【開業資金準備】就労支援事業の開業でイニシャルコストは700万必要です

就労支援事業所開設マニュアル

【開業資金準備】就労支援事業の開業でイニシャルコストは700万必要です

 こんにちわ!就労支援事業運営.comの管理人です。国内で、就労支援事業所の開業・運営支援を行っています。

 就労支援に限らず、事業を行うのであれば資金が必要です。ご自身で開業するのであれば、事業が軌道に乗るまでに必要となる初期費用や運転資金を確保する必要があります。今回は就労支援事業を運営する場合に必要となる資金の内、イニシャルコスト(初期費用)について考えたいと思います。

※過去の経験に基づく見解です。必要資金を保証するものであありません。予めご了承ください。

就労支援事業を開業する際に必要な資金額

 就労支援事業所を開業するためには1,300~2,000万円の確保が必要となります。

 必要な資金は、開業までのイニシャルコスト(初期費用)と、開業後黒字化するまでに必要となるランニングコスト(運転費用)の合計になります。金額に幅があるのは、実際に運営する地域によるところが大きいです。都心であれば、物件取得費用と人件費が高くなり、地方に比べて必要資金額が多くなります。

 では例として就労支援事業所を開業する場合にイニシャルコストはどのような内訳になるのか見てみましょう。

イニシャルコスト(初期費用)の金額と内訳

 合計で400~700万円必要になります。

 内容は、以下の通りです。

  1. 法人設立関係費用
  2. 物件取得費用
  3. 内装費用
  4. 広告宣伝費
  5. 教材・資材
  6. PC関連
  7. 備品
  8. その他諸経費

 各項目の詳細を見てみましょう。

法人設立関係費用

予算:20万

 新たに法人を立ち上げる場合には、法人登記費用が発生します。検討している法人格によって費用が変わります。法人格は、一般的に合同会社や株式会社、公益性を重視する場合には一般社団法人やNPO法人となります。

 法人登記代行は様々な士業事務所がサービスを提供しており、価格競争になっています。ホームページ等で確認いただければ、費用を比較検討できます。

[捕捉]

 就労支援事業を運営するにあたっては、特に法人格の定めはありません。ただし、定款の事業内容に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」と記載が必要です。加えて、就労継続支援A型事業所を開業する場合には、「もっぱら社会福祉事業を行うものでなければならない」と規定があるため、当該事業目的の他に社会福祉事業に該当しない事業目的が記載されている場合には、登記変更を行う必要があります。

物件取得費用

予算:150~300万

 初期費用でポイントになる項目です。物件は地域や検討している場所によって費用が大きく変わっていきます。故に、イニシャルコストを節約する場合は、物件取得費用に着目すれば効率的です。

 就労支援事業所を開業するためには、約100㎡(一般的な定員20名規模)の物件が必要です。約30坪となるので、東京の一般的な坪単価15,000円とすれば、月45万の家賃となります。敷金・礼金を合計して4か月、仲介手数料が1か月、開業前に内装工事や備品の搬入が必要となるので開業の2か月前には物件を契約する必要があります。結果、賃料の7か月分(315万)のイニシャルコストが発生します。

 ただし物件を取得する場合には、オーナーとの契約段階で様々な交渉ポイントが発生します。加えて、地方で開業する場合には坪単価は大きく変わっていきます。交渉するポイントを把握することで節約できる費用であると考えられます。

内装費用

予算:50~100万円

 内装は、物件をきれいにするのではなく、指定要件を満たすために最低限必要なる場所を整備するイメージで考えていただければと思います。物件の設備要件については、過去記事をご参照ください。

参考:就労支援事業の設備基準

 会社の売上が確保できるまで、可能な限り現金の流出を防ぐ必要があります。最初から内装にこだわり過ぎてしまうと、大きな痛手になる可能性があるため、注意が必要です。

広告宣伝費

予算:20~40万

 主にホームページやリーフレット、パンフレットなどの販促資材になります。

 就労移行支援事業所を早期に黒字化するためには、障害者に認知してもらうことが第一ステップです。そのための広報戦略で必要となります。障害者が事業所の利用者となる過程で、かなりの確率でホームページを確認します。戦略的にホームページの運用方法を検討し、制作会社等に依頼すれば作成は完了します。パンフレットやリーフレットも準備が必要です。開業が決まった段階で、地域の支援機関等に挨拶する際、しっかりとパンフレットをお渡しすることで、認知のきっかけを提供する必要があります。もし開業メンバーにデザイン制作を得意としている方がいれば、最初の仕事として依頼してもいいかもしれません。

