【研修】就労支援の職員向け「発達障害の2次障害等」について
こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。「研修」シリーズでは、就労支援事業所等で障害者と接する方が知っておく必要がある様々な知識を発信していきます。
今回紹介するのは「発達障害の2次障害等」についてです。近年は「大人の発達障害」という言葉が一般的になりました。そこで課題となっているのが、2次障害です。普通学級を出た「個性的な学生」が、一般社会に進出した時に、自身の個性が社会に馴染めず2次障害につながる事例があります。どのような特徴があるのか確認していきましょう。
※本記事は学術書を参考に筆者の経験に基づく知見が述べられています。常に知識のアップデートを心がけていただければ幸いです。
ASDとADHDの併発
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)はキレイに線を引いて両者を区別することが難しい疾患です。仮にどちらかを主治医から診断されていても、現場で接していると両方の障害が混ざりあった特性となっていることがあります。
[症状]
●ASD
- こだわりが強い
- 対人コミュニケーションが苦手
- 人と目を合わせない
- 音や色の変化に敏感
●ADHD
- 不注意
- 人とぶつかる
- ものを落とす
●ASD&ADHD(混合型)
- 普段はおとなしいが衝動的な行動を取る
- 相手の話を聞かずに喋りたいことを一方的にしゃべる
実は医師でも判断が難しいと言われています。近年では、自分が発達障害かセルフチェックするチェックシートがインターネットに出回っています。セルフチェックの結果で障害を判断することは危険です。就労支援事業を運営していると、障害者から「私は発達障害も併発しているのでしょうか?」と質問を受けることがあります。しっかりと医師に相談することを促し、安易にセルフチェックツールを紹介することがないように注意しましょう。
2次障害のリスクを知る
大人の発達障害を知るのは当人が社会人を出てしばらくしてからのタイミングが多いです。それまでは、学業優秀でエリート街道を進んでいたこともあり、本人が強く自覚するような「失敗体験」「挫折」というものはありません。新人社員の頃は、仕事も優秀にこなし、若きエースとして将来を期待されます。
しかし、人事考課を経て、昇給したころから様子が変化します。自分の仕事だけをこなせばいい存在から、他者の仕事にも配慮しなければならなくなります。仕事にこだわりを持って取り組むことから、他者の成果物が納得できず、「人に任せず自分で全部やろうとする」性質が災いとなります。次から次へと舞い込んでくる仕事をさばくことができません。次第にミスが目立つようになり、現場からの評価も下がります。過去に感じたことがない失敗体験を経験していますが、コミュニケーション能力が低いことが追い打ちとなり、誰にも相談することができません。
度重なるストレスは、心身症状となって知覚されていきます。自律神経の不調や睡眠障害、呼吸障害、うつ症状などです。次第に依存性のある行動(アルコール、性、ギャンブルなど)に没頭するようになり、社会的・経済的な課題になることがあります。
就労支援事業所ではどう考えるか?
就労支援事業所が関わる発達障害者は様々な経緯で主治医から診断を受けている当事者になります。先ずは、その方が診断に至った経緯を正確に把握しましょう(現病歴の把握)。現病歴を確認することで、障害のきっかけと2次障害の有無・リスクを把握することができます。
2次障害を防ぐためには、発達障害の特性による「失敗の悪循環」を止める必要があります。そのためには、悪循環を生成しているいずれかのポイントに対するケア方法を検討することが大切です。
障害者個々の強みと弱みを踏まえ、発達障害者に経験してもらいたい成功体験を検討しましょう。よく就労支援事業所の職員が、障害者を直接指導することで行動変容を促そうとする事があります。発達障害者は、先天的な脳機能の特性によるもののため、一朝一夕で行動変容を促すことは難しいです。特に大人の発達障害は、幼少期などの自己同一性が形成される時期には経験したことがない失敗体験により2次障害を発症しています。一方的に言語化した情報で指導することは極めて難しいです。大切なのは本人が活用できていない周りの資源(人への相談、役割分担など)を活用せざるを得ない環境設定を行うことです。本人のストレスに考慮する必要がありますが、環境を整備することで今まで経験していない体験をすることができます。
例えば、事業所が実施するイベントの企画・運営・プロジェクト管理などを実施してもらうのが良いかもしれません。いつでも失敗でき、必要に応じて職員から声をかけられる環境だからこそ、できる負荷のかけ方であると考えられます。
まとめ
発達障害者の2次障害に関するリスクについてご紹介いたしました。就労支援事業所に通所している発達障害者は、既に2次障害を発症し、診断されているケースもあります。事業所として大切なのは、本人が発達障害の診断を受けるに至った経緯を把握することで、個々で異なる弱みを把握することにあります。把握できれば、新しい成功事例や経験を体験してもらう環境設定を行うことが大切です。これらの特徴を意識して、日々の支援計画に活かしていただければ幸いです。
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