【研修】就労支援事業所の訓練に使える!「フォーカシング」とは

基本スキル

【研修】就労支援事業所の訓練に使える!「フォーカシング」とは

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

この記事は誰に向けて書いている?

  • 就労支援事業所の訓練プログラムに悩んでいる職員
  • 新しい訓練プログラムの立案を担当している職員

 今回は「フォーカシング」についてまとめます。フォーカシングは、訓練技法というより、人間の思考の特徴をまとめたものであり、理解すると日々の訓練プログラムやモニタリング、職員が実施するケースカンファレンスなど、様々な場面で活用することができます。是非ご覧ください。

フォーカシングとは

 1960年代に、シカゴ大学のジェンドリンが生み出した心理療法の一つです。最大の特徴は、「言葉にならない身体の感覚に着目する点」になります。ジェンドリンは、心理療法の中で結果がでるものにはどのような特徴があるのか調べました。実証実験の結果、セラピーに成功した当事者の特徴に気が付きました。それは、「身体では感じている。しかし、言葉にすることができなかったことに対する気付きによって結果がでた。」という特徴です。

 ジェンドリンは、このような「身体ではわかっているけど、言葉にならない感覚」のことをフェルトセンスと呼びました。障害者がフェルトセンスに注目し、自身で分析したうえで明確な「言葉」に変換していく工程を通じて、様々な気づきを得ることができます。

 フォーカシングは、このようなフェルトセンスを言語化する技法です。

どのように活用するのか?

 フォーカシングは、以下の5つのステップで進めることができます。

  1. 身体の内部に注意を向ける
  2. 自身のフェルトセンスを見つける
  3. フェルトセンスを描写する
  4. 自身から出てきたフェルトセンスは自分の一部であることを受け入れる(全てを受け入れず、また、全てを否定しない状態)
  5. 終了

 特に「4」は大切です。もし、実施する障害者が「うつ病」などの精神疾患である場合、自身のフェルトセンスを否定的に捉えて、正しい行動変容に導かれない可能性があります。また、フェルトセンスを自身の全てと捉えてしまうと、内容によってはネガティブな心理状態に陥ってしまいます。フェルトセンスは、「感覚ではわかっていたが、言語にすることはできていなかった」という点を踏まえ、「一部分を受け入れる」というスタンスで関わることを、障害者と事前に共有することが大切です。

フォーカシングから考えること

 フォーカシングのステップでは、自身の内的な要素に着目して「気づき」を得るまでが1つの工程になります。特に、得られた気付きから新しい行動計画を立案することはありません。前提として、「気づきが得られる=新しい行動につながる」という考えがあるのかもしれません。

 しかしながら、フェルトセンスのように「言葉にならない感覚的要素」というものは、人間誰しもが持っている感性であると考えられます。人間は感情的な生き物であり、その行動の多くは感覚(つまり言葉にはならない考え)で実行されています。

 フォーカシングは、決して障害者だけが実施するものではありません。障害者を支援する支援者も、自身のフェルトセンスから新たな気づきを得ることで、現実には様々なメリットを受領することができます。是非、就労支援事業所で実施する前に、職員が自らトライする機会を構築していただければと思います。

まとめ

 フォーカシングは、人間と特徴を捉えた心理介入の一つです。対象は、障害者に限らず幅広く設定することができます。言葉にならない感覚を、まずは言語化することで思考を客観視することができます。客観視することで新しい気付きにつながるため、生活の様々な場面に良い効果が期待できます。就労支援事業所の訓練プログラムとして活用できますが、まずは職員が1度トライしていただければと思います。

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