[徹底解説]就労支援事業所開業の全体像について

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H.S.Techマネージャーさん!
私、就労支援事業所で独立するのが夢なんです!
どうすれば開業できるのか教えてください!

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素晴らしい意気込みですね!
昔からの夢だったんですか?

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はい。そうなんです。
私は有名な経営コンサル会社で仕事をしていましたが、色々な事業を見てきました。
特に就労支援事業は、ここ10年間でかなり成長した業界でもありますし、
事業としても優秀であると感じています。
もちろん、「社会貢献したい!」という思いがあり、私自身が障がい者の就労を少しでもサポートしたいと本気で思っているんです。

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わかりました!
ただ、正直に申し上げて、就労支援事業所はそんなに簡単ではありません。
私から就労支援事業所を開業する場合の全体像についてご説明させていただきます。

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就労支援事業開業の期間と全体工程

先ずは、開業にかかる期間についてです。

0から準備をスタートして、最低6ヶ月はかかると思ってください。

ざっくりの全体工程は以下のとおりです。

  1. 就労支援事業所開業の目的・理由の整理
  2. 就労支援事業所を開業するエリアの調査
    特に「障害福祉計画」が重要
  3. 就労支援事業所の開業に向けて資金計画(収支シミュレーション)を実施する
  4. 就労支援事業所の開業を検討している市区町村窓口に相談(同意書が必要)
  5. 就労支援事業所の開業に向けて資金調達の計画立案
  6. 就労支援事業所の開業に向けて法人設立
  7. 就労支援事業所の開業に向けて物件調査
  8. 就労支援事業所の開業に向けて人員確保
  9. 就労支援事業所の開業に向けて市区町村担当者と事前協議
  10. 就労支援事業所の開業に向けて資金調達
  11. 就労支援事業所の開業に向けて備品を揃える
  12. 就労支援事業所の開業に向けて広報用資料整備
  13. 就労支援事業所の開業に向けて職員研修を行う
  14. 就労支援事業所の開業に向けて営業活動を行う

※工程は各市区町村により工程は大きく変わる可能性があります

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え?法律で運用されているのに、市区町村で準備内容や期間は変わるんですか?

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はい。就労支援事業所の運営上、
障害者総合支援法の解釈は市区町村により大きく異なります。

就労支援事業の運営根拠となる「障害者総合支援法」では、法令により様々な基準が設けられております。その条文の中で、解釈が曖昧なものについて、厚生労働省(制度の最高管轄)に確認すると、「最終判断は各行政の窓口に一任しております。」と言われることがよくあります。

つまり、
就労支援事業所の制度解釈では、市区町村の担当者レベルで解釈が異なると言うことです。

○○の地域では不要なものも、●●の地域では必要!
なんてこともよくあります。

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それじゃあ、事業を進めやすい地域もあれば、難しい地域もあるということなんですか?

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はい。その通りです。

制度ビジネスを行う上で、地域差は避けられません。
市区町村の担当者とは、友好関係を築くことも重要なポイントです。

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就労支援事業所開業の全体スケジュールにおける留意点

  1. 就労支援事業所の開業スケジュールは画一的な物ではなく、市区町村の担当者レベルで異なる
  2. 就労支援事業所の開業するなら、市区町村レベルの担当者(さらには、指定権者レベルの担当者)とは仲良くなる
  3. 何はともあれ、最も最初に考えるべきは、事業所開業の目的・理由を明確にする
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行政の担当者さんとは、しっかりと計画を伝えて、進めたいと思います。

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そうですね。地域に根づくためには、地域のニーズを知ることが大切です。
ただ、本当に就労支援事業所を開業したいと思うのならば、
「事業所開業の目的・理由を明確にする」のが最も大切です。

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就労支援事業のジャンルは「事業」でもなく「福祉」でもありません。

「福祉事業」であると考える必要があり、このバランスが大変重要です。

・過去に経営を行った経験がない

・コンサルやFC本部から「儲かる」と聞いた

・利用者さえ集まってしまえばなんとかなる!

