【研修】就労支援事業所の職員向け「発達障害者に実施する思考可視化トレーニング」

職員向け研修

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

 今回ご紹介するのは、発達障害者に対して実施する「思考可視化トレーニング」についてです。この手法は、認知行動療法の考え方とも近いものであり、精神障害者に対する治療として用いられてきました。当然、2次障害で精神症状を発症するリスクがある発達障害者に対しても活用する事ができます。そのポイントを確認していきましょう。

「思考可視化」とは何か

 文字通り、発達障害者本人が自分考えを客観的に振り返ることで様々な気づきを得るための方法です。認知行動療法というと、よく「心理士による巧みな話術により、認知のゆがみや固定観念を崩し、修正する」というマインドコントロールをイメージされる方がいらっしゃいますが、これは誤りです。認知行動療法は、あくまでも自身の思考を客観的に見つめ、解決する必要がある課題の解決方法を、本人と支援者が一緒に考えることに意味があります。

実施することで期待できること

 発達障害者は、その特性からも限定された考えに終始しがちです。一度、結論が出た場合に多方面から別の考えを推察することが難しいだけでなく、異なる考えを持った他者からの意見が一切頭に入らないような状態になります。思考可視化トレーニングを実施することで、「思考」の工程を再度実施することができ、続けることで以前とは異なる結論にたどり着くことがあります。このトレーニングは、普段と異なる脳の思考回路を活用するため、発達障害者にとっては強いストレスになりえます。よって、トレーニング中は支援者の立ち居振る舞いも大変重要です。

「思考可視化」の進め方

 以下のような手順で実施することができます。

  1. 紙やPC画面を用意する
  2. 事柄に対して本人が感じたことをまとめる
  3. まとめるポイント①「現状(いつ・どこで・誰に・何を・どのように)」
  4. まとめるポイント②「率直な自分の考え(なぜ)」
  5. 紙には様々な視点からの質問が記載されており、ポイント①・②に対して異なる回答をまとめます(例:他の考え方はないか、今回の件を防ぐためには、明日から実践することは、今回の件をより良い方向に変えるためにいつまでに・何をするか)

 時間を決めて実施し、もし紙にまとめられなかったとしても特段問題はありません。ただし、強いストレス反応を示す場合や思考が中断している場合には、支援者は声掛けを行います。継続可否を判断し、場合によっては中止も検討します。

 実施後は必ずフィードバックを行います。思考可視化トレーニングは、「考えの正しさ」を追求するものではありません。視野の広さを確認するものです。時に、本人の考えに対して、支援者が感じる別の視点を少しだけ補足することも効果的かもしれません。支援者が正のフィードバック(褒める、称える、肯定するなど)を行うのは、意見の内容ではなく、別の意見を考えることができた姿勢に対してです。

就労支援事業所での実践方法

 様々な場面で活用することができます。例えば、モニタリグを実施する前などは効果的です。モニタリングでは、個別支援計画書に基づいた支援方針について、支援者と本人が進捗を話し合い、目標設定を再考します。当然、支援者が一方的に作成した目標では、絵に描いた餅状態になりかねません。障害者の本人の主体的な考え方が大切です。よって、定期的に「自身の就労能力」に対する思考可視化トレーニングを実施、得られた本人の考えに基づいてモニタリングを実施するなどは効果的であると考えられます。

まとめ

 発達障害者の特性を踏まえると、思考を可視化しフィードバックを行う工程は、新しい発見や気づきにつながる効果的な方法であるといえます。ただし、その限定された思考が仇となり、発達障害者本人が思考を可視化することに対して、「こんなことやったって意味がない」と考えていては何も効果はありません。最初の取り組みとして、まずは本人にこのプログラムの意味や実施する目的を明確に説明しましょう。取り組みに納得感を得ることが、最初のアプローチであると言えます。物事に対して意見を持つことは人の自由な権利であり、このトレーニング自体、考えを強制的に変えるものでは無いということを十分にご説明いただければと思います。日々の支援に生きる情報となれば幸いです。

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