訓練プログラム紹介_作業能力アップの方法

勉強会(支援者向けコンテンツ)

就労支援事業所に通所されるご利用者様は、

①一般企業で働いていたが、リタイアした方
②特別支援学校を出てから地域の施設を活用しており、まだ一般企業で働いたことがない方

上記の2種類に大別されます。

なぜ一般企業で働く事、働き続ける事ができなかったのでしょうか?

もちろん個人により、理由は大きく異なりますが、以下のような事例が多いのでは無いでしょうか?

  • 社会性の問題
    ・欠勤時に連絡ができない
    ・身だしなみが整っていない
    ・自身のルールが根強く、組織のルールに馴染めない
    ・健康管理ができない
    ・感情がコントロールできない
    ・挨拶ができない
    ・相手のことを思いながら会話ができない
    ・報連相が泥濘
    ・メモが取れない
    ・仕事の片付けや準備などの段取りが弱い
  • 作業能力の問題
    ・集中力が持続しない(持続性注意障害)
    ・指示内容を理解できない
    ・手先が不器用
    ・物事に対して、的確に質問できない
    ・物事の失敗を自分の責任と感じることができない(当事者意識の欠如)
  • 遂行能力の問題
    ・判断力の欠如
    ・作業時間と休憩時間の区別がつかない
    ・体力が乏しい
    ・作業意欲が低い
    ・危険への認識(予見・結果回避能力の欠如)
    ・作業スピードの問題
    ・適応性の問題

これらそれぞれについて、ご利用者様本人がどの程度の能力があるのか、就労支援事業所の職員は定量的にアセスメントを行います(「定量的アセスメント」については、こちらもご参照ください)。

アセスメント結果を踏まえ、訓練プログラムを行うわけですが、ご利用者様の学習効率を大幅に改善させる方法があります。

それが、ワーキングメモリーに対して直接アプローチすることです。

今回は記憶の種類と、ワーキングメモリーへのアプローチ方法について、お伝えいたします。


記憶の種類

まずは人間の記憶について記載します。

記憶には、長期記憶と短期記憶の2つに大別されます。

長期記憶

意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶が含まれます。

意味記憶

単に知識を意味します。例えば、「カブトムシ」というと、
昆虫である、足が6本ある、夏に見かける、クワガタが似ている、メスは角がない
の様な知識的情報です。

エピソード記憶

個人が経験した出来事に関する記憶です。

例)小学校の入学式のとき、両親と家の前にある桜の木の下で記念写真を取った思い出があります。

エピソード記憶では、その記憶を構成する様々な情報(時間、場所、誰と、何をなど)が記憶されることを特徴としています。

手続き記憶

運動技能や知覚技能、認知技能、習慣などのことを言います。

パソコンのタイピング能力、朝歯を磨く習慣、オセロのやり方など、
同じ経験を反復することにより形成されるものを言います。

短期記憶

ワーキングメモリー(作業記憶)が該当します。

ワーキングメモリー

情報を一時的に保ちながら、操作するための構造や過程の記憶を言います。

特にADHDや自閉症など、発達障がい者への指導方法を導くことに有用とされています。

Postle, B. R. (2006). Working memory as an emergent property of the mind and brain. Neuroscience, 139(1), 23-38

就労支援事業所でワーキングメモリーの訓練が必須な理由

 就労支援事業所のご利用者様は、日々訓練プログラムや生産活動に携わっておりますが、現在よりも作業能力を向上させることが目下の課題です。ワーキングメモリーは作業能力に対して重要な記憶能力のため、直接訓練するような方法が重要であると言えます。

ワーキングメモリーの鍛え方

 では、どのようにしてワーキングメモリーに対して直接アプローチするのでしょうか?精神科医で、多くの著書を執筆している樺沢紫苑さんは、「絶対にミスしない人の脳の習慣」で以下の方法を提案しています。

  1. 7時間以上の睡眠
  2. 有酸素運動
  3. 自然の中での運動
  4. 読書
  5. 記憶力を使う
  6. 暗算
  7. 料理
  8. ボードゲーム
  9. マインドフルネス

これらが有効であると記載しています。

これら9つがなぜ有効なのかは本書をご参照いただければと思いますが、就労支援事業所の運営におけるヒントがかなり詰まった1冊となっています。
また、精神科医による書物なので、大変信頼のある情報です。

ワーキングメモリーへのアプローチ方法のポイントをまとめると、

  • 脳への血流量を増加させて新鮮な酸素を回す
  • すでに定着している長期記憶を使い、記憶能力を活性化する

となります。

なぜ?ワーキングメモリーが改善するのか、しっかりと理解した上で訓練プログラムに活かして行く必要があります。

どのように現場に落とし込むか

以下の手順が大切です。

  1. 実際に、「 絶対にミスしない人の脳の習慣 」を読んでみる
  2. 事業所のスタイルに合わせて、上記9つのうちどの訓練法が適正か検討する
  3. A41枚で短期記憶能力の重要性をまとめてみる
  4. ご利用者様の短期記憶能力をアセスメントしてみる
    方法は色々ありますが、短期記憶の測定ができるサイトがありますので参考にしてみてください。
  5. 実際に短期記憶訓練を実施する
  6. 2週間実施し、4.と同じ方法で中間アセスメントを実施する
  7. アセスメントの結果を踏まえ、「訓練の変更、訓練の継続、訓練の中止」を検討する

以上です。

重要な点として、訓練の実施前後で短期記憶に特化したアセスメントを実施することがあります。

なぜなら、計画している訓練が本当に効果があるものなのか、効果判定を行い計画を変えていく必要があるからです。

その様な点を踏まえ、限られた時間で意味のある訓練時間を提供していただければと思います。

さいごに

ワーキングメモリー(短期記憶)の訓練は、就労支援事業所で訓練を行うご利用者様のベースと成る能力です。

すでに高い記憶力を持っているご利用者様もおります。

しかし、この能力に課題があるご利用者様に対して、技能的な訓練を進めたところで効果が出るまでに時間がかかります。

限られた時間は無駄にせず、根拠を持って訓練プログラムにつなげていただければと思います。

このブログでは、就労支援事業所の運営に役立つ情報や、障がい者の方が就職する上で必要な様々なコンテンツを発信しております。

今後、取り上げて欲しい情報などがありましたら、info@hst.tokyoまでご連絡ください。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。

コメント