・事業なんて関係ない!とにかく福祉をやりたい!

と思っている人は、ほぼ間違いなく失敗すると言うことです。

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私はそんな営利目的ではありません。
もちろん、事業の厳しさも分かるので、利益を創造することを目指します。
その利益は必ずご利用者様に還元し、人生を豊かにしてもらいたいんです!

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その言葉を聞いて安心しました!
しかし、その「利益を創造する」のが最も難しいのです。

その理由をお伝えします。

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就労支援事業所の開業が難しい理由

  1. 就労支援事業は、固定費率の高い事業である
  2. 就労支援事業は、資金繰りが難しい
  3. 就労支援事業は、売上単価をあげることが難しい

就労支援事業は、固定比率が高い事業である理由

就労支援事業所は固定費がとてもかかる事業です。

主な固定費としては、

①家賃

②人件費

③消耗品費用

が挙げられます。

家賃は、エリアによります。

必要な物件の広さに関しては、約100m2でトイレ、手洗い場、事務室、訓練スペース、多目的スペースなどが必要になります。

坪単価10,000円だとして、毎月33万円が必要となります。

※東京都では、坪単価15,000円となることもあります。

人件費ですが、就労支援事業所は開業時点で、4〜5名の人員が必要となります。

国税庁が平成29年度に実施した「民間給与実態統計調査結果」に基づくと、

福祉の平均月収は27万円

エリアや職種によっても変わります。

開業初期は、オーナーを人員に換算し、かつ、無報酬であることを想定すると、

正社員、約3名分の人件費が必要となります。

27万円 × 3名分 = 81万円/月 が必要となります。

そして、バカにしては行けないのが、消耗品費用です。

購入価格10万円以下の備品類になります。

施設で使用する、文房具、紙類、プリンターのインク、清掃道具、事業廃棄物の処理料金などなど、

毎月5~10万円くらいかかってきます。

※月によるばらつきが大きいのも確かです

主要なコストだけで合計すると、ざっと134万円です。

ここで注意するべきなのが、上記のコストは一部であり、ここから社会保険料や交通費、法定福利費、通信費、法人税など、細かい費用が発生します。

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固定費率が高いことは分かります。
しかし、福祉事業であれば金融機関等も福祉枠として融資を検討いただけると聞いたことがあります。
しっかりと運転資金を確保できれば、ご利用者様も少しずつ増えるんじゃないですか?

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そうです。
しかし、その運転資金もポイントです。
何ヶ月分でいくらの運転資金が必要と考えますか?

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まだ収益シミュレーションを立てていないので、なんとも・・・

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では、収益シミュレーション上重要であり、難しい点である「資金繰り」についてお伝えしましょう。

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就労支援事業において、資金繰りが難しい理由

事業を行う上で、資金繰りは命です。

資金が1円でも足りなくなる(資金ショート)したら倒産です。

この点、就労支援事業所は綿密な計画を立てる必要があります。

なぜ資金繰りが難しいのか?

理由は、1ヶ月分の売上が会社の銀行口座に入金されるまでに、約1ヶ月半かかるからです。

飲食店などであれば、

前日材料を買って仕込みを行い、翌日にお店で販売します。

お客さんが現金で購入してくれれば、すぐに手元に売上が残ります。

就労支援事業所の場合、そう簡単にはいきません。

先ず1ヶ月間、事業所でご利用者様の支援を行います。

月末には、1ヶ月間の施設利用実績を作成し、国民健康保険団体連合会にせ-ビス費の請求を行います。

その請求したお金が

会社に入るのは、翌月の中旬です。

つまり、1ヶ月働いた分の売上が会社に入るのは、約2ヶ月後になります。

その間は、コストを払い続ける必要があるわけです。

図 売上入金イメージ

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なるほど・・・。
売上が入る約2ヶ月間の間、経費を払い続ける必要があるのですね。

