【取材】サービス管理責任者に聞いてみた!|金融を経験した結果、今後の産業は「福祉」に決まりました

サービス管理責任者
かねやん
かねやん

「取材シリーズ」では実際に障害福祉サービスに関わる皆様に、現場で働いた事がある人にしかわからない、リアルな情報を発信しています!

渡邊知行(サービス管理責任者・コンサルタント・博士・社会福祉士)

新卒で金融機関に入社し実務を経験。様々な経験から、日本の将来を設計するのは「福祉」であると強く確信し、転職。社会福祉法人の設立や障害福祉の現場実務に携わる。現在は、障害者支援と社会福祉経営の専門家としてコンサルティングや執筆・監修等の活動を行っている。

かねやん
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以前は金融機関に所属した経歴を持ち、その後社会福祉法人にて経営、財務、現場のすべてを経験している渡邊知行様を取材させていただきました。サービス管理責任者の仕事について、ご自身の体験談をお話いただいております。

インタビュー内容

福祉の現場を志したのはなぜですか?

金融機関の経験から、今後、日本で重要となる産業は「福祉」であると確信したからです。

 新卒で金融機関に就職して30歳までサラリーマンをしていました。法人担当の外回り業務をする中、大手金融の名刺のおかげで新人でも中小企業の重役に時間を頂ける機会がありました。社長から自身の会社のこと、そして昭和時代の経済成長などたくさん興味深い話を聞くことができました。そのような経験と平成当時の社会情勢を踏まえ、これからの日本社会に必要とされるものはなにか?その答えが「福祉」でした。

どのような現場でサービス管理責任者として仕事をしていましたか?

障害者グループホームのスタートアップ企業でした

 30歳の時に脱サラして福祉事業を起業するプロジェクトの役員としてお手伝いすることになりました。プロジェクトは無事に成功して障害者グループホームを開設することができました。そして、創業間もない中小企業につき、人材不足を補うために私自身が現場実践にも携わることになりました。障害者支援のノウハウなど何も無い現場でした。当時の私自身、社会福祉士を取得していましたが現場実践の経験がなかったため苦労しました。

サービス管理責任者になろうと思ったのはなぜですか?

責任を持って利用者と向き合いたいと思ったからです

 現場で生じる様々な課題と向き合いながら同僚の支援者と試行錯誤を繰り返えす日々が続きました。個人としては、専門性を高めるために自己研鑽や研究を重ねていきました。そして毎日一生懸命に仕事をして、ある程度の実務経験を経たところで従来の不安が自信に変化していることに気づきました。その時に支援者でありながら個別支援計画を作成する側にもなりたいと思い、サービス管理責任者になろうと思いました。

サービス管理責任者の仕事は、実際にやってみてどうでしたか?

「個別支援計画書」の作成を通じて利用者の個別性を強く実感しました

 当然ながら障害福祉サービスの利用者は十人十色であり抱える障害特性も様々です。多様性ある利用者に対して個別支援計画を作成していく中で、最も難しいことは「利用者にとって良い支援とは」何か踏まえた上で、具体的な支援方針を決定することでした。支援者が良いと思う支援(客観的支援)と利用者が望む支援(主観的支援)が異なることがよくあります。利用者のために一生懸命やっている支援が利用者にとってストレスになってしまうこともありました。

サービス管理責任者として「楽しい」「やってよかった」と感じるのはどういうときですか?

利用者との意思疎通から一体感が生まれたとき、この上ないやりがいを感じます

利用者の生活に充実がみられ、利用者自身が生き生きとしている様子が見受けられたときに「やってよかった」と感じます。支援者が良いと思う支援(客観的支援)と利用者が望む支援(主観的支援)の方針が一致した個別支援計画を作成できる時に楽しいと感じます。

サービス管理責任者として「大変」「つらい」と感じるのはどういうときですか?

利用者の希望と支援者の提案で生じるジレンマに悩みます

 支援者が良いと思う支援(客観的支援)と利用者が望む支援(主観的支援)が異なり、ジレンマとなる時に大変さを感じます。障害福祉の基本として「本人主体」と教科書で学習しますが、何もかも利用者が望むままに支援を行うことはあり得ません。利用者には自分で出来ることは自分でやってもらい、障害を原因としてできないことを支援する構造が原則です。その線引きがとても大変です。

この大変な状態は、どのように脱却しましたか?

今でも脱却できないので「研究」を行っています

 正直なところ、現在も脱却できていません。「利用者にとって良い支援とは」というテーマを追求していくことで脱却する答えが見つかるのかもしれません。これからも研究を重ねていきたいと思っています。

サービス管理責任者からみて「いい福祉施設」と「努力が必要な福祉施設」の違いはどのように感じますか?

施設の職員全体から「利用者の将来に責任を持つ」という意欲を感じるかがポイントです

 福祉施設の良し悪しを決める要因には、支援者が「利用者に良い生活をしてもらいたいと思う気持ち」があるだと思います。「いい福祉施設」では、そのような気持ちを持った支援者が多く所属している印象があります。支援者の気持ちが利用者に伝わり、共に同じ支援方針で目標に向かえるのではないかと思います。

一方で、私の個人的な感想に過ぎませんが「努力が必要な福祉施設」の支援者からは、そのような気持ちを感じることはできません。その原因は支援者ではなく労働環境にあると思います。支援者がサービスの質を決めるといって過言ではありません。事業者はその点を踏まえて、現場で働く支援者とコミュニケーションを取り、労働環境等の改善に取り組むべきだと思います。

これからサービス管理責任者になりたい!と思っている方にアドバイスをお願いします

「サービス管理責任者になりたい」という気持ちがあれば、この仕事はどんどん楽しくなると思います

 サービス管理責任者はとても奥が深い仕事だと思います。障害を抱える利用者の支援方策に唯一の正解は存在しません。これは仕事のやりがいにも繋がると同時に大変さでもあります。サービス管理責任者として良い仕事をするためにも、社会福祉士等の取得により基礎知識を身に着け、現場経験から実践知を高めることが基本だと思います。そして、何よりも「利用者に良い生活をしてもらいたいと思う気持ち」があれば、自ずと仕事が楽しくなっていくはずです。

渡邊知行様の現在の活動

社会福祉事業等を経営している法人の非常勤役員や顧問をしている。また、個人で社会福祉経営や障害福祉に関する内容の執筆・監修、コンサルティング業を展開している。 一方で実業の傍ら、大学院や研究機関で研究に取り組み、2021年に博士号(専門は障害福祉)を取得した。引き続き研究活動にも取り組んでいる。

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