注意!在宅でのサービス提供により事業所運営と実績はどうなるのか?

令和3年度報酬改定

新型コロナウイルス感染症の影響により、障害福祉サービスは市区町村との連携のうえ、感染拡大対策となりうる柔軟なサービス提供が進められました。その対応のひとつに「在宅でのサービス利用」があります。この措置により、本来通所時でないと認められないサービス利用が、いくつかの要件を満たすことで在宅でも認められるようになりました。

令和3年度の報酬改定により、多様性のある就労実績の獲得に向けて、この在宅でのサービス利用を「常時取り扱い可能」とする改定案が報告されています。果たして、在宅でのサービス利用は、赤字運営の就労系サービスの救世主となりうるのか。それとも、赤字を加速させる結果となるのか。個人の見解を記載いたします。

在宅でのサービス利用とは?

新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、厚生労働省が就労系サービス向けに通知文を発表しました(第1~7報まで)。その対応の一つに、障害者の通所利用が困難であり、在宅での支援がやむを得ないと市区町村が判断した障害者は、事業所に通所することなくサービスを利用した実績とカウントできる措置です。実現には、事前の準備要件と支援の要件を満たす必要があります。

令和3年度の報酬改定は、当措置の運用実績を踏まえて、一部の利用者は在宅支援でも訓練・支援効果があると判断し、令和3年4月以降は常時取り扱いとする改定案を発表しました。

在宅でのサービス利用の要件

新型コロナウイルス時の臨時措置時と報酬改定後で多少異なります。

以下、前後の運用内容。

No臨時措置時報酬改定後
1対象利用者は、通所利用が困難で、在宅による支援がやむを得ないと市区町村が判断した利用者。在宅でのサービス利用を希望するものであって、在宅でのサービス利用による支援効果が認められると市区町村が判断した利用者。
2在宅利用者が行う作業活動、訓練等メニューが確保されていること。同左
31日2回の連絡、助言または進捗状況の確認、日報作成を行うこと。作業活動、訓練等の内容等に応じ、1日2回を超えた対応を行うこと。同左
4緊急時の対応ができること。同左
5疑義紹介等に対し、随時、訪問や連絡等により必要な支援が提供できる体制を確保すること。同左
6事業所職員の訪問または利用者の通所により、評価等を1週間につき1回は行うこと。事業所職員の訪問、利用者の通所または電話・パソコン等のICT機器の活用により、評価等を1週間につき1回は行うこと。
7原則として、月の利用日数のうち1日は事業所に通所し、事業所内において訓練目標に対する達成度の評価等をおこなうこと。原則として、月の利用日数のうち1日は事業所職員による訪問または利用者による通所により、事業所内において訓練目標に対する達成度の評価等を行うこと。
86が通所により実施され、7の評価も同時に遂行できれば、まとめて実施されてもよい。同左
その他 在宅と通所による支援を組み合わせることも可能。

結論、改定後は在宅でのサービス利用をより柔軟に取り扱う要件案となっています。

運用のイメージとしては、施設を利用する障害者と、原則1か月に1回顔を合わせることで、利用を継続できるという要件です。

在宅でのサービス利用の対象となりうる障害者

新型コロナウイルス禍では、感染症による重症化リスクが高い方を中心に活用されていました。報酬改定後は、2つの条件がそろった場合となります。

報酬改定後の条件

①障害者本人が希望する

②市区町村が支援効果があると判断する

個人的な所感として、②については、事業所側から強い根拠を市区町村に訴求できなければ対象者となりえないように感じます。

例えば、「体調が安定しないため、在宅で利用を行って生活リズムを構築します。」という理由は、おそらく棄却されると考えています。なぜなら、リモートワークによって心身に不調実感する者が増えていることが報告されており、いわゆる「テレワークうつ」という言葉も広まっているからです。

②を実現するためには、以下の要件がポイントになると考えています。

  • 障害者本人がリモートワークを中心とした企業への就職を希望している
  • 既に通所率が8割を超えており、通所を休んだ場合に在宅でできる限りの作業を実施する支援計画をさくせいした
  • 月に2回の通院時のみ移動負担を軽減するため在宅で支援を実施する計画を立てたとき

事業所側は、体調が悪いから在宅を利用するではなく、在宅でサービスを利用することが利用者の就労に向けた相乗効果があるポイントを、市区町村に訴求する必要があります。

在宅でサービスを障害者に対する体調悪化の防止策

大きく5つの対策が必要です。

  1. 椅子に座った状態が長く続くことに対する対策
  2. 孤独感を感じる環境に対する対策
  3. プライベートと就労支援の切り替え
  4. コミュニケーション上のストレス対策
  5. 運動不足・食事への指導

これらの対策に対する具体的対応方法は別途記事にしていきます。

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在宅でのサービス利用のメリット

  • 欠席日数が減るため短期的に基本報酬額が上がる
  • ICTツールの導入が必須となるためペーパレスの支援プラットフォームを整備できる
  • 障害者のICTリテラシーが高まる
  • 現代の多様性のある働き方に親和性のある取り組みとなる

在宅でのサービス利用時の留意点

  • 中長期的な事業所評価が下がる可能性がある(一般就職実績や賃金・工賃などの生産性評価)
  • 市区町村担当者の判断により全国で平等な許可判断が整備されない可能性がある
  • 障害者の成果物を正しく評価できないと所要時間に対する支援効果が低くなる可能性がある

まとめ

ICTを活用して、誰でもどこでも支援を受けられるというのは素晴らしい取り組みです。ただし、現時点では制度設計直後ということもあり、支援品質や効果的な運用方法は企業努力による側面が大きい状態です。加えて、「福祉」の定義でもあるように、誰でも平等に最低限の幸せを提供されるものであるなか、市区町村担当者による判断は属人生の強い解釈です。結果的に、平等性が損なわれる結果とならないかが大変不安でもあります。

経営者にとっては、1~6か月程度の短期間では増収増益につながると感じますが、1~2年の中長期間でみると、減収のリスクが大きいことも、本改定の特徴であると感じます。

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