【制度改定】令和6年度の制度改定で就労支援事業はどう変わる?

令和3年度報酬改定

【制度改定】令和6年度の制度改定で就労支援事業はどう変わる?

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。

 2021年6月に厚生労働省より、「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会報告書」が発表されました。「障害者雇用」と「福祉」をキーワードに、各業界の有識者を招集し、令和2年11月より3つのワーキンググループを構成され議論が進められてきました。内容は今後の制度改定に大きな影響を及ぼすことが考えられ、就労系サービス事業所の経営者、管理者にとっては必読の内容となっております。

 本記事では、当検討会での論点を抑えた上で、業界に及ぼす影響や個人的見解を記載していきたいと思います。

※本記事に記載されている情報は、当該報告書の内容を踏まえた筆者の所管が含まれています。内容の解釈は閲覧者個人の責任で実施いただきますようお願い申し上げます。

当報告書の結論

  • 「企業」「福祉」「行政」の全窓口に共通する「就労アセスメント方式」が整備される
  • 障害者の雇用を取り巻く福祉サービス(就労支援事業所等)に人員配置基準に影響を及ぼす体系化された研修制度が導入される
  • 「企業就労」と「福祉」がより関わりやすくすることを目的に企業で働きながら就労支援事業所に通所できる施策が進む
  • 今後の就労系サービスは「一般就職の実現」を強く意識する運営体制が必須となる

 当報告書を確認すると、今後は上記3点の制度改定が進められることが予想されます。就労支援事業所の経営者は、これらの結論に至った背景を理解した上で、事業所体制を構築する必要があります。

当報告書の概要

  • 厚労省が中心となって進められている
  • 障害者に対する就労支援を更に充実・強化される目的で遂行される
  • このプロジェクトで議論された内容が障害者就労に関する今後の制度設計に重要な役割をもたらす(障害者総合支援法や新たな助成金など、厚労省が管轄となるもの)

当報告書の3つのワーキンググループ

 このプロジェクトでは、3つのテーマについて話し合いが行われます。それぞれのテーマで話し合われた主な内容を以下に記載します。

障害者の就労能力等の評価の在り方に関するワーキンググループ

 このワーキンググループでは、現行の障害者就労をサポートする行政機関、民間機関、一般企業等の「評価の在り方」について議論されてきました。現時点では、各機関に共通する評価指標は存在しておらず、各々が重要と考える基準で評価を進めている実態があります。有識者としては、「この独立された評価体制により、円滑に連携することが阻害されている」と指摘した上で、共通の評価指標の整備が必要であると課題提起しています。

障害者就労を支える人材の育成・確保に関するワーキンググループ

 障害福祉サービスは、地域のインフラとなり障害者の居場所を整備する環境から、積極的に企業との連携や一般就職を実現する「通過型事業所」へと体制が変化していきます。その場合、各支援機関に従事する職員は、「福祉」と「企業」の両者に関する知見をもち、障害者をサポートする必要があります。しかし、そのような人材を開拓することは難しいため、「基礎的な研修制度の整備」の必要性について議論されてきました。

 具体的な施策としては、令和1年以降のサービス管理責任者に与えられた「基礎研修」に類似するような研修体制を他の職種にも設ける方法です。これにより、就労支援事業所の人員基準として、「基礎研修修了者条件」が整備されるか、「基礎研修修了者の人数によるインセンティブ」のどちらからが整備されていくことが想像されます。

障害者の就労支援体係の在り方に関するワーキンググループ

 このワーキンググループでは、可能性のある障害者は、就労継続支援など地域の福祉機関で障害活動するのではなく、一般就労に積極的に移行することを基本方針とする考え方に基づいて議論されました。重要な論点は、障害者が「雇用」と「福祉」をハイブリットに活用できる支援体制の構築です。これは、障害者が「一般企業」か「福祉事業所」かの2択に迫られるのではなく、それぞれの強みを活かすことで、段階的に生産性を高めるような支援体制の構築です。

 例えば、週に2日だけ企業で就労し、残りの3日間は本人の耐久性を踏まえて就労継続支援を利用するような体制です。この場合、企業と福祉施設で円滑な情報共有が行われる必要があり、前述の基礎研修修了者の整備が必要です。もし現行の支援体制であれば、障害者就業・生活支援センターがこの役割として相応しいのではないかと議論されています。

見解

 当報告書の内容を一言で表現すると、「企業および福祉施設としての障害者を一般就労へ導くための責任の再定義」になります。その基本指針として、「障害の企業理解」や「福祉施設における職員の資質向上」について語られています。

 これまでの制度の変革を踏まえると、サービス管理責任者の資格基準の歴史からも分かるように、「資質の向上」を議論する場合は「研修の整備」が基本施策となるようです。そこで考えなければならないこととして、障害者雇用支援における「質」を明確に定義することではないでしょうか?質を議論する上で明確な定義がなされなければ、講じられる施策に一貫性がなくなり、費用対効果の低い政策となるリスクがあるからです。多様な現代社会だからこそ、明確な定義付けは難しいです。加えて、「明確に定義する」ということは、責任の所在が一点集中するためリスクを取り切れない背景もあるのではないでしょうか。

 持続可能な福祉制度を設計するうえで、就労支援事業所のような「訓練等給付サービス」に、今後どのような研修体制が整備されていくのか、強い関心をもって情報を把握していきたいと思います。当方としては、是非「統計学」における基本研修体制を整備していただきたいと心から感じています。

 現代社会は様々な情報で溢れています。支援者は、溢れている情報を網羅的に収集し、取捨選択してエンドユーザーに支援提供する必要性があります。その場合、統計学の視点が無いと、何を持って「必要な情報であるのか」判断することはできません。中長期的にみて、真に結果に繋がる施策に繋がることを期待しています。

まとめ

 当報告書では、現行の企業および福祉の就労支援における課題が明確に語られており、発展的な議論がなされています。就労支援事業所だけでなく、障害者に訓練等サービスを提供する経営者ならびに支援員など、障害者就労に関わる全ての関係者が把握する必要のある内容です。

 これまで、就労継続支援事業所としての賃金・工賃課題が極めて重要な論点であり、事業所はより高単価な生産活動に従事することを目的とするあまり、可能性のある障害者を一般就職に導く施策は難しいものがありました。これでは、障害者の社会復帰を支援する訓練等給付サービス事業所にとっては本末転倒となってしまいます。現在の就労継続支援事業所に課さられている使命は、段階的に障害者の就労能力を向上させることが大前提です。加えて、一般企業にはできない多様な労働環境を整備することで、障害者の幅広い福祉ニーズに応じることができる運営体制を整備することが極めて重要です。

 令和6年度の報酬改定では、これらの論点が更に具体的な施策となることが想像されます。記載されている内容を事業所として前向きに捉え、具体的な運営施策に反映いただければと思います。

参考資料

厚生労働省:障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会

障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会

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