【研修】就労支援事業所で使える知識「精神障害の診断分類」について

基本スキル

【研修】就労支援事業所で使える知識「精神障害の診断分類」について

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

 今回は「精神障害の診断分類」について学びたいと思います。皆さんはDSM-5という基準をご存知でしょうか?アメリカ精神医学会が発表している世界的な精神疾患の診断基準です。正式名称は「精神疾患の診断・統計マニュアル」といいます。しばしば、精神障害者を支援するために調べ物とを行うと、DSM-5に関する記述や情報が現れることがあります。「あー世界的な基準ねー」で終わらないよう、より具体的に対象者をイメージするために知識を付けて行きましょう。

なぜ分類が必要なのか?

 各精神障害に対する有効な治療方法や介入方法を世界中の医療・福祉関係者が研究しています。有効な治療方法が見つかれば、障害者の社会復帰がスムーズに実行されたり、再発を予防できたり、より豊かな生活を送っていただくことに繋がります。私達、福祉に関わる人材も、福祉業界の発展に寄与するために、正しい判断軸をもって適切に情報発信することが大切です。

 より精度の高い研究を進めていくのであれば、前提条件を統一する必要があります。例えば、うつ病の障害者に対して有効な支援方法を検討している中で、うつ病の障害者AとBのそれぞれの主治医が、全く異なる視点でうつ病と診断していては、良いとされている支援方法の確度がばらついてしまいます。

 「明確な基準・分類」があることで、障害者に対する今現在の最善策の検討に加えて、将来の業界発展などにも良い効果が期待できます。

どのようにしてDSM-5は活用されるのか?

 本来、障害を正確に診断するためには、血液検査や画像検査を行います。しかし、これらの検査では精神障害を正確に診断することはできません。主治医は、患者から得られる情報を広く網羅して収集することで、精神障害の診断を行います。DSM-5には、網羅する情報が抜け漏れが生じないよう、最低限必要な情報として定義されています。

 当然、主治医もDSM-5の基準だけに注意しているわけではありません。他の障害との区別を正確に行うために、DSM-5には含まれていない情報にも注意して、診断を進めていきます。

DSM-5の多軸分類

 DSM-「5」という名前からも分かるように、「5つの判断軸」に従って、クライアントの情報を探り、分類します。5つの軸とは、「精神障害」「パーソナリティ障害と知的障害」「一般身体疾患」「社会心的問題やストレス」「機能の全体的評価」になります。それぞれ簡単に見ていきましょう。

精神障害

 面接や質問紙を活用していアセスメントを行います。

パーソナリティ障害と知的障害

 パーソナリティ障害と知的障害に関してアセスメントを行います。

一般身体疾患

 精神障害に影響すると考えられている一般的な身体疾患の有無、程度についてアセスメントします。

社会心的問題やストレス

 家族関係、行動の特性、社会での生活、ストレス状況についてアセスメントを行います。

機能の全体的評価

 一定期間の社会との適応状態についてアセスメントを行います。

 これら5つの軸から患者をアセスメントし、診断します。

就労支援事業所でどのように活用するのか

 知識として留めておくまでにしましょう。当然ながら、私達がDSM-5を活用して、障害者を診断することはありません。主治医がどのような視点で患者を評価し診断するのかを知ることで、何気ない主治医とのコミュニケーション場面でより具体的な意見交換を行うことができます。

 例えば、軸の5つである「社会心理問題」では、家族との関係や行動の特性評価を行います。この情報を、障害者から全て聞き取ることはできません。主治医は、限られた時間の中で家族や関係者からの情報を収集し、診断を行うことが求められます。この事実を知っていれば、主治医よりも長い時間を共に過ごすことができる就労支援事業所として、家族からの情報を収集し、主治医と共有するような支援を行うことができます。

留意点

 DSM-5の活用方法には、「熟練した臨床家による診断」と記載されているため、事業所の職員が安易に活用するものではありません。普段の障害者支援に際して、様々な媒体から情報を収集する際に、よく「DSM-5」という言葉が出てくることを受け、その位置づけや役割を把握するまでに留めておきましょう。

まとめ

 DSM-5について知識をつけると、主治医は限られた時間内で広く情報を収集する必要性があることが分かります。日々、沢山の患者を診療する医師にとっては、広く情報収集することは、極めて難易度の高い業務では無いでしょうか。仮に、診断が確定したとしても、日々変化する情報のなかで、診断が変わることや、所見が変化することもあります。就労支援事業所は、主治医よりも長く障害者と関わることができます。定期的に障害者に生じている変化を捉え、事業所主体で(もちろん障害者の許可は必要)収集した情報を主治医にフィードバックする取り組みが大切です。是非普段の支援で意識していただければと思います。

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