【就労支援事業所の成功に必須】アセスメント技法(面接法)について

勉強会(支援者向けコンテンツ)

 就労支援事業は、民間企業の参入が認められるようになり、事業所数が急激に増加しました。

(就労支援施設について記載している「マクロ環境」もご参照ください)

 民間企業ならではの、知恵や工夫がなされ、障がい者の一般就職を支援する目的の下、専門領域の多様性が生まれました。

 新たに就労支援事業を始めるには「人員基準」というものがあり、各事業所の規模に応じてスタッフを一定人数以上配置する必要があります。

 就労支援事業では、細かい要件はあるものの、配置する人員スタッフにおいては「管理者」「サービス管理責任者」以外、特に資格要件というものがありません。

 結果的に、初めて障がい者と関わるというスタッフも配置されることになります。

 障がいは、過去の経験則だけで語れるものではありません。障がいの病理学を学び、治療法を学び、エビデンスを学び、実際に個人をアセスメントし、最新の知見で支援を行わないことには結果は出ません。

 中でも、医療福祉の業界ではアセスメントは要だと思っています。(過去記事、「アセスメントでは定量的評価を!」もご参照ください)

就労支援で活かせる!アセスメントの種類

 アセスメントには、その測定方法に応じて以下のような3種類に別れます。

  1. 直接面接によるアセスメント=面接法
  2. 観察によるアセスメント=観察法
  3. 検査指標によるアセスメント=検査法

 それぞれ、得られる情報や考え方に特徴がありますが、今回は「面接法」について記載したいと思います。

就労支援で活かせる!面接法によるアセスメント

面接法のメリット

  • 質問に対して、必要なレベルまで「深堀り」できる
  • 「質問-回答」だけでなく、その際の表情や仕草、回答に要した時間等を確認することができる
  • 最短でラポール(心からの信頼関係)を築くことに繋がる

面接法の種類

面接の進め方については、その構造を含めて以下の3種類に分けることができます。

構造化面接

 事前に面接官が準備したとおりに面接を進める方法。
 定型的な方法のため、質問の回答に要した時間や、回答内容は、定期的な実施により変化することがあります。

半構造化面接

 構造化面接を実施する中、面接官が適宜質問を追加・変更しながら進めていく面接手法です。面接を受けるクライアント(利用者)が回答に困ることや、回答することに抵抗がある場合など、構造を変えることでストレストリガー(ストレスを感じるきっかけ)を回避することができます。ラポールの形成にもつながる考え方です。

非構造化面接

 クライアント(利用者)が自由に話してもらいながら進める方法です。まだまだ、情報量が少なく、クライアント(利用者)に対する仮説設定が進んでいない場合には、非構造化面接を選択する場合があります。当然、クライアント(利用者)主導なので、会話の一貫性や、テーマから逸脱するケースがありますが、その様な工程も全て情報とする必要があります。

就労支援で活かせる!面接法によるアセスメント時のテクニックについて

 面接時には、導入、フォロー、探索質問、明確質問、直接質問、間接質問、構造化、沈黙、解釈質問などの手法があります。それぞれの役割を解説します。

面接法アセスメントの「導入」とは

 面接の冒頭のため、大変重要なポイントと考えます。理由としては、心理学では「初頭効果(またはプライミング効果)」といって、最初の印象は、その後に影響を及ぼすと考えられているからです。

 導入部分で「緊張をほぐす」と考える人もいらっしゃいますが、初頭効果の影響がどのように作用するかはわからないので、あまり多くは語ら無いほうが良いと考えます。

 「~について教えて下さい」などのように、シンプル、かつ、目的や聞きたい情報を明確にしてスタートすることが良いと考えます。

面接法アセスメントの「フォロー」とは

 相手の発言に対して、「なるほど」と言ったり、うなずいたりと、しっかりと聞きの姿勢であるということを伝えるテクニックです。リアクションがない場合、相手は「話す」ということに対して不安感を感じる可能性があるため、フォローのテクニックは重要です。

面接法アセスメントの「探索質問」とは

 曖昧な情報などについて、「少しだけ具体的に教えて下さい」というように、情報を聞き出すテクニックです。曖昧なまま話を進めてしまうと、仮説を検証することができず、明確な支援計画の作成に影響が出てしまいます。

面接法アセスメントの「明確質問」とは

 決定的根拠につなげるための質問です。例えば、「その時に何を感じましたか?」や「なぜ、その行動をやめたのですか?」のように、探索質問の結果、確信を着きたい場合に使用する方法です。

面接法アセスメントの「直接質問」とは

 とある話題について、「したことはありますか?」のように、直接確認することをいいます。

面接法アセスメントの「間接質問」とは

 直接質問ではなく、「したことのある人の話は、聞いたことがありますか?」のように、他者の事柄を確認し、クライアント(利用者)本人の考えを把握していく方法です。

面接法アセスメントの「構造化」とは

 面接中に、全体構造を変えるような発言を通じて、リズムを作るテクニックです。例えば、間接法による質問の後、「では、あなた自身は行ったことはありますか?」という質問や、話が本来の話題から脱線した場合に、「では、一旦質問に戻しますが」というように、面接構造を変えるような目的があります。

面接法アセスメントの「沈黙」とは

 クライアント(利用者)の思考を尊重する時間です。面接官は、余分な情報を加えず、内省を促したり、回答を考える時間を与えたりする場合に使用します。

面接法アセスメントの「解釈質問」とは

 クライアント(利用者)と共通認識が必要な場合や、探索質問により得られた情報の解釈などを共有する際に使用します。「それは○○ということで良いですよね?」や、「それを例えるならば、○○ということでしょうか」というような質問となります。

さいごに

 アセスメント方法の一つである、面接法はクライアント(利用者)と同じ空間にいることになるため、得られる情報は多岐に渡ります。事前に明確なコンセプトを定めていないと、面接ではなく雑談となってしまいます。

 また、直接の空間に入るということはパーソナルスペースという考えもあり、クライアント(利用者)に一定の緊張感を与えるアセスメントでもあります。

 面接となるスタッフが複数いる就労支援事業所では、空間への配慮や声のトーン、時間、服装、BGMの有無など、「面接マニュアル」を定めることで、どのスタッフが面接を実施した場合にも、環境要因が変化しないような工夫を施す必要があるでしょう。

 利用者を正しくアセスメントして、結果の出る事業所にするための考えです。是非、現場にご活用いただければ幸いです。

 面接について参考になる書籍もまとめて見ましたので、興味のある方は以下もご参照ください。

 最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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