就労支援事業所の開業ステップ3_資金計画(収支シミュレーション)を実施する

就労支援事業所開業マニュアル

就労支援事業をボランティアではなく、事業として運用するのであれば、資金計画は最も重要です。経営者として、1円でも資金不足(ショート)を起こした場合に倒産となります。従業員だけでなく、障害者にもお金を支払えなくなり、大きな社会的信頼を失うことになります。

 就労支援事業のようなソーシャルビジネスは、資金計画が難しいことも特徴です。その理由を記載させていただきます。またこの記事の後半に、実際に収益シミュレーション(P/L)を掲載いたします。

※今後配布機能も加えたいと思います

少しでも皆様の参考になれば幸いです。

資金計画の目的

  • 必要資金の試算
  • 必要資金の調達方法を計画する
  • 資金の回収期間を精査

 就労支援を事業として実施するなら、「投資」と「回収」が大変重要です。福祉となじみのない言葉ですが、経営者としてこの視点は忘れてはいけません。もし、経営者として最高の支援を障害者に届けたいと思うなら、安定した事業基盤を構築することに集中いただければと思います。

資金計画のポイント

  • 就労支援事業所は固定費額が大きい「箱ものビジネス」
  • キャッシュインまでにタイムラグが発生する

 就労支援事業で難しいのが、「施設要件」を満たしたうえで指定を受ける(開業する)ということです。よほどうまく進めない限り、開業初期は利用者0人で運営がスタートします。しかし、物件や定員人数(施設の規模に応じて決める施設で受け入れる利用者人数)に対して、人員の配置基準もあります。地代家賃や人件費は、売上0円でも発生することになります。

 まずはこのポイントを押さえたうえで、資金計画を作成する必要があります。

資金計画で作成するもの

  1. 損益計算書(P/L)
  2. キャッシュフロー計算書(C/F)
  3. 貸借対照表

 財務諸表を作成しましょう。各項目の細かい説明は割愛します。しかし、ビジネスを実施する場合きわめて重要な基本的な書式となります。財務諸表をきめ細かく作成できるということは、この事業の運営上のポイントや課題を把握していることの裏付けです。現金を貸してくれる銀行も、財務諸表の内容に加えて細かい質問を通じて、お金を貸す価値のある経営者か判断します。事務所表ってなに?という方は、様々な金融サービスを行っている金融サービスの会社がHPにまとめていますので、そちらをご覧ください。

資金調達の方法とは

 初めて起業に挑戦する人の最初の挑戦は資金調達であると思います。最初に概要をつかみ、就労支援事業にとって適切な方法で計画を立てましょう。

そもそも資金調達とは?

 事業に必要な資源は「ひと」「もの」「かね」と言われます。就労支援事業も同じです。事業にかかるお金を会社の通帳にしっかりと確保する必要があります。ここで言うお金というのは、「現金」「普通預金」の様に、すぐにお札として自分で使えるものをいいます。この言葉を簿記の用語で「流動資産」とも表現します。もし、ご自身が土地をもっていたとして、「明日100万円足りないか、土地の一部を売ろう!」といっても、すぐに現金になりませんね?こういった性質の資産を「固定資産」と表現します。

では、どのようにすれば会社の通帳にお金を入れることができるでしょうか?

 最も簡単な方法は、自分自身のお金を入金することです。

 単純に振り込んではだめですよ笑

 このお金は、事業の運転に使う資金であると根拠づける必要があります。株式会社では資本金(出資金)という位置づけになります。法人格によって言い方や考え方が変わりますので、ご留意ください。

 このように資金調達とは、事業の開店や運転資金として使える「流動資産」を確保することがポイントです。

アセット・ファイナンス

 固定資産を売却することで現金に変える方法も立派な資金調達です。もともと事業を行っていた場合、何か設備や事業用に購入している車などが対象です。このように、固定資産を売却して資金を調達する方法を「アセット・ファイナンス」といいます。

エクイティ・ファイナンス

 あなたの事業が魅力的で、急成長が期待できる会社であれば、第3者が「投資したい」と考えるかもしれません。出資金により資金を調達する方法を「エクイティ・ファイナンス」といいます。投資する人もボランティアではないので、自分が出したお金が、何倍もの価値になることをきたしています。企業の価値が何倍にもなる一つのポイントとしては、「上場」する工程があります。

