【就労支援事業の報酬改定】A型スコア方式について経営インパクトを軽減する方法を考察

令和3年度報酬改定

【就労支援事業の報酬改定】A型スコア方式について経営インパクトを軽減する方法を考察

 こんにちわ!就労支援事業運営.comの管理人です。国内で、就労支援事業所の開業・運営支援を行っています。今回は、令和3年度、障害福祉サービス等報酬改定における、就労継続支援A型事業所の改定に内容について記載します。

 令和3年4月は障害福祉サービスの報酬改定があります。令和3年2月4日に、厚生労働省報酬改定検討チームより、改定案が発表されました。障害福祉サービス全体に対する内容です。中でも、就労系サービスについては、支援品質や継続可能なサービスとするための改定案が発表されています。

 就労継続支援A型については、この改定により「スコア方式」が導入され、事業所間の支援品質、実績の差が見える化されます。内容を確認し、経営打撃を最小化するための施策を考えていきましょう。

※この記事を作成する段階では、令和3年度報酬改定における最終確定した報酬告示は発表されていません。改定案を根拠とした情報となります。最終的な解釈は、管轄の市区町村に確認を取ったうえで進めてください。

本記事の結論は「早急に社労士に相談の上、就業規則の改定」

 スコア方式を大きく捉えると、「障害者の活動」と「社内規定」の2つに分けることができ、全部で5つの項目から評価を行います。現行の制度では、障害者の平均就業時間のみで判断していたため、大きな視点の変化と感じています。

労 働 時 間 
生 産 活 動 
多 様 な 働 き 方 
支 援 力 向 上 
地 域 連 携 活 動 
計 価 指 慓 
ー 1 日 の 半 均 労 働 時 筒 に よ り 評 価 
前 年 度 及 び 前 々 年 度 に お け る 生 産 活 動 収 支 の は 況 に よ り 評 価 
ー 利 用 者 が 多 様 な 働 き 方 を 実 現 で き る 制 度 の 整 状 況 と そ の 活 用 
ー 職 員 の 4 : ャ リ ア ッ プ の 機 会 を 組 は と し て 提 供 し て い る 等 、 支 援 
ー カ 同 上 に 係 る 題 実 物 に よ り 評 価 
一 地 元 企 業 と 遽 携 し た 高 付 加 価 の 商 品 開 発 、 施 設 外 就 労 等 に よ 
ー り 物 く 場 の 確 保 等 地 域 と 連 携 し た 取 組 実 に よ り 評 価 
判 定 ス 「 ] ア 
5 点 ~ 8 0 点 て 評 価 
5 点 ~ 4 0 点 で 評 価 
0 点 ~ 3 5 点 で 評 価 
0 点 ~ 3 5 点 で 評 価 
0 憲 ~ 1 0 点 で 評 価

 障害者の活動で見込まれる点数は、おおよそ検討がつきます。よって、社労士等と連携し、社内規定を整備することで、社内規定が関係するスコアは、高得点を確保する必要があります。

就労継続支援A型事業所における報酬改定の内容

A型スコア方式は、以下の5項目と点数で構成されています。

  1. 労働時間(5~80点)
  2. 生産活動(5~40点)
  3. 多様な働き方(15~35点)
  4. 支援力向上(15~35点)
  5. 地域連携活動(0~10点)

1,2はA型の障害者の活動に対する内容です。一般的な継続支援A型事業所の運用であれば、ある程度点数が想定されます。

3~5は、労働環境に関する項目のため、就業規則等に自社の方針を規定する必要があります。この労働環境の見直しを行い、スコア方式で高得点の確保が必須となります。

A型スコア方式のゴール

 合計得点で、105点以上を確保する必要があります。理由は、105点と104点で基本報酬単価が大きく変わってくる点にあります。

ス 」 ア 合 計 点 
点 
2 0 0 点 
ス コ ア 合 計 点 
1 川 点 以 上 
150 点 以 上 170 点 耒 満 
130 点 以 上 150 点 未 満 
ー 05 点 以 上 ー 30 点 未 満 
80 点 以 上 105 点 耒 満 
60 点 以 上 80 点 未 満 
団 未 満 
※ 従 業 員 配 置 7.5 : 
ト 報 物 
724 年 位 / ロ 
692 申 位 / ロ 
676 単 位 / 日 
555 単 位 / 日 
527 年 位 / ロ 
413 単 位 ′ 旧 
引 9 単 位 / 日 
定 員 20 人 以 下 の 場 合 の 単 位

