【研修】就労支援事業所の職員向け「発達障害はどのように診断される?」

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【研修】就労支援事業所の職員向け「発達障害はどのように診断される?」

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

 今回紹介するのは「発達障害はどのように診断される?」についてです。前回は、発達障害が疑われた際に活用する検査(WAIS-Ⅲ)についてご紹介しました。発達障害者の強み・弱みを把握することで、就労支援事業所の訓練等に活かすことができます。これらの検査以外にも、発達障害の診断に活用される情報は多々あります。知識として、触れておきましょう。

発達障害が疑われる際に医師が重視すること

 医師は、家族からの情報を大変重要視しています。なぜなら、「過去から現在まで、本人が苦手としていることが同じである」という発達障害の特徴があるからです。

 大人の発達障害の場合は、本人が気が付かない間に、家族が支援していることがあります。例えば、人間関係やコミュニケーションが上手くいかず、一人で過ごしていることが多い子供に対して、ほぼ家族の意思で、本人がスポーツクラブに入会することで、同年代の友人と過ごす環境を作るなどがあたります。

 クラブに参加しているうちは、友人が多い環境になります。しかし、本人の発達障害による対人関係の障害は残っており、大人になった際に「生きづらさ」として自覚することなどがあります。

 このように、誰かの支援を受けている年齢では、発達障害により苦手なことも環境の工夫により目立っていないことがあります。よって、本人も知り得ない状況を家族が知っているということはよくあります。主治医は、本人ではなく家族からの情報にも注意を払い、どのような特徴や傾向があったのか確認します。

発達障害の診断に活用される指標

 前回ご紹介したWAIS-Ⅲは知能指数を確認するための重要な指標です。その他にも、発達障害を診断するにあたり活用される指標があります。

自閉スペクトラム症指数(AQ)

 AQは、個人の自閉症傾向を測定する目的で開発されました。高機能自閉症やアスペルガー障害を含む自閉スペクトラム症のスクリーニング検査にも活用されます。国際的に広く活用される指標で、臨床や研究の場面で検査に使われます。

 検査ができる項目として、以下のものがあります。

  • 社会的スキル
  • 注意の切り替え
  • 細部への関心
  • コミュニケーション
  • 想像力

ASRS

 ASRSは、成人期のADHD自己記入式症状チェックリストの略です。アンケート形式の検査であり、18項目の質問に5段階回答(リッカート尺度)を行います。

 質問内容はパートAとパートBに分かれており、パートAの6問中、4問以上で高いスコアが確認された場合にADHDである傾向が強くなります。パートBで、更に詳細な特性を知ることができます。

CAARS

 子供のADHDとその周辺症状を診断する「Conners3」の著者であるキース・コナーズ博士による、成人に見られるADHD関連の症状を評価する目的で作成された検査です。

 質問項目は、自己記入式66項目、観察者評価式66項目の2種類です。観察者として、家族や友人、同僚など、最近の本人のことをよく知る人物が担当します。

AASP

 AASPは、青年・成人感覚プロファイルの略称です。感覚刺激への反応傾向を4つの象限(Dunnの感覚処理モデル)から評価するものです。研究や臨床の幅広い分野で活用されています。

 評価対象者が自分で質問票の項目に回答し、検査者がスコアを集計します。質問内容は「味覚・嗅覚」「動き」「視覚」「触覚」「活動レベル」「聴覚」の6つのセクションに分けられて、計60問の質問で構成されています。

どのように診断されるのか?

 様々な検査結果から、本人の症状の傾向を把握します。その後、発達障害の診断には「DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル(第5版)」や「ICD-10(国際疾病分類第10版)」などを活用して実施されます。

 ASDやADHDの判断材料としては、WAIS-Ⅲ、AQ、ASRSなどを組み合わせて総合的に判断されます。また、感覚に過敏さが見られる場合には、AASPを活用してどの領域に過敏さがあるのか判断します。

 このように、発達障害の有無やその内容は、様々な問診情報・検査結果を総合的に判断していることが分かります。

就労支援事業所で活用する方法

 就労支援事業所は臨床機関では無いため、これらの検査を実際に事業所内で提供することはほぼ無いと思います。ただし、これらの検査結果を把握することで、障害者本人はどのような能力に優れ、どのような能力が他者比べて劣っているのか、正確に把握することができます。地域の医療機関や、障害者の主治医等と連携する場合には、これらの情報に着目することで、個別支援に活かしやすいより詳細な意見交換につなげることが可能です。

 得られた情報は、そのまま支援プログラムや個別目標への応用、就職先の考察に活用することが可能です。発達障害のため、なかなか能力を改善させることは難しい課題かもしれません。ただし、現代の多様性社会であれば、本人の苦手とする能力を一切必要としない職場が存在する可能性が高いです。職場適性を見極める視点で、一般的に活用される検査基準に基づいた情報を収集することが重要であると考えらます。

まとめ

 発達障害の診断がどのように進められていくのかご紹介いたしました。大変分かりづらく、主治医でも判断に迷う発達障害ですが、世の中には沢山の整備された指標や検査が存在します。これらの検査を就労支援事業所として活用することができれば、職員の経験による属人的なものではなく、定量的な情報として日々の支援に応用することが可能です。実際に検査結果を知りたい場合には、主治医や地域の医療機関と連携することが求められます。是非これらをきっかけにより密な地域連携を実現いただければと思います。

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