【取材】職業指導員とは?その役割を実際の経験者に聞いてみました

職業指導員
かねやん
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「取材シリーズ」では実際に障害福祉サービスに関わる皆様に、現場で働いた事がある人にしかわからない、リアルな情報を発信しています!

今田美緒(社会福祉士、介護福祉士、福祉環境コーディネーター)

 大学で福祉を学び、社会福祉士、介護福祉士として現場の最前線を約10年間経験。障害福祉サービスでは、就労移行支援事業所の職業指導員として実務に従事。現在は、ライターとして活動し、自身の経験を文章にすることで、福祉現場のリアル情報を必要とする方に情報を発信している。

かねやん
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就労移行支援事業所で職業指導員を経験し、現在はライターとしても活躍する、今田美緒様を取材しました。これまでの福祉経験から、就労支援事業所として考える必要がある職場環境について伺いたいと思います。

インタビュー内容

これまでのご活動を教えてください

実際に現場に触れたことをきっかけに、この業界で働こうと決意しました。

 大学で福祉を学び、在学中はボランティアサークルに所属し、在宅で暮らしている高齢者の孤立を防ぐサロンを開催していました。周りが福祉の仕事を選ばず一般企業への就職を決める中、大学4年時での児童養護施設での研修が自分の中で福祉を考え直すきっかけとなり、人と関わる仕事がしたいと福祉への道を決めました。卒業後は障害者福祉(入所施設、就労移行支援事業所)や、高齢者福祉(特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム)等の現場で10年ほど働いてきました。

 障害福祉サービス事業所では、就労移行支援事業所の職業指導員に従事していました。

就労支援事業所で働いたのは、どのようなきっかけでしたか?

国への請求業務はもちろん、日々の経費精算など、幅広く実施していました。

 障害者の入所施設で働いていた時に、「ご利用者がもっと社会に出て活躍する機会があってもよいのではないのか」と感じていたことがきっかけです。

 細かい手作業が得意な方、計算が得意な方、芸術的センスをお持ちの方等、様々な能力があるのにも関わらず、社会との関わりが薄いことがやるせない気持ちでいました。そんな中で地域のお祭りでご利用者が作成した作品を販売する機会があり、ご利用者が目を輝かせながら地域の方へ作品へのこだわりや作成方法を伝えているのを見て、普段と違う姿に驚いたと同時に、誇らしく感じたのを覚えています。この経験から、障害を持っていても、役割や環境が用意されていることで、社会に参加できる可能性があることを実感しました。

 その後引っ越しに伴い、新たな就職先を探していたところ、近所に就労移行支援事業所の求人を見つけ、迷わず応募しました。

今田様が務めていた「職業指導員」の仕事内容を教えてください

仕事は多岐に渡ります。事業所内でのメイン業務から就職支援まで、広く実施する必要があります。

 私が務めていた就労移行支援事業所での訓練は自家焙煎珈琲の移動販売、店舗販売、配達が主でした。豆の注文から始まり、ピッキング(不要な豆をはじく作業)、焙煎、PCでのメニュー表・看板作り、接客、車の運転、売り上げの集計等、実践的な訓練を提供できることが強みであったため、内容は様々です。細かな作業を集中して行ったり、お客様とコミュニケーションをとったり、イベントの企画をしたりするなかで、一人一人に向いている仕事、向いていない仕事をご本人と確認をしながら訓練を行っていました。

 その他社会人としてのマナーを身に付けるための講義や、履歴書の作成支援、面接への動向、就職先との打ち合わせ、就職後のアフターフォロー等、仕事内容は多岐にわたりました。

どのような経験やスキル、資格がある方が職業指導員に向いている人だと感じますか?

「仕事」と「人」の関わりを分析できるスキルは重要です!

 スキルとして、人と関わることが好きであることはもちろん、福祉の制度や法律、障害への理解が重要です。

 しかし、それ以上に仕事とご利用者の関わりを、しっかりと分析できる能力が大切です。「何が得意で何が不得意なのか」、「どんな伝え方をすれば理解してもらえるのか」、「どんな工夫をすれば作業効率があがるのか」など、一人ひとりのご利用に対する判断や分析が必要です。職業指導員として、これらの能力を持っている人が向いていると思います。

それらの経験やスキル、資格がある方が職業指導員に向いていると感じるのは、どのような理由ですか?