 従業員配置が7.5:1の場合、105点以上と104点以下で、128単位変わってきます。定員20名の事業所であれば、約100万円/月の経営インパクトになります。

(例)月のインパクト算出例

128単位×30人(施設外を含めた利用者の平均通所人数)×10.8円(平均地域加算)×22日(開所日数)=912,384円

 このことからも、就労継続支援A型事業所は、スコア方式を用いて105点以上の確保を目指していきたいところです。

A型スコア方式でゴールを達成するポイント

 事業所の運営により異なります。しかし、大多数の就労継続支援A型事業所であれば、3~5の項目で、60点以上の確保が必要となります。

1.労働時間のスコア

 多くの就労継続支援A型事業所が40点になると仮定しています。これは、平成30年の報酬改定で、労働時間を4時間15分前後に設定する事業所が増えた点が上げられます。

 よって、40点の算出となります。

ー 労 働 時 聞 
1 日 の 平 均 労 働 時 聞 の 
・ 1 日 の 平 均 労 働 時 問 
ロ 日 の 平 均 労 働 時 」 が 長 い ほ ど 、 物 用 者 の 賃 金 増 加 に つ な が る こ と や 、 支 援 コ ス ト が か か る と 考 え ら 
れ る た め 、 自 日 の 平 均 労 働 時 間 」 に よ り 評 価 
前 年 度 に お い て 、 用 契 約 を 締 結 し て い た 利 用 者 の 労 働 時 聞 の 合 計 数 を 当 談 利 用 者 の 合 計 数 で 除 し て 算 出 
し た 事 業 所 に お け る 一 日 当 た り の 平 均 労 一 時 聞 数 に よ っ て 8 段 の 評 価 - 
7 時 聞 以 上 
6 時 聞 以 上 7 時 聞 未 満 
5 時 問 以 上 6 時 問 未 着 
4 時 聞 分 以 上 5 時 聞 未 満 
: 川 点 
55 点 
- 45 点 
4 時 聞 以 上 4 時 聞 分 未 満 
3 時 聞 以 上 4 時 聞 未 満 
2 時 問 以 上 3 時 問 未 
2 時 聞 未 満 
令 和 3 年 度 の 報 の 取 い と し て 、 一 平 成 年 度 一 一 令 和 元 年 度 一 
価 す る こ と を 可 と す る . ( ※ ) 
点 
- 5 点 
ー 令 和 2 年 度 一 い す れ か の 実 績 で 評

2.生産活動のスコア

 多くの事業所で5点になると考えられます。就労継続支援A型事業所内で実施する生産活動で、障害者の賃金以上の収支を得ることは容易ではなく、ほとんどの事業所がクリアできていない水準だからです。

( 評 価 要 素 ) 
・ 前 年 度 及 び 前 々 年 劃 : お け る 生 産 活 動 収 支 の 状 況 
( 評 価 の 視 点 ) 
生 産 活 動 収 支 の 状 況 カ 全 で あ る こ と は 、 利 用 者 の 責 金 確 保 、 水 準 に も 大 き く 影 響 す る こ と か ら 、 事 業 所 
の 生 産 活 動 収 支 の 状 況 に 基 づ き 評 価 を 行 う . 
前 年 度 及 び 前 々 年 度 の 各 年 度 に お い て 生 産 活 こ 係 る 事 業 の 取 人 か ら 生 産 活 動 に 係 る 事 業 に 必 要 な 経 費 を 
擁 除 し た 離 に 相 当 す る 金 額 ( 以 下 、 生 産 活 動 収 支 と い う . ー が 、 利 用 者 に 支 払 う 金 の 総 以 上 で あ る か に 
よ っ て 4 段 階 価 の 価 - 
前 年 度 及 び 前 々 年 度 、 生 産 活 動 収 支 が 、 物 用 者 に 支 払 う 金 の 総 以 上 で あ る . 
前 年 度 の 生 産 活 動 収 支 が 、 利 用 者 に 支 払 う 實 金 の 総 額 以 上 で あ る 。 
前 年 度 の 生 産 活 動 収 支 が 、 利 用 者 に 支 払 う 金 の 総 未 で あ る 。 
前 年 度 及 び 前 々 年 度 、 生 産 活 動 収 支 が 、 物 用 者 に 支 払 う 金 の 総 素 満 で あ る . 
( そ の 他 ) 
剿 点 
: 5 点 
今 和 3 年 度 の 報 物 の 取 い と し て 、 前 年 度 を 「 令 和 元 年 度 」 に 置 き 農 え た 実 績 で 評 価 す る こ と を 可 ( そ の 
場 合 、 前 々 年 度 は 「 平 成 年 度 一 を 用 い る . ) と す る . ( ※ )

 この時点で45点(40+5)となっています。最低ゴールラインの105点を達するためには、3~5の項目で60点以上を確保する必要があります。

5.地域連携活動のスコア

 先にこちらを紹介します。多くの事業所が10点を確保できると考えています。これは施設外就労など、現行制度で一般的に取り組まれている支援が評価されることがポイントになります。

