【取材】サービス管理責任者は何が大変?|経験者に聞いてみました!

サービス管理責任者
かねやん
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「取材シリーズ」では実際に障害福祉サービスに関わる皆様に、現場で働いた事がある人にしかわからない、リアルな情報を発信しています!

蓮沼 杏花(サービス管理責任者・公認心理師)

 国立大学を卒業後、特別支援学校の教諭を経験。より地域福祉の最前線で活動したいと考え、就労継続支援B型事業所で実務を実施。様々な現場環境を知る中、良い福祉施設とは何か?常に考えるようになった。

かねやん
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大学で心理学を専攻し、福祉の現場を経験した蓮沼様にインタビューしました。常にエビデンスを意識されており、現場の課題など、大変分かりやすい内容となっています。是非ご確認ください。

インタビュー内容

これまでどのような活動を行っていましたか?

教育機関から障害福祉サービス事業所まで、幅広く経験しています。

 大学を卒業した後、特別支援学校の教員として7年間勤務しました。知的障がいのある高等部生徒を対象に、学習指導及び生徒指導を行うなかで、仕事をしていくうえで必要な作業能力やビジネスマナー、コミュニケーション能力の向上を目指しました。
 教員を退職した後は、就労継続支援B型事業所を2社経験しました。2社目の事業所では、新規開設に向けて、見学・体験会の企画推進や作業の題材の設定など、開設準備にも携わらせていただきました。また、2社目の事業所に在籍しているとき、サービス管理責任者の講習を修了しました。

なぜ「就労継続支援B型事業所で働こう!」と考えたのでしょうか?

多様なニーズで溢れている就労継続支援B型事業所はとても魅力的な場所でした。

 障がいや疾病のある方の「働く」を支援するという点で、特別支援学校の教員として勤務していたときの知識や経験を生かすことができると考え、就労支援事業所で働きたいと考えるようになりました。
 また、面接のときにサービス管理責任者の方から説明を受け、B型事業所のご利用者様はさまざまな目的を持って通所されており、生産活動を目的に通所している方だけではなく、職員に悩みや不安を相談するために通所している方もいることを知りました。私は、公認心理師の資格を持っているので、カウンセリングマインドやアセスメント能力を生かし、ご利用者様の不安や悩みに寄り添いながら支援を行いたいと考えるようになりました。

実際に就労継続支援B型事業所で働いてみて、どのように感じましたか?

ご利用者様のステップアップを、どのような道筋で実現できるかが大切と感じました。

 作業の題材の設定や声かけの工夫により、ご利用者様の働く意欲や自己肯定感の向上を図ることのできる、やりがいのある仕事だと感じました。たとえば、「他者に認められる経験を通して、働く意欲を高めて欲しい」という思いから、事業所の前に自動販売機を設置し、ご利用者様が作成した手芸製品を販売しました。自分が製作した商品が売れて、お客様に喜ばれる経験を積むことで、ご利用者様が「もっとたくさん作ろう」、「お客様に喜んでもらえるように心を込めて作ろう」と作業への意欲を見せていたことが印象的でした。

サービス管理責任者の資格を取得されたのは、なぜですか?

サービス管理責任者の基本となる支援の考え方が、とても魅力だったからです。

 教員としての経験はありましたが、障がい福祉の経験は浅いので、もっと学びを深めて、事業所に貢献したいと考え、資格を取得しました。特に、サービス管理責任者は、パーソン・センタードケアの考えを基本にしながら、支援者の「思い」をつなぎ、関係機関と協働して支援を行う大切な役割を担っているので、連携の在り方について学びたいと考えました。

サービス管理責任者のお仕事はやってみてどのように感じましたか?

やりがいを強く感じます。法律に則って業務するため、日々の書類をどのように整備するかが重要であると感じています。

 ご利用者様と面談を重ねて個別支援計画書を作成し、関係機関と連携しながら、チームで包括的な支援を行うことで、ご本人の目標が達成されたとき、やりがいを感じました。
 また、ご利用者様と関わる業務だけではなく、書類の作成業務も多いため、できるだけご利用者様との時間を取れるよう、経験のあるスタッフに教えてもらいながら、効率よく事務業務を進めていく必要があると感じました。

サービス管理責任者の業務で「大変」「つらい」と感じるのは、どのようなときですか?

ご利用者様に支援を提供する前に、スタッフ間で「目的」「意図」「方法」を共有することに時間がかかります。

 日々の記録や翌日の作業の準備等の業務に追われて、行事の企画や新しい作業種の考案、作業環境の充実改善を図ることが難しいときです。特に、ご利用者様の中には、これまでの失敗経験の多さから、自分に自信の持てない方も在籍していたので、作業を通して「できた」という成功体験を積むことで、自信を持ち、「働くことが楽しい」という思いを持って、主体的に仕事に取り組むことができるように支援したいと考えていましたが、支援の目的や方法、意図をスタッフ間で共有して、支援を進めていくまでに時間がかかることが多かったです。

そのような「大変」「つらい」という状況は、どのように脱却しましたか?

日々、支援内容を振り返る時間を確保することが、極めて重要であると感じています。

毎日のミーティングの中で支援の振り返りを行い、スタッフ同士がお互いの支援観を理解し、尊重することで、相互理解を深め、支援の充実につなげることができるようになったと感じました。

蓮沼様が考える「良い就労支援事業所」と「努力が必要な就労支援事業所」の違いを教えてください

柔軟な視点でご利用者様と関わる事ができる事業所が、良い事業所であると感じています。

 日頃、ついご利用者様の課題や病状の影響など、マイナスな意見交換が中心になってしまうことがあります。ご利用者様の課題だけではなく、良い所やできるようになったことに着目し、プラスのフィードバックを行うことで、ご利用者様が自信を持って主体的に作業に取り組んでいる事業所は明るく、前向きな雰囲気を感じる良い事業所だと思います。

 スタッフも同様に、自分の強みやスキルを把握し、お互いに支援に生かし合うことで、事業所として最大のパフォーマンスを発揮することが大切だと考えます。

今までのご経験から「一緒に仕事したい!」と思う経営者はどのような人ですか?

現場の課題を知るだけでなく、「適切な事業所運営」も意識している経営者と一緒に仕事をしたいです!

 ご利用者様への支援は、正解がないので、スタッフは日々考え、時に悩むこともあると思います。経営者の方にも、一緒にご利用者様の支援について考え、悩んでいただけたら、心強く感じます。一般的に、業界を経験していない経営者は、法令を遵守するための業務を、サービス管理責任者や管理者に任せきりなことがあります。任された側からすると、とても不安で、気の張る仕事です。経営者の方にも定期的に書類の確認をしていただき、適切に事業所を運営していけたらとてもありがたく感じます。

これから「サービス管理責任者になりたい!」と考える方にアドバイスをお願いします!

一人で抱えず、周りと協力する姿勢を常に意識することが大切です。

 サービス管理責任者の仕事は、ご利用者様の自己決定を促しながら、一緒に目標を立てて、目標を達成するための支援を行うことで、ご利用者様が少しずつ前に進んでいく姿を近くで見ることができる、やりがいのある仕事です。ご利用者様の中には、一度、課題が改善したと思っても、行きつ戻りつを繰り返すこともあります。悩みが尽きない仕事ではありますが、サービス管理責任者が一人で抱え込まず、周りのスタッフと協力し、事業所全体で温かく、長い目で見守っていくことが大切だと思います。

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