こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。
今回ご紹介するのは「発達障害者の疲労度のチェック方法」についてです。発達障害者は、関心の深い作業であれば人一倍集中力を発揮して取り組むことができます。一方で、自身の肉体的・精神的疲労の許容範囲を超えてしまうことから、作業終了時に過労によって体調を崩すことがあります。このような事態を事前に防ぐために、疲労度のチェックは大切です。確認してみましょう!
疲労度とは
運動や作業などを遂行することに、本人が自覚する疲れ具合をしばしば「疲労度」と表現することがあります。自覚的な疲労度を測定する方法には様々な評価手法ありますが、運動に特化したものであれば「ボルグスケール」、広汎的に活用できるのが「VAS」などが一般的です。
ただし、就労支援事業所に通所する発達障害者の場合、少々視点が異なります。重要になるのは、私生活を含めた1日の行動内容と疲労度との相関性を評価することにあります。日中活動に影響を及ぼす要因を分析するためには、在宅・余暇活動の実施状況と、実施に伴う疲労度を可視化することが大切です。
チェックの方法
以下の手順でチェックを実施することができます。
- 1日の疲労具合をVASなど定量的手法を用いて毎日測定する
- 前日1日のスケジュールを簡単に記録する
- 疲労度が高い(疲れている)ときは前日のスケジュールに課題となる要素が無いか確認する
- 課題がある場合には改善策を検討する
※「課題がない」という場合に、特に支援者から生活内容を指摘する必要はありません
まずは日々自覚する疲労度の変動を記録する必要があります。記録は定量的な方法であることが望ましいため、VASなどの評価スケールを活用することが望ましいです。
※VASの詳細は本記事で記載しません
次に前日の生活スケジュールを簡単に記載しましょう。記載することが目的ではなく、生活内容を見える化して、分析し、改善することが目的なので、スケジュール表の作成自体に時間をかける必要はありません。
特に重要なアクションは、自覚的疲労度が強い場合の前日のスケジュール内容です。本人に、「なぜ今日は疲れているのか」「前日に何があったのか」「疲れを残さないためにはどうする必要があったのか」「実施するためには何を注意すれば良いのか(対策)」を検討してもらうことにあります。
まずは記録を残す習慣を構築することで、その後の分析体制を構築することができます。
実施する際のポイント
日々の疲労度のチェック方法として以下が重要なポイントになります。
- 目的は「疲労度のばらつきを抑えること」
- 「自覚的な疲労度」と「客観的な生活内容」の整合性を自覚することが大切
- 支援者が生活内容について改善方法を指摘しない
疲労度をチェックする目的は、不安定な身体的・精神的な疲労が安定することにあります。そして、目的を遂行するためには、本人の行動が今までと変わる必要があります。
行動が変わるプロセスのことを「行動変容」と表現することがあります。行動変容では、最初に「関心期」というフェーズがあります。人は関心を持ったものでないと、行動が変化するきっかけを持つことができません。よって、支援者が一方的に生活方法を提案・指摘しても、発達障害者が関心を得ていなければ、変化につながる可能性が低いといえます。
これらのことから、今回の実施方法で大切なポイントは、「本人が思考し、自分で行動プランを立案してもらう」ということにあります。自身の生活面を客観的に見直し、時間をかけてでも「課題」となる要素を抽出します。次に課題を解決するための行動を実際に実施し、「結果と次の課題を分析」という行動を繰り返すことが大切です。
事業所によって生活プログラムの進め方は特色が出るポイントかと思います。もし、生活プログラムを見直している段階であり、本記事に記載の内容が生きる点があれば幸いです。
まとめ
今回は、発達障害者の「疲労度」と「チェック方法」について記載いたしました。発達障害者が、時に物事に深く集中することができる強みは、実際の就労現場に生かしていきたいところです。しかし、その集中により、他の業務に支障が出てしまううちは、一般就職後の定着を実現することは難しいといえます。昨今、一般就職後の定着が事業所評価や経営状況にも強く影響するようになってきました。事業所は、障害者本人が事業所を活用する期間で、自身の生活と向き合うきっかけを提供し、新しい行動習慣が実現できるようにサポートいただければ幸いです。
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