【研修】就労支援事業所で行う「強迫性障害」への適切な対応

基本スキル

【研修】就労支援事業所で行う「強迫性障害」への適切な対応

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

本記事は誰に向けて書いている?

  • 就労支援事業所で働き初めて間もない方
  • 精神障害者との接し方について学びたい方
  • 就労支援事業所の業務に活かすために「医療」の考え方を知りたい方

 今回は「強迫性障害(OCD)」について学びたいと思います。就労支援事業所内で、ある特定のことがらに対して過度な不安と不安を回避する行動により、就労活動に支障をきたしている障害者を見ることは珍しくありません。OCDについて理解を深めることで、適切な対応を検討することができます。しっかりと確認していきましょう。

「強迫性障害(OCD)」とは

 自分自身でもつまらないことだと分かっていても、そのことが頭から離れない状態(強迫観念)と、分かっていながらも何度も同じ確認を繰り返す(強迫行為)など行動により、日常生活に支障をきたしている病気です。「心配しすぎ」のレベルを超えていることが特徴であり、他者からみても異常に感じ取れるような行動特性があります。

OCDの主な症状

 症状は人により異なりますが、よく見られるものとして「ばい菌などに汚染されている」「誤って人を傷つけるのではないか」というようなものです。その他も含めて、以下に代表的な症状を記載します。

不潔恐怖と洗浄

 汚れやばい菌汚染の恐怖から過剰に手を洗い、入浴や洗濯を繰り返します。ドアノブや手すり、公共施設の共有物などを不潔だと感じて触ることができません。

加害恐怖

 自身が誰かに危害を加えたのではないかという不安が心を離れず、新聞やテレビに報道されていないか確認したり、他人や警察等に確認したりすることがあります。

確認行為

 戸締まりやガス、機器の電源などを過剰に確認します。例えば、「何度も確認する」「ずっと見ている」「分かっているのに手で触って確認する」などがあたります。

儀式行為

 自分自身で決めた手順で物事が進まないと「大変なことが起こる」という不安があります。よって、どんなときでも同じ方法で作業を行います。

数字へのこだわり

 「不吉な数字が揃った」などに対して過度にこだわりを見せます。

物の配置、対称性などへのこだわり

 自身で決めている物の配置などに強いこだわりがあり、守れていないことで過度に不安になります。

その他の特徴

 強迫観念により不安が生じた場合に強迫行動を行って不安の解消を試みます。一定時間経過することや不安を誘発する事柄を経て、改めて強迫観念が生じるなど、周期的に強迫行為を繰り返します。

ト リ ガ ー 
要 因 
不 安 の 解 
消 
強 迫 行 為 
強 迫 観 
不 安

OCDの治療

 一般的には「薬物療法」と「認知行動療法」が選択されます。この両者を組み合わせることが有効な治療と言われいます。

薬物療法

 患者は、強い不安感を知覚しています。不安感により、日常生活に支障をきたすと効果的な治療を継続することができません。まずは薬物療法を行い不安を軽減させます。主治医の選択によりますが、抗うつ薬であるSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)が一般的に使用されます。

認知行動療法 

 認知行動療法の中でも、曝露療法が効果的と言われています。暴露療法は、患者が不安を感じる状態にあえて立ち向かうものです。やらないと気がすまない行動を我慢してもらい、「結果、やらなくても大丈夫だった」という認知を獲得することがポイントです。継続することがポイントであり、徐々に不安の発生が軽減されていきます。

就労支援事業所での考え方

 強迫性障害の症状は「過度なこだわり」が特徴的です。日常生活に支障をきたすほどの異常なレベルになることで、診断を受けることがありますが、就労の場面でもこのこだわりが支障となって就労能力が低下している事例は散見されます。

 就労能力の低下について、不安により行動が誘発できない状況であれば、最低限の活動レベルを確保するために主治医と相談する必要があります。最低限の行動が担保できているのであれば、暴露療法の応用で、本人が感じる不安要因にあえて挑戦する機会を提供する必要があります。例えば、精神障害等の理由で後天的に他者と関わることが苦手になった障害者に対しては、他者と関わる必要がある訓練をあえて提案することが大切です。

 この際にポイントとなるのが、障害者自身が自身の支援プログラムに納得しているかという点です。「アドヒアランス」という言葉があり、障害者本人が自身の病状を理解して、今から実施する訓練が必要なものであるということを十分に理解することで治療効果を高められるという考え方です。これは、就労支援事業所における訓練でも同じことが言えると考えています。

 「不安」に対する認知行動療法などの考え方は、就労支援事業所にも応用できる点が沢山ありますので、是非普段の訓練の参考にしていただければ幸いです。

まとめ

 強迫性障害について確認してきました。日常生活に支障をきたす過度な不安により診断される病気ではありますが、「不安」は誰しもが感じる基本的な感情であり、診断の有無はただの「程度の違い」であると仮定できます。よって、強迫性障害に対する治療内容を確認することで、就労支援事業所で提供する訓練に応用できるポイントは多々あります。何か一つでも、訓練の参考になるポイントがあれば幸いです。

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