就労支援事業では、少数の人員で最高のパフォーマンスを発揮する必要があります。
令和3年度の報酬改定検討チームの議事録にも、事業所の「質向上」が議題に上がります。
質を定義づけることは難しいのですが、概要を捉えると、障害者で一般企業並みの生産性獲得に貢献した施設評価されるようになるという点です。
そのためには、他の事業所にはない自施設の強みを打ち出し、共感と親和性のあるニーズを持った障害者に通所いただくことが重要です。
このように自社と他社の違いを比較し、効率的な研究開発を進める際に当フレームワークは有効です。
以下に概要を紹介します。
就労支援事業所でコア・コンピタンス分析を行う理由
- 一般就職・定着実績や、賃金工賃向上の達成に向けて効率的に利用者が集まるようにする
- 自社と他社の違いを可視化し、自社が積極的に資源を投資するポイントを明確にする
コア・コンピタンス分析の内容
「コンピタンス(competence)」とは他社を寄せ付けない自社の強みという意味になります。
就労支援事業所を運営するにあたり、障害者や地域の支援機関が求めるニーズがあると思います。
例えば、「障害者の支援力」「ビジネススキルの指導力」「一般企業とのネットワーク」「業務開発力」など。
当然、就労移行支援事業所や、就労継続支援A型・B型で、ニーズが変わります。
これらの要素に対して自社の能力を数値化し、比較してみるという方法です。
コア・コンピタンス分析の進め方
コア・コンピタンス分析は、Excelやスプレッドシートを活用することで効率的に実施できます。
手順は以下の通りです。
- 実施目的を明確にする
- 比較する対象企業(他社)をリストアップする
- 目的を踏まえ比較する項目・要素を検討する
- 各要素を数値化してみる(その数値にした理由も含めて入力する)
(例)就労移行支援事業所の場合
コンピタンス | 自社 | A社 | B社 |
支援スキル | 40 | 50 | 70 |
障害者支援コンテンツの品質 | 50 | 50 | 30 |
事業所の立地 | 70 | 40 | 30 |
付加価値 | 70 | 50 | 50 |
※各数値にした理由を明確にしておく
※実際に顧客に与えている価値明確な数値にすることは難しいので仮説をベースに全体を埋めてみる
算出した数値を基に戦略を立案します。
例えば、開業初期であれば、自社のHPやパンフレットには、他社より優れている立地(「駅から徒歩〇〇分!」、「新築物件で快適学習!」など)について、積極的に記載しても良いかもしれません。
ある程度利用者が集まった段階では、支援品質の向上を目指して開発面にコストをかけることで、他社の優位性を減らしていくことも良いかもしれません。
このようにフレームワークを活用した上で表現できるメッセージを踏まえて、仮説→アクションプランを選定することが重要なステップになります。
コア・コンピタンス分析のメリット
- 頭でイメージしていた自社の強みを他者と比較した上で客観的に見れる
- 限りある経営支援をどの分野に投下するか検討できる
- 数値理由が明確であると具体性が表現できるので意思決定に反映されやすい
コア・コンピタンス分析のデメリット
- 数値化に属人的仮説が反映されやすい
- 数値にこだわりすぎると分析に時間がかかりすぎる
- 要素立案の段階で判断を誤ると大きな損失につながる
まとめ
コア・コンピタンス分析は、自社と他社の比較を具体的な数値に落として考察するため、論理思考力や曖昧な議論にならない点が優れています。個人的な所感ですが、コア・コンピタンス分析は、実際に作成する人の思考を整理できる点で、実施者の思考力トレーニングにつながるように感じます。
福祉施設は他の民間ビジネスと異なり、価格競争やシェア率というような考え方はありません。うっかり抽象度の高い議論で意思決定につながってしまう習慣があるので、フレームワークを活用し、論理的に解釈してみるのはいかがでしょうか。
フレームワークを活用した施設様のオンライン研修も実施しております。
ご関心のある事業所様はお問い合わせください。
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