「職種問わず法令を理解している」という環境を整備することが大切だと思います。

 同じ訓練をするにしても職業指導員の伝え方や方法によって、ご利用者の達成度・満足度が大きく変わってくるためです。

 福祉の現場で長年勤めていると感じる、スタッフの傾向があります。それは、論理的に意見をまとめるといったことに慣れていない人が多いということです。これは、私自身も注意しています。この支援をする目的はなんなのか。なぜこの支援が必要なのか。いつまでにどれくらいできるようになれば、ご利用者を満足させられるのか。など、支援を論理的に組み立てる必要があります。

 論理思考は、一般企業等で働いている方のほうが訓練されているように感じています。福祉の経験や知識に限らず、一般企業で働いた経験のある方も活躍の場がたくさんあると思います。

職業指導員として日々の業務で意識していたことはどのようなことですか?

ご利用者に通所の目的を伝えることを意識していました。

 初めは「就労」への意欲を持っていたご利用者でも、毎日の訓練に慣れてくると意識が薄れてしまい、「訓練を行うこと」が目的となってしまうことが多いように感じていました。その為、目的は「就職する」ことだと伝えることを、常に意識していました。

 また、職業指導員として、適切な声かけにも意識していました。周りのご利用者と比較し出来ること・出来ないことに一喜一憂してしまう方も多いです。一人ひとりの個性が尊重される社会であり、大切な人材だということをいつもお話していました。

職業指導員としての業務では、どのようなことが大変でしたか?

ご利用者の意欲を維持することが難しかったです。

 訓練の途中で諦めて投げ出してしまったり、さらには朝起きれずに事業所に来ることが困難なご利用者の対応に悩むことがありました。誰にでも言えることですが、意欲を安定させることは難しいです。ご利用者が意欲的に就労支援事業所の訓練に取り組んでいただける方法を、日々模索していました

職業指導員の大変な業務は、どのようにして脱却しましたか?他の職種との連携したエピソードなどがあれば教えて下さい。

職員間で連携し、お互いの役割や専門性を活かすことが大切です

 先ずは、利用者が安心して訓練を受けることができる環境を作る必要があります。就労支援事業所の生活支援員やサービス管理責任者と連携し、生活リズムを整える練習や相談できる環境を整備することで、ご利用者が安心して訓練に打ち込むことが出来るようになります。

 特に会話ができる環境は大切です。会話を重ねていく中で、就労支援の枠組みを超えて、新たな課題や希望を見出すことが出来、自分の力で就職を掴んだご利用者もいらっしゃいました。

今田様の視点で、「こういう職場で働きたい!」と考える理想の職場はどのようなものですか?

職員間で情報を共有できる環境ができている職場で働きたいです。

 就労支援事業所の職員として理想の職場は、ご利用者の支援について悩んだときに、すぐに周りに相談できる職場です。自分一人だけの視点だけではなく、様々な職員からの視点でご利用者と関わることで、新たな支援方法を見出すことが出来るからです。また、仕事に一生懸命になればなるほど、壁にぶち当たったり悩みを抱えたりすることもあります。一人で考え込むことなく、自分自身が安心して働けることは、仕事を続けていくうえで大変重要なことだと考えます。

これから就労支援事業所で働きたい!と考える方に、アドバイスをお願いします!

障害福祉サービス事業所業界に、新たな風を吹かせてください!

 就労支援事業所では、「就労」という明確な目標が定められています。その為、結果の有無が明確であり、厳しさを感じることもあります。その反面、やりがいや喜びを大きく感じられる仕事でもあると思います。コツコツと目標に向かって考え続けられる方にとっては、大変面白い仕事です。ご利用者と深く関わることで、ご利用者とともに自分自身も成長出来る魅力のある仕事ですので、是非チャレンジしていただけたらと思います。

かねやん
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障害福祉サービスの経験だけでなく、ライターとしても活躍する今田様に取材しました。職業指導員として、現場での悩みや解決策について伺いました。就労支援事業所の経営者様は、以下に職員を孤立させない環境を作るか、考えていく必要があります。今後の事業所作りの参考にしていただければ幸いです。

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