【研修】就労支援事業所で活きる!曝露法から学ぶ「姿勢」
こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。
この記事は誰に向けて書いている?
- 就労支援事業所で障害者への訓練提供に悩んでいる職員
- 障害者の「苦手なこと」に対する対応方法が分からない職員
曝露法について考えてみましょう。認知行動療法の一つである曝露法(エクスポージャー法)。一般的には、障害者に対して苦手なことにあえて接触させる方法という印象が強いです。その印象では、かなり乱暴な方法に感じるかもしれませんが、障害者が感じる不安の原因となる刺激が、社会復帰に向けて必要なものでれば、段階的に「慣れ」を生む必要があります。実は、この曝露法は、ただの技法ではなく、障害者と関わるための大切な知見を与えてくれます。是非ご一読いただければ幸いです。
曝露法(エクスポージャー法)とは
曝露法は認知行動療法の技法の一つです。人間が感じる不安は、ある刺激によって誘発されます。曝露法では、この刺激にさらされ続けることで、誘発される不安の程度が徐々に低下すると考えます。
対象は、不安などに繋がる刺激に対して、「回避行動」を選択する方です。主に不安症やPTSD、強迫症に用いられる技法ですが、この病名を診断されていない方の中でも、不安が発生する刺激から常に回避しているケースは多いです。
障害者本人が苦手とする刺激にあえて触れさせるという点では、支援者としても緊張感のある方法です。想像以上の不安反応が出現してしまうなど、万が一の事態には備える必要があります。
曝露法の種類とは
①段階的曝露、②持続的・集中的曝露の2つのやり方があります。
段階的曝露
不安を引き出す特定の刺激を、短期間でごく弱めに触れさせます。
持続・集中的曝露
不安を引き出す特定の刺激を、可能な限り強く集中的に触れさせます。
これらの方法は、障害者と十分に意思疎通を行ってから選択する必要があります。
曝露法の実施手順
以下の手順で実施されます。
- 実施前に十分な準備を行う
- 障害者の課題を十分にアセスメントする
- 不安を感じる場面をリスト化する
- リスト内のそれぞれの項目に対して「強弱」把握できるように不安階層表(SUDS)を活用して点数化する
- 不安階層表内で最も点数の低いものから再現する
- 実施後は十分なリラクセーション方でストレスケアを行う
事前準備
曝露法を実施する場合、対象の障害者とは十分に合意形成を行う必要があります。実施すると、一時的に不安等のストレス状態となるため、実施後はリラクゼーションなど、リカバリーできる方法を予め習得する必要があります。事前準備の段階では、障害者本人が実施できる体調を安定させる方法を十分に確認しておきましょう。
不安階層表
曝露法では、ターゲットとなる刺激に段階的に慣れていく点がポイントです。そのために、不安の程度が見える化されていないと正しく「慣れ」を評価することができません。この不安の程度を点数化したものが「不安階層表」です。不安の程度を0点~100点の中で、障害者本人の主観で評価します。
例)閉所恐怖症の人のSUDS
トイレの個室_20点
カラオケボックス_40点
エレベーター_70点
就労支援事業所での考え方
障害者本人が不安要素と考えている刺激が、今後の社会復帰に向けて一切関わることが無いものであれば、特に介入する必要がありません。しかし、社会復帰の場面で少しでも再現される可能性があるなら、障害者本人と対応方法を検討する必要があります。
曝露法で特に参考にするポイントは、①リカバリー方法を習得してから実施すること、②定量的に評価していること、この2点と考えています。
リカバリー方法を習得してから実施する
就労支援事業所が訓練系サービスであれば、障害者は今の自分自身に対して変化を加える必要があります。変化は、現状の苦手を克服するか、克服を諦めて違う方針に舵をきるの2パターンしかありません。どちらの方針にしても、身体的・精神的なストレスが加わる可能性があるため、ストレスをケアする方法を習得する必要があります。曝露法では、実施する内容が障害者にとってストレスになることを踏まえ、実施後にケアの時間をしっかりと確保します。だからこそ、辛い刺激に慣れる訓練にも耐えることができます。
定量的に評価している
スキルや精神状態は、就労支援事業所が提供する支援により、一朝一夕で劇的な変化が加わるものではないと思います。基本的には段階的な変化が加わり、一定期間進むことで「当初と比較すれば大きな変化になっている」というものかと思います。そこで大切なのは、「短期間で生じた変化を正しく測ることができているか?」です。もし、短期間の僅かな変化が生じていないのであれば、中等度の時間が経過した時に何も変わっていないという最悪の状態を招きます。SUDSのような、評価尺度をもって現状や変化を正しく分析することが大切です。これは、曝露法に限った話ではなく、就労支援事業所のどの場面でも言えることだと考えています。
まとめ
曝露法について話してきました。就労支援事業所で、「実際に曝露法を実施しましょう!」という話ではなく、曝露法を取り巻く様々な考え方は、就労支援事業所を運営する至る所で応用できるものであるという結論です。特に、「リカバリー方法を備えておく」「定量的に分析する」という姿勢は、基本的な支援提供場面で大切な考え方だと思います。是非、普段の支援に活かしていただければと思います。
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