと」と「利用者を卒業させて一般就職につなげること」どちらを優先して戦略立てるでしょうか?

 経営の視点により変わるかと思いますが、資本力に乏しい小規模な事業所としては、先ずはキャッシュフローを安定させる戦略を優先すると思います。

 B型事業所では、利用者は無期限に施設利用できるため、一度契約した利用者が卒業するということは珍しいです

 この状況であれば、運営を続けていくにつれて利用者が高齢化することは当然です。結果的に、高齢化による生産性の低下という新たな課題に直面しているということになります。

 就労支援事業所はサービスの種類が異なったとしても、利用者の最終ゴールは「一般就職」と「職場定着」であると位置づけています。このことから、就労継続支援事業所でも、一般就職と定着の実績を残している事業所は、経済的に評価されるようになっています。

通所できていない利用者の増加

 就労支援事業所は、施設の大きさや職員数の基準により、利用者の定員数が決まっています。定員は「1日に施設に通所しても良い利用者の人数」を意味しています。契約自体は、何名の障害者と締結しても大丈夫です。

 このように、施設と利用契約を締結している利用者のことを「登録者」と表現することが一般的です。前述した通り、B型事業所は他のサービスよりも、障害が重い方が登録されやすい傾向があります。よって、障がい者を安定して施設に通所させることができるノウハウや、支援の質が担保されていないと通所できなくなる利用者が出てきます。

 就労支援事業は、施設の通所率が低いと経営悪化してしまうので、より登録人数を増やす必要があります。無事に登録人数が増えたとしても、B型事業所の場合は、後述する「平均工賃」という考え方があります。これは、施設と契約している利用者が100人いて通所率が50%の事業所と、登録者が50人いて通所率が100%の事業所では、後者の方が単価が上がるという構造です。

 これらの課題に対しては、通常の基本報酬以外に、加算などを有効活用し、支援品質を向上させる戦略が必要になります。

平均工賃による単価の起算

 B型事業所では、出席率が高く、かつ、生産性の高い作業を提供することが事業成功のポイントとなっています。特に、事業所の基本報酬が登録者一人当たりに支払われる工賃の平均で決まる仕組みという要因による影響が大きいです。もし、ある利用者が休みとなり、更には早退等により1日当たりの工賃が下がってしまうと、利用者一人当たりに支払われる平均工賃の全体額が下がってしまい、基本報酬の低下=経営の悪化を招くことになります。

 経営悪化を防ぐためには、現場支援の戦術的な話ではなく、戦略的に支援の質を向上させる必要があります。援に質の向上については、本サイトの大テーマとして検討し、記事にしていきたいと思います。

まとめ

 就労継続支援B型は、一見合理的で成功しやすいビジネスモデルのように感じます。しかし、重症度の高い障害者が利用することや、実績が問われる近年の制度改定により、専門性の高いサービス提供がポイントとなっています。

 そのためには、日常ルーティンの業務をなるべく効率化して、対利用者にかける時間を増やしていく意識が必要です。就労支援事業所向けの業務効率化について、所感を踏まえて発信していきたいと考えています。

 個別に、就労支援事業所の開業・運営サポートを行っていますので、気になる方はお問い合わせいただければと思います。

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