【研修】就労支援事業所の職員向け「不安障害」とはどのような障害なのか
こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。
今回は「不安障害」について学びたいと思います。就労支援事業所に通所する障害者のなかでも、「不安」を感じる方は多いです。ただし、不安は常に人間誰もが感じる極自然な感情です。異常感覚に位置づく「不安」の特徴を知ることで、ケアの方法や関わり方のポイントを理解することができます。是非ご一読ください。
「不安障害」と「神経症」の違い
以前まで、異常感覚における「不安」は「神経症(いわゆるノイローゼ)」と表現されてきました。その後、不安に関する研究が進むにつれて、不安にも様々な発生メカニズムがあることがわかりました。歴史的にみると、以前の精神障害の診断部類であるDSM-Ⅲ以降、「神経症」の考えは用いられなくなりました。
不安障害の分類
不安障害は、発生機序や症状の内容、頻度、特徴などから、細かく分類されるようになりました。DSM-Ⅴでは、以下のような分類がなされています。
- 不安障害
- パニック障害
- 全般性不安障害
- 恐怖症性不安障害
- 強迫性障害
- PTSD
- 身体表現性障害
- 解離性障害
- 気分障害
不安障害へのケア
不安障害の原因として、現在は心因的なものに加えて、脳機能の異常という身体的な要因も考えられています。このため、治療方法として、薬物療法と認知行動療法によるケアが一般的です。
認知行動療法では、暴露療法と認知療法の2つの技法があります。
暴露療法
この技法は、不安や苦痛を克服するために、患者が恐怖を抱いている物や状況に対して、危険が伴うことがない前提で再現することにあります。そうすることで、普段行っている回避行動や安全確保の行動を実施しなくても「危険がないもの」という認知を得ることに繋がります。結果的に、望ましい認知を経験し、行動の変化と不安感の緩和を実現することになります。
認知療法
障害者の特徴的な物事の考え方に対して、異なる視点から質問を行うことで新たな考え方に導く方法です。障害者は過去の体験を持って、本来、科学的な因果関係がない要因を強烈に結びつけていることがあります。認知療法では、自己分析(セルフモニタリング)や物事の構造を整理する工程を通じて、誤った因果関係の認識をほどきます。結果的に不安を知覚する根本的な認知から開放されることに繋がります。
就労支援事業所における考え方
不安障害に対する治療は、障害者を担当する主治医の治療方針に従って提供されます。就労支援事業所では、事業所内に専門的な支援を提供できる人材に加えて、主治医と十分に情報共有を行わない限り、不安障害に対する「治療的な支援」を提供することはできません。ただし、「就労」や「就職」に対して、障害者が不安を感じている場合には、認知療法の考え方は参考になります。
特に重要なポイントは「思考の見える化」です。「就労」に対して感じる不安を具体的に表出してもらうことで、不安の根本要因を理解します。次に、その根本となっている要因を、日々の訓練で解消していきます。まさに、障害者が日々作成する「記録」や「モニタリングシート」などが該当します。このことからも「記録」は障害者の不安をケアするために極めて重要な取り組みです。
記録の運用方法は、事業所の個性が出てくる点でもありますので、普段の事業所内での取り組み方を、より効果的に実施できるように再検討いただければと思います。
まとめ
不安障害に対する介入方法について記載しました。臨床現場で用いられる手法や考え方を知ることで、普段の事業所に応用できる様々な発見があります。もちろん、医療的・専門的な支援を提供しなければならないというわけではありません。個別性に基づいた支援を提供できる福祉業界だからこそできる支援プロセスがあります。
「不安」は誰もが知覚する症状であり、ケアには時間を要します。障害者と長い時間関わることができる福祉現場でしかなせない支援の方法があると考えています。精神医学に基づいた情報も参考に、個々の障害者に応用した支援に反映いただければと思います。
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