【研修】就労支援事業所の職員向け「機能分析」とは

基本スキル

【研修】就労支援事業所で使える「機能分析」とは

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

 今回は「機能分析」について考えたいと思います。機能分析は、前回の「応用行動分析」とは異なり、障害者に生じている症状を、「個人の問題」として捉え、追求する方法です。障害者と関わる上で大切な視点になります。是非最後まで御覧ください。

機能分析とは

 障害者に生じている課題を、「障害者個人の問題」と捉えた場合に、なぜそのような行動が誘発されているのか考察する方法が「機能分析」です。人間から生じる反応の種類として、「認知反応」「生理反応」「動作反応」の3種類があります。目の前で起こっている課題・問題は、これらの反応がお互いに関連しながら生じていると仮定します。

 例えば、自閉症スペクトラム(ASD)の方で、壁を殴ってしまうような問題行動があるとします。本人を観察してみると、以下のようなプロセスが生じていることに気が付きます。

①本人が休憩時間中スマホのゲームに熱中している

②近くで複数人がおしゃべりをしている

③認知反応:他者の話し声により目の前の作業に集中できない状態

④認知反応:本人の特性により、他者に「声を小さくしてもらうことを依頼できない」

⑤生理反応:ストレスにより感情的になる

⑥動作反応:壁を殴るなど衝動的な行動につながっている

 このように、「認知反応」「生理反応」「動作反応」が関連することで、問題・課題が生じているという考え方です。このような仮設方法は、「演繹法」と呼ばれる仮設思考の方法とも似ています。

仮説法についても学ぶ

 仮設思考には「演繹法」と「帰納法」があります。ここでは、機能分析と概念が近い「演繹法」について簡単におさらいします。

 演繹法は、物事の普遍的な事実を捉えた上で、「A=B」「B=C」つまり「A=C」というような順番で事実を整理して仮説を立案します。

例)「哺乳類には血液がある」、「人間は哺乳類である」つまり「人間には血液がある」

 大切なことは、「普遍的な事実」を捉えることにあります。

 機能分析を行う場面でも、それぞれの反応が普遍的な事実としてまとまっている必要があります。先程のASDの例でも、最初に前提となる事実として、「ASD」であること、「コミュニケーションが苦手」であること「周りの音に反応しやすい」という事実がある場合に、分析として機能します。飛躍した解釈を行わず、事実根拠を明確にした上で、それぞれの反応を分析いただければと思います。

得られた情報からどのように対応するか

 就労支援事業所の現場では、得られた情報からどのような対応を行うかが重要な論点です。まずは、「認知」「行動」「生理」の3つの関連性を考察しました。よって、本人の問題行動が起こる要因に仮説があるため、その仮設の確度を確認する必要があります。

 先程、例に上げた発達障害者の方で考えてみましょう。壁を殴ってしまう問題行動は、周囲の雑音が原因であると仮定しました。もし、その仮設が正しいのであれば、静かな環境で過ごした場合には、問題行動の出現頻度が低下ないしは消失するはずです。職員で話し合いを行い、本人が過ごす環境を、雑音が少ない場所に変えてみます。

 環境を変えた上で、問題行動の出現状況を確認しましょう。変わらず問題行動が出現しているのであれば、仮説は外れ、新たな仮説を検討しましょう。仮説の通り、問題行動が減少したのであれば、要因の1つを導き出したことに繋がります。

 反応要因を分析し、「仮説→検証」に基づいて、障害者の問題行動を減らす方法を考察しましょう。

まとめ

 機能分析についてお伝えしました。機能分析で得られた結果も、一つの仮説に過ぎません。よって仮説の確度を高める方法を同時に意識することで、より結果がでるアセスメントに繋がります。機能分析は、個人に着目する評価方法ですが、職員は、「観察法」によるアセスメントを通じて障害者の反応を客観的に捉える必要があります。広い観察力が必要な分析でもあるので、まずは職員がじっくりと障害者を観察する時間を設け、アセスメントに取り組んでいただければと思います。

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