【研修】就労支援事業所でどう対応する?心的外傷後ストレス障害

基本スキル

【研修】就労支援事業所でどう対応する?心的外傷後ストレス障害

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

本記事は誰に向けて書いている?

  • 就労支援事業所で働き初めて間もない方
  • 精神障害者と初めて接する方
  • 就労支援事業所の業務に活かすために「医療」の考え方を知りたい方

 今回は、「心的外傷後ストレス障害」について学びたいと思います。「トラウマ」というイメージが強いこの障害ですが、症状の出方には特徴があります。また、周囲から発せられる不要な一言により2次障害を助長するリスクがあるため、職員は病気についてしっかりと理解する必要があります。是非最後まで御覧ください。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは

 死の危険など、強い心的ストレスに直面した後に、その体験に強い恐怖を感じ続ける病気です。不安障害の1種になります。日本では、事故や災害などにより発症する方が多いです。

 PTSDは、決して珍しい病気ではありません。精神医療の世界では、よく目にする病気です。基本的に、事故や災害に巻き込まれると多くの方が「ストレス障害」を経験します。一般的には、アクシデントの4週間以内に生じるストレス障害を、急性ストレス障害(ASD)といい、4週間以上続く場合にPTSDと診断されます。

PTSDの主な症状

 症状としては、「フラッシュバック」「神経疲労・過覚醒」「回避」が上げられます。それぞれを見ていきましょう。

フラッシュバック

 PTSDの症状と聞くと、「フラッシュバック」イメージする方も多いのではないでしょうか。事件や事故のことを忘れたと認識していても、ふとした時にその体験や感情が思い出されます。それは様々な感情となって呼び起こされるため、記憶だけでなく、苦痛・悲しみなどの感情や、呼吸困難・泣く・パニックなど、周辺症状を合併することがあります。

神経疲労・過覚醒

 フラッシュバックによる記憶が呼び起こされていない場面でも、常に緊張感が続くことがあります。緊張により、イライラやちょっとした刺激に驚く、不眠など、様々な症状を呈します。

回避

 記憶や苦しみから身を避けるため、感情や感覚が麻痺する症状を「回避」といいます。事件や事故の記憶だけでなく、あらゆる刺激を回避することもあるため、病気前後で他者との関わりなども大きく変わることがあります。例えば、家族や気を許した仲間との会話で、以前のように笑わなくなるなどが当たります。

PTSDの特徴

 本来、ASDから時間の経過とともに症状が軽減しますが、4週間以上経っても強いストレスを感じることがPTSDの特徴と言いましたが、実は障害者本人が自身のストレス反応に気がついていないこともあります。他者に比べて、やたら疲れやすいことや、不眠などの周辺症状と、その症状が見られるようになったきっかけを確認した結果、PTSDと判明するといったことも珍しくありません。

PTSDの治療

 治療には、薬物療法と認知行動療法のどちらかが選択されます。

薬物療法

 SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を服用するケースがあります。まずは症状の発生を抑え、2次的障害を予防するように認知行動療法で根本治療を進めていきます。

認知行動療法

 代表的な治療には、持続エクスポージャー療法(PE)、認知処理療法(CPT)、眼球運動脱感作療法(EMDR)があります。効果的と言われている治療法はありますが、PTSDの治療は大変デリケートな内容であり、一歩間違えると強いストレスになりかねません。主治医や公認心理士との密な連携が必要です。

就労支援事業所での考え方

 障害者のPTSDによる症状が、通所や就労場面にどのような影響を及ぼしているか確認します。加えて、最終ゴールへの影響も考察しなければなりません。具体的には、障害者本人が希望する職種で働く場合に、現状の症状がどのような場面で影響するか考えることにあります。

 障害特性上、PTSDの受傷歴や現状の症状について、障害者本人から聞き出すことは強いストレスや症状の誘発に繋がりかねません。まずは家族や他の関係支援機関からのヒアリングを実施することが望ましいです。もし、本人の症状が、目指す最終ゴールに影響を及ぼす懸念がある場合、症状の発生頻度や程度、寛解状況を主治医と明確に情報共有することが望ましいです。一般就労を目指すのであれば、主治医に意見書を依頼し、客観的な情報として進路や目標設定に活用することが望ましいです。

まとめ

 PTSDは、いわゆる「トラウマ」と表現されるように、大変デリケートな障害です。障害者本人との意見交換は大事ですが、障害に対する話題は段階的に増やしていく必要があります。初期評価の段階では、障害に対して根掘り葉掘りヒアリングすることが強いストレスになりかねません。他の支援機関と連携しながら情報を増やし、具体的な方針や目標が決まり次第、主治医等と綿密に連携することが望ましいと言えます。その後も、症状の程度により支援の進め方が変わりますので、十分に支援者間で協議を行い方針を策定いただければと思います。

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