・ 地 元 企 業 と 違 携 し た 高 付 加 価 値 の 高 品 開 発 や 販 売 の 取 組 の 有 無 
・ 施 設 外 就 労 に よ る 地 域 で の 働 く 場 の 確 保 等 地 域 と 連 携 し た 事 第 や 取 組 
第 価 の 複 点 ) 
事 業 所 が そ の 事 業 を 展 開 す る 中 で 、 物 用 者 と 地 域 と の 接 点 や 関 係 を 作 り 、 地 域 で の 利 用 者 の 活 ー の 爆 を 広 げ 
て い く こ と は 、 物 用 者 が そ こ て 暮 ら し 、 自 立 し た 生 活 を 実 現 し て い く 上 で も 大 切 な こ と か ら 、 事 業 所 に お け る 
地 域 と 連 携 し た 事 業 や 取 組 一 地 域 連 携 活 動 ) の 実 施 状 況 に よ り 評 価 
と め た 
公 表 す る と と も に 、 当 績 報 告 書 に お い て 連 携 先 で あ る 地 元 企 業 等 か ら 当 骸 取 組 が 地 域 連 携 活 動 で あ る の 意 見 
又 は 評 価 が 付 さ れ て い る こ と を も っ て 評 価 す る . 
1 事 例 以 上 あ る 場 合 
( そ の 他 ) 
10 点 
令 和 3 年 度 の 報 を の 取 搬 い に お い て は 「 令 和 2 年 度 」 の 実 績 て 評 価

残り50点を2つのスコアから確保する必要があります。

3.多様な働き方のスコア

 「職員登用」や「フレックスタイム制」などの労働環境を整備し、就業規則に規定する必要があります。さらに、令和3年度の基本報酬の取り扱いは、令和2年度の実績をもって評価すると記載があります。

 最低でも評価要素を6つ以上は確保する必要があります。専門外のため、これ以上言及できません。令和2年度の活動において、当該評価要素に資する取り組み事例を踏まえて、社労士等に相談する必要があります。

Ⅲ 多 様 な 働 き 方 
多 様 な 働 き 方 に 係 る 
制 第 備 及 び 実 施 状 
( 評 価 の 視 点 ) 
( 評 価 要 素 ) 
① 免 許 及 び 資 格 の 取 得 の 促 准 並 び に 検 定 の 受 の 動 奨 に 関 す る 事 項 
当 談 就 労 駆 驟 支 援 A 型 事 業 所 の 利 用 者 を 、 職 員 ( 利 用 者 を 除 く ) と し て の 登 用 す 
る M 度 に 係 る 第 等 の 手 続 、 対 象 者 の 要 件 及 び 採 用 時 期 に 関 す る 事 項 
③ 在 宅 動 務 に 係 る 労 働 条 件 及 び 報 務 規 に 関 す る 事 項 
④ フ レ ッ ク ス タ イ ム 制 に 係 る 労 働 条 件 に 関 す る 事 項 
⑤ 一 日 の 所 定 労 物 時 問 を 短 縮 す る に 当 た り 必 要 な 労 働 条 件 に 関 す る 事 項 
⑥ 早 出 遅 出 動 務 に 係 る 働 栄 件 に 関 す る 事 項 
⑦ 時 聞 を 単 位 と し て 有 紹 休 畷 を 付 与 又 は 籵 画 付 与 制 度 の 取 得 に 関 す る 事 項 
⑧ 従 業 者 が 私 的 に 員 し 、 又 は 僕 病 に か か っ た 場 合 の 療 養 の た め の 休 報 の 取 物 に 
関 す る 事 項 
利 用 者 の 多 様 な 働 き 方 の ニ ー ズ に 対 応 で き る か ど う か は 就 労 の 機 会 の 提 供 の 観 点 で 一 要 で あ る こ と か ら 、 
多 様 な 働 き 方 を 実 現 で き る 制 度 の 整 備 状 況 と そ の 活 用 実 績 に よ り 評 価 
任 意 の 5 項 目 に つ い て 規 程 等 ( 就 業 規 則 そ の 他 こ れ に 準 す る も の に 第 る で 定 め て お り 、 前 年 に お い 
て 雇 用 契 約 を 締 し て い た 利 用 者 の 希 望 に よ り 当 綾 5 項 目 に 係 る 制 奮 を 用 し た 実 が あ っ た 場 合 に 、 各 項 
目 こ ・ と に 評 価 価 黍 2 ( 書 が な い 場 合 は わ と し て 評 価 ー 最 大 期 し た 上 で 、 そ の 合 籵 に 応 じ て 以 下 3 段 階 
の 評 価 
8 以 上 の 場 合 : 35 点 6 又 は 7 の 場 合 : 25 点 1 以 上 5 以 下 の 場 合 点 
( そ の 他 ) 
令 和 3 年 度 の 報 物 の 取 援 い に お い て は 「 令 和 2 年 ま 」 の 実 績 で 評 価 。 ( ※ )

