【制度理解】就労支援事業における「提供拒否の禁止」とは

法理解

【制度理解】就労支援事業における「提供拒否の禁止」とは

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。今回は制度理解のコーナーです。障害者総合支援法の条文を丁寧に確認していきましょう。

 紹介するのは、「提供拒否の禁止」についてです。障害者の権利を損なうような対応を、うっかり実施しないよう注意する必要があります。是非御覧ください。

※当記事は令和3年度の報酬改定時に発表された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準について【新旧対照表】」を参考に作成しています。法解釈は運営している市区町村によって変わる可能性がありますので、事業を実施する地域の管轄市区町村にご確認いただきますようお願い申し上げます

本記事の結論

 原則として、障害者が希望する場合、指定障害者施設等は利用申込みを拒否することはできません。特に、就労移行支援事業所のように前年度の実績が基本報酬単価に抵触することを踏まえ、単価の低下を防ぐための拒否とみなされた場合、勧告・命令等の行政指導対象となるため注意が必要です。

就労支援事業所における「提供拒否の禁止」とは

 障害福祉サービスが、運用上最も重視するのは障害者本人の意思決定になります。本人が希望し、市区町村が受給者証を発行した場合、原則として障害福祉サービス事業所は受け入れを拒否することはできません。

 原則に対する例外として、以下の場合には受け入れを拒否することができます。

  • 利用定員を超える利用申込みがあった場合
  • 入院治療の必要がある場合
  • 主たる対象障害者を定めており、その他の障害者の申し入れのため、適切なサービス提供ができないと考えられるとき

 就労支援事業においては、前年度の運用実績により基本報酬単価が変わります。加えて障害重症度の程度の差によって単価が変わることはありません。この事から、事業所としては「毎日通所できる」かつ「障害の程度が軽い」対象者を受け入れるほうが報酬単価のメリットがあります。しかし、就労支援事業所側が障害者を選別し、受け入れを標榜している対象障害でありながら拒否することはできません。

「提供拒否」を行った場合はどうなる?

 正当な理由がなく障害者のサービス提供を拒否した場合は、行政指導・処分の対象となります。行政指導は、当該行為に対する勧告と命令を行い、改善が見られない場合には指定取り消し等の対象となります。また、拒否された場合には、連絡先の開示等の対象となります。

「提供拒否の禁止」に記載されている運営上のポイント

  • 当該サービスが非対象であると考える場合は暫定支給期間で客観的な事実を残した上でケースワーカーと相談する

 「提供禁止」とはいえ、障害者が当該サービスの対象者ではないと考えられるなか、本人が利用を希望する場面はあります。例えば、生活習慣と服薬が管理が安定せず、週1日すら通所できるか怪しいような状態で就労移行支援事業所の利用を希望するケースがあります。このような場合、「暫定支給期間」を活用しましょう。暫定支給期間とは、障害者が当該サービスに適正があり、利用可能であるかアセスメントする期間です。基本的に2ヶ月間付与されます。就労支援事業所は、暫定支給期間中に客観的な情報を中心としたアセスメントを実施します。当該サービスの利用が難しいと判断される場合には、アセスメント結果を踏まえて、受給者証を担当する市の窓口に相談する必要があります。アセスメント結果なく、個人の解釈で受け入れを拒否することが無いよう注意が必要です。

まとめ

 就労支援事業所として、一度障害者を受け入れれば、本人のニーズや社会的責任を果たす義務が生じます。また、障害者側も性急な意思決定で就労支援事業所の利用を求めているケースも散見されます。受け入れた後、ひとりの障害者の対応に時間と労力を要し、他の障害者へのサービス提供に支障をきたしてしまうと、事業所としての信用に関わります。このことから、事業所として徹底することは「アセスメント」になります。アセスメント方法を見直し、受け入れ障害者の適性を十分に確認するように配慮いただければ幸いです。

 就労支援事業運営.comでは、国内で就労支援事業所の開業・運営支援を行っております。興味のある方は、お問い合わせください。最後までご覧いただきありがとうございます。

LINEで無料相談を実施する

LINE相談は福祉スタッフの皆さんとの出会いの場と位置付けております。生きた現場課題に触れることが、情報発信に重要と考えておりますので、是非お気軽にご活用いただければ幸いです。

友だち追加

参考資料

厚労省HPより

https://www.mhlw.go.jp/content/000762248.pdf