 就労支援事業のようなソーシャルビジネスは、国の基準で運用することから、運営方法も公の情報です。よって、情報格差がありませんので、第3者から出資を募るには、出資者のメリットが少ないことも考えられます。

デッド・ファイナンス

 負債を活用して現金を調達する方法を「デッド・ファイナンス」といいます。負債とは、つまり返す必要のあるものをいいます。銀行から借りたり、車を買うためにローンを組むということがイメージできますね。あなたは人にお金を貸すか検討する場合、何か基準はありますか?相手が信用できなければ貸すことはありませんよね?それが大金となればなおさらです。銀行も同じ考えです。事業が健全であり、しっかりとお金が利息付きで銀行に帰って来ることが保証されれば、安心して資金を貸してくれます。

 就労支援事業は、事業の売上を国民健康保険団体連合会という国から回収する仕組みです。公益性もある事業なので、銀行が協力してくれる事業であるともいえます。初めて資金調達を実施する場合、日本政策金融公庫の創業有志が一般的です。直接窓口でお話いただくか、初めてで不安という場合には、個人でサポートも行っておりますのでお気軽にお問合せください。

その他にも方法はあるのか?

 資金調達の方法は、そのほかにもいくつかあります。例えば、助成金や補助金などの資金援助を受けることです。就労支援事業の様に、公益性の高い事業は、諸要件を満たして受給する助成金などの活用を検討できます。金額が小さいと思われがちですが、大きな誤解です。メニューによっては、数百万円の資金サポートを受けることが可能です。ご自身が運営する事業で活用できる助成金が無いか、しっかりと検討していただければと思います。

資金計画を作成してみる

 資金調達の概要を捉えたところで、実際に資金計画を作成してみましょう。資金計画を作成する目的は前述の通りです。就労支援事業を運営するにあたって、いくら必要で、どのくらいで回収できるのか試算してみましょう。

【見本の前提条件】

  • 収益シミュレーションのみ掲載いたします
  • 就労移行支援事業所の運営と仮定しています
  • 2021年4月から指定を受けて事業を開始したと設定しています
  • 2021年4月~2022年3月までの計画です

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 見てみると、利用者人数が12名になった時期(2021年10月)に営業利益が黒字になっています。延営業利益でみてみると、最大で金額が下回った(支出した)タイミングが2021年9月となり、赤字額は約600万円となっています。

計画作成の留意点

  • サンプルは月次収支の経過でしかない
  • 資金繰り意識とキャッシュフローを計算する必要がある
  • 初期投資が発生することを忘れてはいけない
  • 指定申請を受けるまでに6か月くらい必要であることを忘れてはいけない
  • 計画作成時は体裁ではなくメッセージにこだわりを持つ

 この計画書サンプルを見て、「よし!1000万円くらい確保できれば事業になるな!」と思った方は要注意です。収支シミュレーションは月次の収支の経過を見たものにすぎません。例えば、2021年10月の売上高_186万は、実際に会社のお金になるタイミングは2か月後です。しかし、同月の人件費は1か月後に支払います。単月の収支で見れば黒字ですが、お金は先に出ていきます。この状況の最たるものが、いわゆる「黒字倒産」という状態です。事業を継続する上で「ひと」「もの」「かね」の資源は、必ず手元に残っていなければなりません。

 計画書の作成は、Excelなどの表計算ソフトを用いることで簡単に作ることができます。表の作り方は個性が出るところなので、この記事では言及しません。ポイントは、計画を作成する目的を見失わないことです。(ついうっかり、レイアウトにこだわってしまい、伝えたいメッセージを見失うことがあります。)当然、この計画を見せる相手によってもメッセージは異なります。この点を注意して、是非ご自身で数値を入力していただければと思います。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?ソーシャルビジネスでも、経営を行うのであれば資金のことを考えなくてはなりません。慣れてくると、収支計画の作成もポイントを捉え、確度の高い情報になります。今回は、財務諸表の中でも、損益計算書(P/L)の一部のみを参考としました。本来であれば、営業外の収支(助成金など)や、法人税を加味して、経常利益や当月の純利益まで算出する必要があります。このあたりの感度を持たずに福祉事業にトライして、行き詰ってしまう経営者も多いのが実態です。

 個人で、経営者様の就労支援事業に関する計画づくりや立ち上げサポート、資金調達のサポート、各種帳票類の作成も行っています。関心のある方はお気軽にお問い合わせください。

 最後までご覧いただき、ありがとうございました。