【研修】就労支援事業所でどう対応する?身体表現性障害

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【研修】就労支援事業所でどう対応する?身体表現性障害

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

本記事は誰に向けて書いている?

  • 就労支援事業所で働き初めて間もない方
  • 精神障害者と初めて接する方
  • 就労支援事業所の業務に活かすために「医療」の考え方を知りたい方

 今回は、「身体表現性障害」について学びたいと思います。身体表現性障害は、障害者本人が強い苦痛を感じる一方で医学的に苦痛の根拠となる所見が見つからない病気です。障害者本人は、原因が見つからないことに対する不安が強いため、支援者側からの発言に敏感になっている障害でもあります。特徴やその対応をしっかりと確認していきましょう。

身体表現性障害とは

 体に病気と思われるような身体症状を感じているにも関わらず、診察や検査を行っても、症状に関連する所見が見つからない病気です。本人は苦痛を知覚しているため、強い不安を感じたり、原因を突き止めることに時間を使ったりしてしまい、日常生活に支障をきたします。

 身体的な側面から説明がつかないことで「身体表現性障害」の診断になりますが、本人からするとこの障害名を受け入れられないことが多いです。なぜなら、苦痛を知覚している本人にとって、「精神的な問題」といわれることは「気のせい」と言われているように感じます。精神障害と受け入れることができていない段階では、心理的なアプローチを提供することは難しい障害といえます。

 尚、精神的なストレスが原因で明らかな異常所見を呈する病気に「心身症」があります。身体表現性障害とは異なりますので、注意が必要です。

主な症状

 多種多様な症状を呈し、主に以下の5つに分類されます。

  1. 身体化障害
  2. 転換性障害
  3. 疼痛性障害
  4. 心気性
  5. 身体醜形障害

 それぞれを見ていきましょう。

身体化障害

 頭痛、腰痛、発汗、疲労感など、様々な身体的症状が数年間にわたり続いているものです。発症の男女比が著名であり、女性が男性の約20倍多いです。

転換性障害

 身体所見が見られないにも関わらず、視力の喪失、失声、感覚障害、歩行障害などの身体症状を訴えるもの。男女比は、女性が男性の2倍ほど多い。

疼痛性障害

 所見がわからないにも関わらず、痛みを訴え続けるもの。発症率に男女差は無いと言われています。

心気性

 がんなどの重大な疾患への恐怖にとらわれ、少しでも体に違和感があると、その症状に固執する状態。期間として、6ヶ月以上続くことが目安と言われています。満足する診断が得られるまで検査などを行います。

身体醜形障害

 自分の容姿に対して欠陥があると強く思い込む状態。症状として、抑うつになったり対人接触を避けたりする病気です。青年期から成人初期に多く男女差はないと言われています。

管理人
管理人

全体的には、身体化障害による消化器系や自律神経系の症状が多いみたいですね!確かに、消化器系はストレスに反応するイメージがありますね。

接し方の注意点

 身体表現性障害は、障害者本人が主観的に感じる症状と、医療従事者側が確認できる客観的な評価に大きなギャップがあることが特徴です。よって、このギャップに注意しないと不用意な発言になってしまう可能性があります。

 まずは、障害者本人が感じている症状は辛いものであるということを十分に理解しましょう。つらい症状のなか、原因がわからないのであれば、不安は膨らむ一方です。「重大な病気ではないか」「がんなのではないか」など、様々な想像に繋がります。本人の自尊心を傷つけないような配慮が必要です。

就労支援事業所での考え方

 身体表現性障害は、本人と医療者側のギャップから、アドヒアランスにより効果が変わる認知行動療法の受け入れが進まない可能性があります。そのため、身体化障害や疼痛性障害に対しては、リラクゼーション法による治療が選択されます。就労支援事業所でも、適度な運動プログラムや身体ケアの時間を確保することで、障害者本人が主体的に体調と向き合いケアすることができる「エンパワーメント」への働きかけが大切になります。

 障害者は、「不安」や「抑うつ」を併発することがあるため、向精神薬を服薬している場合があります。主治医から指示されている用法用量を守った服薬習慣となるような声掛けを行うとともに、2次的に活動量が低下しないよう、運動プログラムへの工夫などを行う必要があります。

 特に、身体症状に対してフィードバックではなく、就労課題に対する評価を中心にコミュニケーションを行い、自尊心を傷つけず自己効力感に繋がるような支援の工夫が大切です。

まとめ

 身体表現性障害は、期間が長引くにつれて、2次的な障害の発生が懸念されます。もし身体症状の原因が、身体構造による問題ではなく精神的なものであれば、よりポジティブなマインドになることで症状の変化に繋がるのではないでしょうか。就労支援事業所として、まずは日中の活動量を低下させないための工夫が大切です。活動量を維持できる習慣の構築とともに、就労課題と向き合うような環境の提供が大切と考えています。就労課題に着目したコミュニケーションを通じて、障害者本人に正のフィードバックを提供することで、よりポジティブなマインドや自己効力感に繋がるものと感じます。就労は、人間が幸福を感じるといわれる「貢献感」につながる感覚を提供しやすい環境であると言えます。障害者本人の障害を理解し、考えうる適切なアプローチにつなげていただければと思います。

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