4.支援力向上のスコア

 職員の支援力に関する内容です。最低でも評価要素を6つ以上確保する必要があります。令和2年度の実績に基づいて算出されるため、評価要素に資する取り組みの有無を確認いただき、根拠を残していただく必要があります。

Ⅳ 支 援 力 向 上 
礎 と な る 支 援 力 向 上 
( 評 価 の 視 点 ) 
( 評 価 要 素 ) 
① 員 の 研 修 に 関 す る 計 直 に 基 づ く 第 害 者 雇 用 、 障 害 者 止 そ の 他 第 害 者 就 労 に 関 
す る 外 部 研 修 会 等 の 加 又 は 外 部 師 に よ る 内 部 研 修 会 の 開 簷 状 況 
外 当 研 第 会 等 ・ 、 の 師 脈 道 、 学 会 等 て の 研 究 発 表 又 は 実 践 報 告 の 実 施 状 況 
③ 害 者 就 労 に 係 る 先 進 的 な 取 組 を 行 う 他 の 事 業 所 等 へ の 視 察 若 し く は 実 習 へ の 参 
加 文 は 他 の 事 業 所 等 か ら の 視 察 等 の 受 人 状 混 
④ 鈑 路 拡 大 . 事 業 拡 大 等 に 向 け た 展 示 会 へ の 出 展 、 商 談 会 へ の 参 加 そ の 他 生 産 活 動 
取 益 の 増 加 に 資 す る ビ ジ ネ ス マ ッ チ ン グ に 係 る 取 組 の 実 施 状 
昇 給 、 昇 格 と 連 動 し た 人 事 評 制 度 の 第 鋼 状 況 
⑥ 害 者 ビ ア サ ポ ー ト 研 第 に お け る 基 礎 研 第 及 び 専 門 研 修 の 修 了 し 、 利 用 者 の 就 労 
又 は 生 産 活 動 等 の 支 援 を 実 第 す る ビ ア サ ポ - ト の 配 置 状 況 
⑦ 前 年 度 末 日 か ら 過 去 3 年 以 内 の 止 サ ー ビ ス 第 三 者 評 価 の 受 事 状 況 
⑧ 国 際 物 準 化 機 橋 が 定 し た マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム 規 格 等 の 認 証 取 得 又 は 史 新 を 査 
等 の 受 事 状 況 
員 が 黨 に 仕 事 に 対 し て 意 的 に 臨 め る よ う な キ ャ リ ア ア ッ プ の 機 会 を 組 盟 と し て 提 供 し 、 第 三 者 の 評 価 を 
踏 ま え て . 支 援 環 境 の 整 価 に つ と め る こ と は 、 基 礎 と な る 職 員 の 支 力 を 高 め 、 利 用 者 に 対 す る 支 の 質 の 向 
上 に が る こ と か ら 、 支 援 力 向 上 に 係 る 取 組 の 実 施 状 品 こ よ り 評 価 
( 評 価 方 法 ) 
籍 価 ( 最 大 10 ) し た 上 で 、 そ の 合 計 に 応 し て 以 下 3 段 階 の 評 価 
8 以 上 の 場 合 : 35 点 6 又 は フ の 場 合 : 25 点 1 以 上 5 以 下 の 場 合 : 点 
( そ の 他 ) 
令 和 3 年 度 の 報 の 取 級 い に お い て は 「 命 和 2 年 度 」 の 実 績 で 評 価 . ( ※ )

A型スコア方式の留意点

  • 実績をHPで公表することを忘れない
  • 間違っても事実根拠のない記録を残さないように注意する
  • 令和2年度に実績が確保できない場合には令和3年度を準備期間と捉え、スコア表を踏まえて施設づくりを進めていく

まとめ

 就労継続支援A型事業所のスコア方式により、国が求めている基準が明確になりました。今まで「質向上」とうたわれる中、平均労働時間のみが評価対象であったことは疑問が多かったです。しかし、今回のスコア表を通じて、障害者の仕事の多様性と支援員の意欲に対する事業戦略を打ち出しす必要性が増しました。全国の障害者支援の活性化と、障害者の社会復帰促進につながることを期待しています。今後は、就労継続支援A型において、ビジネスに関する有資格者(MBAや中小企業診断士など)が経営参加することで、点数が確保できる取り組みにつながることを期待しています。

 現在、全国で就労支援事業所の開業・運営サポートを実施しています。関心のある方はお問合せください。最後までご覧いただき、ありがとうございます。

参考情報

障害福祉サービス等報酬改定検討チーム:厚労省ホームページ;2021.2.4
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16573.html