教材・資材

予算:10~15万

 就労移行支援事業所で提供する訓練で使用する教材です。これは自社のオリジナル教材だけに頼らない方法で進める場合に必要となります。開業初期から、自社のオリジナル教材で進める方法もありますが、なかなか1か月のスケジュールを埋められるほどのボリュームを確保するのは難しいです。そこで「個別学習時間」と定義し障害者の個別目標に向けて学習機会を提供する方法があります。その場合は外部教材を事業所内に完備することが必要です。内容は特に決まっていません。例えば、「日商簿記3級」の試験を受けるための教材、パソコンスキルの学習に使える教材、デザインを学べる教材など様々あります。事業所のコンセプトと親和性の高い教材を準備いただければと思います。

PC関連

予算:30~100万

 職員の日常業務や障害者が個別学習などを進める場合、PC関連設備は重要です。事業所が提供するプログラムによって、内容が変わります。主に以下のような備品が必要となります。

  • デスクトップPC
  • モニター
  • ノートPC
  • マウス
  • キーボード
  • オフィスソフト
  • デザイン関連ソフト
  • 複合機
  • 複合機のインク
  • 複合機の台
  • 無線LANルーター
  • 無線LANアダプター

など

 PCだけでなくソフト関連も重要です。また、高度なPCスキル(プログラミング、デザイン、動画編集など)を提供する場合には、パソコンのスペックをそれなりに確保する必要があります。最初から定員いっぱいまでフルに完備する必要はありませんが、PC周辺機器を確保するルートは定めておく必要があるかと思います。

備品

予算:20~50万

 就労支援事業を運営するにあたって必要となる細かい備品になります。例を出すときりがありません。概ね以下のようなものが想定されます。

  • 電話
  • 椅子
  • パーテーション
  • ホワイトボード
  • 書庫(鍵付き)
  • 傘立て
  • スリッパ・靴箱
  • ごみ箱
  • ごみ袋
  • シュレッター
  • ラミネーター
  • 防災関連備品
  • ペーパータオル
  • ファイル
  • 文房具

など

 実際に事業所を運営しないとイメージがわかないかもしれません。この場合は、予算に幅を持たせて見積もっていただき、日・週・月・年でスケジュールをイメージいただくことで、必要備品に具体性を持たせることができます。

 注意いただきたいのが、開業初期は「あれもこれも必要」となってしまい、出費がかさむということがよくあります。従業員からも購入したいという希望が出ることがありますが、経営者として備品購入の方針やルールを定めたうえで進めていく必要があります。

その他諸経費

 営業活動を開始すれば交通費が発生し、パンフレットをすべて配布すれば追加で印刷する必要が出ます。諸経費は多めに見積もって進めていく必要があります。

イニシャルコストを節約するポイント

開業サポートの支援を受ける

 開業の全体像を知ることで備品確保の優先順位を把握することができます。その手段として、開業サポートを行っている業者と連携する方法があります。開業実績のあるコンサルタントであれば、備品取得の全体像や優先度を把握しています。

 留意点として、コンサルタントに支払う費用も初期費用となることです。金額の差がありますが、開業から運営研修まで含めて100~300万の出費になります。コストを抑えたいのであれば、選定業者を見極める必要があります。

 就労支援事業運営.comは、イニシャルコストを抑えられるよう開業サポートを無料で賜っていますので、是非比較検討していただければと思います。

参考:就労支援事業運営.com開業サポートページ

イニシャルコストを投じる目的を整理する

 目的は、「許認可を得るための最低限の設備基準を満たすこと」にあります。間違っても「きれいな事業所を作る」ことではありません。

備品のクオリティにこだわらない

 品質にこだわればいくらでも費用がかかります。大きな資本力を武器に、スタートダッシュを決める戦略が打てるのであればいいと思います。ただし、ビジネスの基本はスモールスタートだと思います。品質にこだわりすぎず、優先課題を明確にしたうえで進めていく必要があります。

サブスクリプション等を活用し売上を確保するまで出費を抑える

 サブスクリプションなどの月額課金制のシステムをうまく使うことで、初期の出費を抑えることができます。つまり、購入するのではなくレンタルするイメージを持ちましょう。長い目で見れば、費用が高くつくかもしれません。しかし、1円でも資金ショートしたら破産するビジネスにおいて重要なのは資金繰りです。売上を確保するまでは、積極的に検討してみましょう。

確保する量を精査する

 事業所の定員は一般的に20人です。しかし、開業初期から20人の障害者が事業所に通所するわけではありません。例えば、パソコン関連備品やオフィスソフトを最初から20人分整備する必要はありません。必要量を見極めて、段階的な量の確保を行いましょう。

まとめ

 これから新規事業を進めていくため、イニシャルコストは必ず発生します。事業におけるキャッシュフローは一度赤字になり、どのくらい素早く回収できるかがポイントです。イニシャルコストの優先課題として、「指定申請を通過すること」にあります。設備基準を十分に理解したうえで、基準をクリアするポイントに資金を投じ、安定運営に必要となる備品は運営開始後に整備することを心掛けていただければと思います。

 次回はランニングコストについて記事にしたいと思います。これから開業するというオーナー様はくれぐれもお見逃しなく。

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