【研修】精神科デイケアと就労支援との効果的な連携方法を考える

地域連携

【研修】精神科デイケアと就労支援との効果的な連携方法を考える

 こんにちは!就労支援事業運営.com、管理人のまつやん(@kanematsu_redef)です。国内で、就労支援事業所の開業・経営支援を行っています。近年、障害者総合支援法の制度変更の傾向により、職員の資質向上や事業所としての福祉貢献度が事業所評価に直結するようになりました。「研修」シリーズでは、障害者と接する支援者が知っておく必要がある障害者に関する知識を発信していきます。

この記事は誰に向けて書いている?

  • 精神科デイケアについてよくわからないという方
  • 精神科デイケアからも障害者の紹介を得たいという方

 今回は精神科デイケアと就労支援との効果的な連携方法について考えていきたいと思います。地域の福祉資源である就労支援事業所は、他の障害者支援機関と連携し、本人のステップアップを支援する必要があります。まずは精神科のデイケアの役割を把握することで、就労支援事業所との効果的に連携する手段がないか確認していきましょう。

精神科デイケアとは

 精神科デイケアとは、精神障害のある方が日中活動を通じて社会的能力の改善を図る施設です。主治医が必要であると判断した場合に、医療保険を適用して活用することができます。

 精神科デイケアで働いているのは、医師、保健師(看護師)、作業療法士、公認心理師、精神保健福祉士などです。医療系国家資格者が勤務していることが精神科デイケアの強みであると言えます。

 施設内で実施することは、精神障害者に特化した社会復帰プログラムや職場復帰プログラムです。主に以下のニーズがある障害者を対象としています。

  • 生活リズムを安定させたい
  • 対人関係に慣れていきたい
  • 復職、就職を目指し日中活動に慣れていきたい
  • 体調を安定させるための方法を学びたい
  • 自分の体調変化を自己分析したい

精神科のデイケアでは何を行うのか

 社会経験に特化した活動を中心に実施します。特に「運動」や「創作活動」、「調理」、「グループディスカッション」、「スキル習得訓練」などを中心に実施します。提供プログラムの内容は、デイケアによって特徴があります。

 日中活動支援と同時並行に実施されるのが、体調の自己分析です。自身の「注意サイン」を学び、適切に対処する方法を考察します。この自己分析では、注意サインを分析するだけでなく、注意サインに適切な対応ができなかった場合に生じる危険な精神状態(クライシス)に対する対応などを学びます。精神障害者にとって極めて重要な知識であると考えられます。

就労支援事業所との関わり方

 就労継続支援と就労移行支援事業所で関わり方が変わります。

就労継続支援との関わり方

 精神科デイケアは、日常生活能力に特化しています。生産活動を主目的として支援しているわけではないので、通所する障害者には「収入」がありません。しかし、障害者の中には、いずれ仕事を行いたいというニーズを持った方もいます。ニーズの解消には、段階的に生産活動に参加する必要性があります。

 段階的な生産活動への参加を支援するため、精神科のデイケアと就労継続支援の両方を活用する事例があります。最初は、週に1日だけ就労継続支援に通所し、残りの期間は精神科デイケアを利用する状態です。体調の変化を確認しながら、段階的に就労継続への通所量を増やしていくような方法です。

就労移行支援との関わり方

 精神科デイケアで実施するリワークプログラムは、職場復帰を目標としているため、就労移行支援事業所と役割が似ています。特に、精神科デイケアの中にはPC訓練やビジネスマナー講座を実施している所もあり、地域の就労移行支援事業所と、役割がかなり類似します。しかし、精神科デイケアが医療的な専門知見をもったサービスを提供することに対して、就労移行支援ではよりビジネススキルに特化した支援を提供することができます。障害者本人のニーズによっては、一般的なカリキュラムだけでなく、専門的なカリキュラムを学ぶこともできます。

 精神科デイケアは、「障害者の体調を安定させること」が第一目的であるため、「一般就職後の定着」が主目的である就労移行支援事業所と比較すると、その役割と提供できる支援が多少異なります。障害者によっては、精神科デイケアよりも就労移行支援事業所の方がニーズが合致する可能性があります。

 まずは、就労移行支援事業所として、提供できるサービスや強みを打ち出し、精神科デイケアを運営する医療機関の地域連携室と意見交換することが大切です。事業所が提供する支援の強みが、地域連携室として抱える課題の解決に役立つか、対話の中でその可能性を確認してみましょう。例えば、事業所がWebデザイン・プログラミングなどPCスキルに特化した支援を提供している場合。精神科デイケアに通う障害者の中で、高度なPCスキルを習得したいニーズがある障害者がいれば、精神科デイケアでの体調安定後、就労移行支援事業所に紹介いただける可能性があります。

 精神科デイケアと就労移行支援事業所の違いをまとめると、以下のようになります。

内容精神科デイケア就労移行支援事業所
法律医療保健制度障害者総合支援法
利用可否の判断主治医の判断市区町村の判断
職員医師 保健師(看護師) 作業療法士 公認心理師など 国家資格者サービス管理責任者
経営者
ビジネス経験者
企業でのキャリアを持ったもの
利用期限定めは無いが、独自に期限を設けている施設もある。基本的には2年間の期限。
特徴病気や体調について、医学的な知見に基づいたサポートを提供する 主治医の指示に基づいてサービスを提供一般企業への実践的な就労支援を提供 企業実習などを通じて企業のトライアルが可能

まとめ

 精神科デイケアと就労支援事業所との連携体制について考えてみました。両者はお互いの専門性が異なる中、障害者の体調安定や復職支援という類似したコンセプトがあります。専門性が異なれば、連携することで障害者の多様なニーズを解決できる可能性があります。地域の医療福祉連携体制の構築を目指して、自社の就労支援事業所の近隣にあるデイケアには積極的にコミュニケーションを取っていただければと思います。

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