【制度理解】就労支援事業所における「利益供与等の禁止」とは

法理解

【制度理解】就労支援事業所における「利益供与等の禁止」とは

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。今回は制度理解のコーナーです。障害者総合支援法の条文とその解釈に関する基準を含め、丁寧に確認していきましょう。

 今回ご紹介するのは、「利益供与等の禁止」についてです。実は多くの事業所がこの禁止事項抵触するリスクがあるグレーな広報を行っていることがあります。基準の内容を確認し、自社施設の見直しにご活用ください。

※当記事は令和3年度の報酬改定時に発表された「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準について【新旧対照表】」を参考に作成しています。法解釈は運営している市区町村によって変わる可能性がありますので、事業を実施する地域の管轄市区町村にご確認いただきますようお願い申し上げます。

本記事の結論

 就労支援事業所は、障害者が適切に障害福祉サービスの利用意思を決定できるよう、当該施設の利用または紹介等に対して、金品その他の財産上の利益を供与していけません。

就労支援事業所における「利益供与の禁止」とは

基準第51条に規定されています。同条の内容は以下のとおりです。

(要約)

  • 障害福祉サービス事業所は、一般相談・特定相談支援事業を行うものや他の障害福祉サービスを行うものや従業者に対して、金品その他財産上の利益を供与してはならない
  • 障害福祉サービス事業所や従業者は、障害者またはその家族を紹介することに対して金品その他の財産上の利益を供与してはならない

 これらの基準は、障害者が適切な意思で障害福祉サービス事業所の利用意思を決定することが目的です。事業所として、障害者の意思決定を歪めるようなインセンティブを与えることは行ってはなりません。例えば、生活困窮の障害者にとっては、金銭的な恩恵やサポートを受けることができる事業所に意思決定を優先したいところであります。しかし、金銭的な恩恵は、本来の就労支援事業所としての提供サービスとは異なるため、提供内容次第で利益供与になりかねません。

実務ポイント

  • 昼食や交通費サービスは利益供与に当たる可能性あり
  • グレーゾーンが多いことが実態
  • 就労移行支援事業所で生産活動を実施できれば、障害者は金銭的な恩恵を受けることができる

 巷の就労支援事業所では、「昼食サービス」「交通費サービス」という文言でHPを掲載している事業所があります。そもそそ、「サービス」という表現が、利益供与等の禁止に抵触する可能性があります。この場合、表現を変える必要があります。例えば、昼食は食事提供加算を利用することで、障害者の費用負担を軽減することができます。事業所が食事提供を実施しているのであれば、「昼食サポート体制あり」という表現が適切です。交通費負担について、移行型・B型は障害者と施設が「利用契約」に基づく契約関係のため、交通費サービスという訴求方法自体が利益供与に該当する可能性があります。一度販促資材にこれらの文言を打ち出した後に行政指導指導を受けてしまうと余分なコストとなる可能性があります。市区町村の判断を仰ぎながら、訴求表現が適切なものであるか、意見を賜りながら整備いただければと思います。

まとめ

 就労支援事業所数が増えたことで、個々の事業所が特色を持ったサービス提供を行っています。先ずは営業活動を通じて、障害者が通所いただきたい点は十分に理解できます。しかし、基準で利益供与等を禁止されていることから、法令を遵守した中で強みを発揮する必要があります。是非、交通費や昼食のサービスではなく、地域企業との連携体制や、障害者支援の実績を強みとして打ち出した事業所作りに挑戦いただければと思います。

 就労支援事業運営.comでは、国内で就労支援事業所の開業・運営支援を行っております。興味のある方は、お問い合わせください。最後までご覧いただきありがとうございます。 

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参考資料

厚労省HPより

https://www.mhlw.go.jp/content/000762248.pdf