【研修】要点を整理!就労支援事業所で使えるアサーション・トレーニング
こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。
この記事は誰に向けて書いている?
- 「アサーション・トレーニング」は聞いたことがあるけど、いまいち分かっていないという方
- 事業所の訓練でアサーション・トレーニングの活用を検討している方
- 職員向けの研修に悩んでいる方
今回はアサーション・トレーニングについて記載します。最近では、就労移行支援事業所の訓練としてアサーションを導入している施設が増えてきました。専門書が多く、「導入の難易度が高そうだから見送っている」という方もいらっしゃるのでは無いでしょうか?まずは、概要だけでも把握できるよう、要点をまとめて記載します。是非、今後の事業所訓練や職員向けの研修の題材として、参考にしていただければと思います。
アサーション・トレーニングとは
「アサーション」は、1950年代にアメリカで生まれました。公民権運動を背景に誕生した自己表現方法であり、「社会的弱者が声を上げる方法」として注目されました。今では、「自己表現が苦手な方に対するコミュニケーション方法」として活用されています。
組織や会社、家庭でも、様々なコミュニケーション問題が発生します。コミュニケーションがうまく進んでいない環境では、仕事のミスや進捗の鈍化だけでなく、ストレスによる体調不良など、2次障害による生産性低下のリスクがあります。
しかし、なぜ人はコミュニケーションの問題に悩むのでしょうか?
それは、現状に課題を感じているだけでなく、「現状を改善したい」という前向きな思いが隠れているからです。このような内なる感情に着目して前向きな捉え方から進めることがアサーションの第一歩と言われています。
アサーション・トレーニングで使われる自己表現
人はコミュニケーションの場面で、自分自身が伝えたいことを遠慮したり、逆に自分の伝えたいことばかりを発信したりと、様々な傾向があります。アサーションでは、このような自己表現のタイプを、以下の3つに分類します。
- アグレッシブタイプ
- ノン・アサーティブタイプ
- アサーティブタイプ
それぞれを見ていきましょう。
アグレッシブタイプ
このタイプは、相手よりも自分自身の自己表現を優先する特徴があります。「攻撃的」という表現が用いられます。他者との競争や比較が行動の原動力となっており、「自分が1番」「相手に勝ちたい」という競争心が高いことが特徴です。相手を「力」で操作するような思考特性です。
ノン・アサーティブタイプ
このタイプは、自分よりも相手を優先した自己表現を行います。一見、人がよく見えるのですが、自分に自信がなく、いつも相手の態度を伺ってしまいます。ストレスを溜め込む性格でもあり、体調を崩すなどの2次障害のリスクが高いとも考えられます。自信のなさは、責任から逃れたいというマインドでもあり、言い訳が中心となる弁解が多いことも特徴です。
アサーティブタイプ
このタイプは、相手の意見を尊重し、なおかつ自分自身の意見をしっかりと述べることができるタイプです。理想的なタイプといえます。
アサーション・トレーニングでは、このアサーティブタイプの取得を目標に実施します。
アサーション・トレーニングの進め方
以下の手順で進めます。
- アサーション・トレーニングの意義を理解する
- 自己表現の3つのタイプを理解する
- 基本的な考え方を理解する
- 「アイメッセージ」を理解する
- ロールプレイングを行う
それぞれ見ていきましょう。
アサーション・トレーニングの意義を理解する
学習する前に、「なぜアサーションが必要なのか」しっかりと説明することが大切です。納得感を持たないと、学習効率が悪くなるリスクがあります。具体的な事象を用いて、伝える必要があります。
自己表現の3つのタイプを理解する
次に知識として、アグレッシブタイプ、ノン・アサーティブタイプ、アサーティブタイプの3種類が存在することを理解します。知識が入ることで、自分自身の言動を客観的に振り返ることができるようになります。
基本的な考え方を理解する
アサーションを行う上で、基本となるマインドを理解します。以下のようなものがあります。
- 素直な表現を心がける
- 常に誠実・謙虚に相手と向き合う
- 自分が相手と対等であることを理解する
- 表現は自己責任であることを理解する
「アイメッセージ」を理解する
アイメッセージとは、自分を主語にした表現を用いるメッセージです。例えば、以下のように表現を変えることができます。
普通の表現
「コピーとっておいて!」
アイメッセージの表現
「コピーをとってもらえると助かるんだけど、今いいかな?」
前者は「あなたは、コピーを取る必要がある」という表現であり、相手が主語です。つまり、ユーメッセージとなります。後者は、「私は、コピーをとってもらえると助かる」という表現であり、アイメッセージとなります。
ロールプレイングを行う
様々な実践場面を想定して、相手の提案を聞き入れ、状況を分析し、こちらの提案を行いましょう。アサーションのゴールとしては、双方が納得感を持って結論を導くことです。アグレッシブでも、ノンアサーティブでもない、アサーティブな結論を目指しましょう。
ロールプレイングを実施する場面では、「DESC法」が活用できます。本記事では説明を省きますが、是非調べて実践いただければと思います。
就労支援事業での活用方法
障害者に対する訓練だけでなく、職員向けの研修としてもアサーション・トレーニングを活用することができます。福祉業界は、職員の離職率が高く流動的な職場となる傾向があります。そこには、[経営→現場]や[現場→経営]というような、一方通行のコミュニケーションが展開されていることがきっかけである印象です。アサーション・トレーニングを通じて、双方のコミュニケーションの円滑化を目指します。
職員がアサーション・トレーニングで得ることができ成功体験を基に、施設を利用する障害者にも意義を説明していきましょう。結果的に、円滑な就労や社会復帰の一助となることを目指します。
まとめ
アサーション・トレーニングは、コミュニケーションの基本的な考え方です。アイメッセージを具体的かつ効果的に活用することができるため、実践的な考え方であると言えます。様々なタイプがありますが、日本人は雇用制度の背景から、ノン・アサーティブタイプが多い傾向を実感しています。自分自身の考えをしっかりと伝える習慣を持つことで、より生産的な議論や活動に繋がると考えています。是非実践いただければ幸いです。
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