【注意】サービス管理責任者「名前だけ」の配置は違法|リスクと対策を考察

法理解
かねやん
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サービス管理責任者は、障害福祉サービスの要であり、大変重要な存在だといえます。一方で、離職率が高い職種でもあることから、事業継続に影響を及ぼすような重要な問題に成ることがあります。ではどのように対策すればよいのでしょうか?

 こんにちは。就労支援事業運営.comの管理者、まつやんです。今回はサービス管理責任者に関するトピックです。ここ最近、「サービス管理責任者を名前だけで配置しても良いのか?」という相談が入ることがあります。結論、極めて課題のある思考であると解釈しています。ただし、近年の法制度において、サービス管理責任者の運営に対する影響度がとても高いなか離職率も高い、というマネジメントにおいても難しい職種であることが理解できます。

 今回は、サービス管理責任者を名前だけで配置した場合にどのようなリスクがあり得るのか、そしてどのように対策する必要があるのか、考察したいと思います。

結論

 サービス管理責任者を名前だけで配置することは「違反」です。また、悪意のある違反であると解釈されることから、重大な行政処分である「指定取り消し」となる可能性が十分に高い行為と言えます。

 サービス管理責任者の存在は、障害福祉サービスにおける質の高いサービス提供を担保するための不可欠な役割を果たしています。特に、事業所においては、サービス管理責任者が法令遵守やサービスの質を確保する上で中心的な存在です。この存在を偽ることで、行政はもちろんのこと、利用者に対しても運営体制を偽ることになります。

違法行為としての名前借り

 サービス管理責任者を「名前だけ」で借りることは、厚生労働省が定める基準に明らかに反しています。管理責任者は、サービス提供の質を保証し、利用者の安全と権利を守るために必要な監督や指導を行うべき立場にあります。名前だけの責任者は、実際の業務を行っていないため、これらの重要な機能を果たすことができません。このように、行政の定める基準や法令を無視した運営は、違法であり、極めて悪質な違反とされるのです。

指定取り消しのリスク

 違法な「名前だけ」の配置が発覚した場合、事業所は指定取り消しという重大なリスクに直面します。これは、行政からの認可を失い、事業を継続できなくなることを意味しており、事業者にとっては致命的な打撃です。指定取り消しは、他の事業者や利用者に対する警鐘となり、業界全体の信頼を損なう結果を招きます。それは、単に一事業所が閉鎖に追い込まれるだけでなく、業界全体のイメージを汚すことに繋がるのです。

持続可能性の欠如

 実際、「名前だけ」のサービス管理責任者を配置している事業者は存在することが予測されます。また、根拠書類まで偽造することで、実態が行政に明らかにならず、事業継続が実現できている可能性があります。しかし、「名前だけ」のサービス管理責任者を置く事業体質は、その根底に行政を欺こうとする姿勢があります。こうした運営体質は、長期的に見て事業の持続可能性を著しく損ないます。信頼を土台としない事業は、質の高い人材の確保や利用者の満足度の維持といった面で困難に直面するでしょう。そして最終的には、不正は明るみに出るものであり、その時事業者は社会的な信用を失うことになるのです。

なぜサービス管理責任者の「名前だけ」を選択するのか?

 現在の制度上、サービス管理責任者が事業に及ぼす影響が大きいなか、配置できるための要件を満たすまでに長い年月(実務経験を加えると7~10年必要となる可能性がある)を要します。加えて、万が一未配置となる場合、複数の「減算」が適用になることから、実質的に事業運営が難しくなってしまうことがあります。障害福祉サービス事業は、事業構造上そこまで高い利益率の事業ではありません。その中で、減算措置という実態は、事実上の「閉鎖」です。事業者としては、従業員や利用者に迷惑をかけたくないと思うあまり、不正を選択してしまうと考えられます。

サービス管理責任者の「名前だけ」を防ぐにはどうすれば良いのか?

 対策は、以下の3点が考えられます。

  • 役員がサービス管理責任者になる、または、サービス管理責任者の役員化
  • 実務要件を満たしている支援員の内製化
  • 多店舗展開

 それぞれの詳細を確認してみます。

役員がサービス管理責任者になる、または、サービス管理責任者の役員化

 サービス管理責任者の存在は、経営上極めて重要な存在です。にもかかわらず、無責任な退職を選択するサービス管理責任者が存在することも事実です。しかし、「退職」は労働者に認められる権利であり、事業者が制限できるものではありません。そこで、会社法上の責任を伴う役員がサービス管理責任者の資格を取得すること、または、サービス管理責任者との協議のもと会社役員となり一体となって事業成長を目指すという方法があります。これには、時間と労力が必要となるものの、計画を定めて実施することが要求されます。

実務要件を満たしている支援員の内製化

 サービス管理責任者が急遽退職(怪我や病気などの理由で)する可能性もあります。この場合、みなしでのサービス管理責任者配置が認められる可能性があります。みなし配置を実現するためには、諸条件を満たす必要がありますが、その1つに「実務要件をクリアしている支援員が、サービス管理責任者の退職前からすでに配置されている」という条件があります。事業所内の支援品質を向上させる観点で、「福祉の経験者」を職員として採用することは重要であるかと考えられますが、その基準として「サービス管理責任者の経験要件を満たす経験者」とするのが、合理的と考えられます。

多店舗展開

 事業所を他店舗化することにより、1事業所あたり複数人のサービス管理責任者が業務に関与できる方法も対策になります。もし事業所数が1箇所のみの場合、複数人のサービス管理責任者を配置するとコスト負担が大きくなるため、収支を圧迫する可能性があります。多店舗化を実現できれば、例えば各1名ずつのサービス管理責任者以外に、統括のサービス管理責任者を確保するような組織図が実現できます。

まとめ

かねやん
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サービス管理責任者を「名前だけ」で配置することは、違法であるだけでなく、事業所にとって計り知れないリスクを孕んでいます。事業の継続性、社会的信用、そして最も大切な利用者の安全と権利を守るためにも、正しい管理体制を構築することが求められています。行政を欺くような短期的な利益を追求するのではなく、法令を遵守し、倫理的な経営を心がけることが、事業者としての責任であり、持続可能な成功への道であると言えるでしょう。