【研修】就労支援事業所の職員向け「発達障害者の特徴と対処方法②」

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【研修】就労支援事業所の職員向け「発達障害者の特徴と対処方法②」

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやんです。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

 今回ご紹介するのは、前回と引き続き「発達障害者の特徴と対処方法」についてです。これまで発達障害者の特徴について記事を記載してきました。今回は対処方法としての考え方と、具体的にどのようなものがあるのか確認していきたいと思います。

発達障害者の仕事で見られる特徴

 これまで注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)に代表される症状についてご紹介してきました。では、発達障害者の特徴は仕事環境でどのように現れるのでしょうか?よく見られると言われている症状には以下のようなものがあります。

  • 新しい仕事に優先順位が付けられない
  • 必要がないことまで指摘してしまい他者をイライラさせてしまう
  • 整理整頓ができず大切な書類を無くしてしまう
  • 2つのものを依頼されると片方を忘れてしまう

 それぞれの特徴を見てみましょう。

新しい仕事に優先順位が付けられない

 優先順位をつかむことが苦手です。例えば、上司から早めに進めて欲しいと依頼された仕事でも、自分が進めている仕事や、関心があるやりたい仕事にとらわれてしまい、優先課題に着手することができません。

必要がないことまで指摘してしまい他者をイライラさせてしまう

 自身が関心のある仕事には強いこだわりをもって取り組む傾向があります。その関係で、一見他者からしたら論点になっていない要素を指摘するような行動が目立ってしまいます。例えば、「資料の全体構成を確認して欲しい」と依頼を受けているにも関わらず、「ここの句読点の使い方がおかしいです」「色のバランスが悪いです」といったような細部の論点にとらわれてしまうことがあります。

整理整頓ができず大切な書類を無くしてしまう

 整理整頓は発達障害者にとって苦手な課題です。書類を山積みにしてしまったり、文房具が散らかって保管されていたりすることがあります。非衛生的な側面では、ゴミが捨てられないなどの特徴が見られます。

2つのものを依頼されると片方を忘れてしまう

 仕事などで依頼されたことをメモをとったり作業手順を考えたりする記憶能力を、作業記憶(ワーキングメモリ)といいます。一般人は、ワーキングメモリで一時的な記憶を活用して、メモ帳への記入や、スケジュール表に反映などを行います。しかし、発達障害者はワーキングメモリが著しく苦手な関係で、同時的に2つのものを依頼されたり、連続で他者から話しかけられたりすることで、片方の情報を失念しやすいという傾向があります。

対応方法

 発達障害は先天的な脳の構造による症状です。できないことに対して、努力論・根性論に代表されるような非構造的なアプローチでは現状を変えることは難しいといえます。加えて、一般的に勘違いされることがあります。それは、「発達障害」は「障害」ではなく「個性」ということです。

 例えば、「大人の発達障害を診断されるきっかけとして、学生時代は学業優秀なエリートが、大企業への就職後、組織マネジメントの仕事に対してパフォーマンスが発揮できないために挫折し、体調を崩す」というような、一連の診断経緯があったとします。学校では「優秀」、個人プレーの仕事も「優秀」、組織マネジメントで「挫折」という経緯からも、発達障害の特性が現れるのは、環境によるところが大きいことが分かります。よって、対処方法も、環境調整による構造的な変化がポイントとなります。

 環境を変えることを前提に、前述の4つの特徴に対する対応方法を考えてみましょう。

新しい仕事に優先順位が付けられないことへの対処方法

 まず、仕事の全体像が見えていない可能性があります。対処方法として、全体像を見えるようにするための工夫をルール化します。具体的には、Todoリストやカレンダーアプリなどに予定を加える際に、優先度のABC評価を添えるようにします。

A:絶対に期日を守らなければならないもの

B:期日が無いが進める必要があるもの

C:期日が無く絶対にやる必要は無いが時間があれば実施するもの

 新しい仕事が依頼されたタイミングで、ABC評価の状況を踏まえて、改善策を検討する方法です。

必要がないことまで指摘してしまい他者をイライラさせてしまうへの対処方法

 本人は意図して相手をイライラさせているわけではありません。細かいことを指摘してしまい、他者を立腹させたことを自覚しているケースもあります。この場合、事前に関係者に自身の特性をPRしておくことが大切です。例えば、以下のような一言を事前に声かけることがポイントです。

「私は細かいことが気になってしまう正確なので、論点がずれた回答がありましたら、遠慮なく「それはまた今度」と仰ってください。」

 この一言を言えているか否かで、相手に与える印象は大きく変わります。

整理整頓ができず大切な書類を無くしてしまうへの対処方法

 発達障害者にとって、整理整頓は苦手です。なぜなら、「整頓できている」というゴールが人による解釈がバラバラだからです。整頓は、意外にも臨機応変な対応が求められる能力になります。そこで、整頓できている状態を可視化することが大切です。例えば、「仕事の最後にデスクはこのような状態にしておく」とルールを定め、写メなどを残して置くことも一つかと思います。また、保管する資料は必ずファイリングするとルールを定め、ファイリング前の書類を保管するスペースを確保しておくことも良いでしょう。

 定まったルールは、発達障害者の強みが発揮され、しっかりと遂行できる可能性があります。

2つのものを依頼されると片方を忘れてしまうへの対処方法

 メモのとり方を工夫する必要があります。メモのルールとして、以下の者が上げられます。

  • 他者からの依頼事項は5W1Hで記録する
  • メモ帳よりもリマインド機能が発揮できるアプリや付箋を見える位置に貼り付ける工夫を行う
  • メモを取っている最中に別の人から声をかけられたら「少々お待ち下さい」を積極的に活用する

 メモのとり方は個性が出ることろです。ただし、ポイントを抑えることができれば仕事の進め方が大きく変わるポイントでもあります。

就労支援事業所としてどのような訓練が良いか

 前述の内容はあくまでも一例であり、障害者個々の能力や特徴に合わせた対応を検討する必要があります。ポイントは、構造を変え、ルール化することにあります。自分の苦手なポイントを理解した上で、強みを生かして苦手な対応を変えるにはどうすれば良いか、支援者同志で話し合い、具体的な対応案に変えていくことが求められます。特に、集団でなにか一つの目標を達成するようなチームプレーが求められる環境で、発達障害者の強み・弱みは明らかになりやすいです。グループワークや集団レク、イベントの企画・運営などを通じて、本人の立ち居振る舞いをアセスメントすることが求められます。アセスメント結果を本人と共有し、支援者と内容を振り返り、次に意識することを共有することが大切です。

まとめ

 今回は発達障害者の職場環境で見られる特性と対処方法について記載しました。結局のところ、個々の発達障害者が持っている強み・弱みは、明らかになるのは環境による要因がほとんどであるという点です。よって対処方法も環境に変化を加えることを主戦略として検討することが求められます。生活内で見ることができた苦手なポイントを記録し、誘発した構造を分析することで、具体的な対応案につなげることができます。今後のアセスメントに、少しでも参考になれば幸いです。

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