【就労支援事業の報酬改定】就労継続支援A型のスコア方式における「多様な働き方」を考察

令和3年度報酬改定

【就労支援事業の報酬改定】就労継続支援A型のスコア方式における「多様な働き方」を考察

 こんにちわ!就労支援事業運営.comの管理人です。国内で、就労支援事業所の開業・運営支援を行っています。今回は、令和3年度の就労支援事業の法改定において、就労継続支援A型事業に新たに導入されるスコア方式について現在の情報を踏まえ、運用を考察したいと思います。

 前回、前々回と就労継続支援A型事業所のスコア方式について考察しています。

 ポイントは、就業規則等を令和3年3月中に見直しすことにあります。全部で5つの項目があるなか、可能な限り「Ⅲ多様的な働き方」、「Ⅳ支援力向上」に関して体制を整備する必要があります。(実態のある取り組みに限る)

 今回は、この中で「Ⅲ多様な働き方」について考察したいと思います。

※本記事投稿時点(令和3年3月23日)では、令和3年度法改定における最終的な報酬告示と留意事項通知は発表されていません。個人の見解も含まれています。解釈は、施設を管轄する市区町村に確認を取ったうえで、自社の責任で取り組んでいただきますよう、お願いいたします。

「Ⅲ多様な働き方」で得点を落とさないポイント

  • 多様性の目的を十分に理解する
  • 本来、就労支援事業所は障害者に対して柔軟な労働環境を提供しているため、令和2年度の実績に本目的に則した取り組みが存在するか確認する
  • 就業規則は毎年度4月1日時点での整備状況が反映されるため、令和3年3月31日までに就業規則を整備することで最低5点を確保する

就労支援事業所における「多様な働き方」とは

 多様性とは「幅広い性質の異なる群が存在する」という意味で用いられます。近年は、ダイバーシティという言葉で表現されることも増えてきました。

 世の中に新しい技術が増え、イノベーティブな発想を持った取り組みが行われるようになりました。今まで否定されていたものを、技術力、発想力をもって取り組めるように変化させることがポイントにあります。

 本来、「多様性」には広い意味があります。就労継続支援A型事業所のスコア方式における多様性は、以下に対する具体的な担保であると言い換えられます。

  • 障害者の労働時間に関する柔軟性
  • 障害者の進路に関する可能性
  • 障害者のライフワークバランスに関する考え方

 各項目の特徴を理解し、目的を理解したうえで組織整備を進めていく必要があります。 

「Ⅲ多様な働き方」の評価要素と配点の仕組みは?

評価要素

 以下の8つの評価要素で構成されています。

  1. 免許及び資格の取得の促進並びに検定の受験の勧奨に関する事項
  2. 当該就労継続支援A型事業所の利用者を、職員(利用者を除く)として登用する制度に係る試験等の手続、対象者の要件及び採用時期に関する事項
  3. 在宅勤務に係る労働条件及び服務規律に関する事項
  4. フレックスタイム制に係る労働条件に関する事項
  5. 1日の所定労働時間を短縮するに当たり必要な労働条件に関する事項
  6. 早出遅出勤務に係る労働条件に関する事項
  7. 時間を単位として有給休暇を付与又は計画付与制度の取得に関する事項
  8. 従業者が私的に負傷し、又は疾病にかかった場合の療養のための休暇の取得に関する事項

評価方法

 任意の5項目を選択します。各項目、以下の実態を確認します。

①就業規則等への整備状況

②実績

 それぞれ満たすことで1点づつ加算されます。

点数構成

 評価方法において算出されたスコアに応じて、以下の4パターンがあります。

  1. 任意の5項目の合計点が8点以上_35点
  2. 任意の5項目の合計点が6~7点_25点
  3. 任意の5項目の合計点が1~5点_15点
  4. 任意の5項目の合計点が0点_0点

優先的に取り組む課題

 現行の制度(令和3年3月31日まで)に基づいて運用した場合、なかなか本項に当てはまる就業環境を整備している施設は珍しいと感じます。ただし、就労支援事業所は障害者に対して、普段から柔軟な勤怠の取り扱いを行っているものと推察します。

 まずは、自社の就労継続支援A型事業所と相性の良い5項目を選択し、令和3年4月1日までに就業規則を整備する必要があります。加えて5項目の中から実績が存在する1項目を選択し、合計6点で25点のスコアを確保することが優先的に取り組む課題であると考えています。

 尚、就業規則を変更した場合、労働基準監督署や行政に体制変更届の提出が必要となることにも留意が必要です。

まとめ

 障害福祉サービス等にも「多様性」という表現が出てくるようになったことは大変素晴らしいことと感じています。現在の多様性は労働時間や進路に関する事項が中心です。障害者の中には、柔軟性を苦手とするケースも散見されることから、不用意に柔軟な時間体制を整備することが、内部統制の悪化につながるリスクはあると感じます。目的に則した、柔軟な経営判断の中、報酬改定に対応いただければと思います。

 現在、全国の就労支援事業所の開業・運営サポート、業務体制改善等をご支援しております。気になることがあれば、遠慮なくご連絡ください。最後までご覧いただきありがとうございます。

参考情報

厚労省HP:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16573.html

岐阜県HP:https://www.pref.gifu.lg.jp/page/26472.html