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そうです。しかも、新規立ち上げ当初はご利用者様は0人です。
月に3人集まったとして、定員いっぱいになるまで約7ヶ月かかります。
単月で黒字化(損益計算書でみて)したとしても、その売上は2ヶ月後に入るわけです。

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なんか、急に自身がなくなってきました・・・。

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不安なところ恐縮ですが、それだけではありまえん。
他にも、就労支援事業所は売上単価を上げることも難しいのです。

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就労支援事業において、売上単価を上げることが難しい理由

ビジネスにおいて、売上を上げるためには、

①リピート率を上げる
②新規顧客数を増やす
③客単価を上げる

この3つが重要です。

中でも、最も優先的に実施するべきなのが「③客単価を上げる」です。

就労支援事業所における単価というのは、

利用者1人が施設を利用することで発生する「サービス費」のことをいいます。

サービス費(単価)を上げる方法は明確です。

●就労移行支援事業所:ご利用者様を一般就職に導くだけでなく、6ヶ月間職場に定着した実績

●就労継続支援A型:施設に通所するご利用者様の平均勤務時間

●就労継続支援B型:ご利用者様に支払った平均工賃の額

つまり、施設の実績が勝負となります。

実績を上げるためには、福祉施設として、利用者の「能力」「技術」「生産性」等を向上させる必要があります。

新規施設で、支援の体制が不十分な状況では、実績を残すことに苦戦し、単価が下がるリスクが高いと考えるべきです。

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私、諦めようかな・・・。
この事業を成立させるのは難しいですね。

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色々言ってしまってすみません。
でも、就労支援事業は全くデメリットだけでは無いんですよ!
しっかりメリットもある事業です。

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就労支援事業開業のメリットとは?

就労支援事業は、「人間関係」の事業です。

就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援それぞれで特徴が異なりますが、

全サービスに共通するメリットは以下の通りです。

  1. 就労支援事業は、制度ビジネスのため競合との価格競争がない
  2. 就労支援事業は、信用力の強さで長期安定的な利益が見込める
  3. 就労支援事業は、労働集約型ビジネスとの親和性が高い

その他の細かい事業の特徴は、下記をご参照ください。

就労継続支援A型とは?

就労継続支援B型とは?

就労移行支援とは?

就労支援事業は、制度ビジネスのため競合との価格競争がない

飲食店や小売業では、価格競争が大変多い業界です。

消費者は、各社を比較して価格の検討は常に行います。

経営者が戦略を間違えてしまったら、事業は大きく傾くリスクがあります。

この点、就労支援事業所の様な、いわゆる「制度ビジネス」であれば、価格競争がありません。

障がい者が事業所を選定する理由に「価格」という基準がなくなることで、戦略が大変シンプルになります。

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なるほど!
価格がなくなることで、人気の出る事業所づくりは別の視点が必要になるのですね!
でも、障がいを持った方は何をみて事業所に来るのでしょうか?

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凄くいい視点です!全国的にみて、障がい者の方は何に関心があるのでしょうか?
その関心を満たせるかもしれない!と思えるかどうかがポイントとなります。
「価格」ではない視点、ズバリ「信用力」となります。信用力があれば、就労支援事業は長期安定的な利益が見込める事業となります。

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就労支援事業は、信用力の強さで長期安定的な利益が見込める

就労支援事業所の信用力は「就職実績」と「収入実績」です。

よく、就労移行支援事業所のHPで、「定着実績90%!」などと記載しているものがありますが、これでは当事者の信用力を勝ち取ることはできません。

(地域の支援機関向けなら、少しは良いかもしれないが)

また、就労継続支援A型、就労継続支援B型のHPに、

「昼食無料」や「送迎無料」のように記載している事業所もありますが、

私が当事者の立場だったら、全く興味がありません。

大事なのは、障がい者が「いくらの収入を得られるようになったのか」だと思います。

とある情報網から、障がい者の方がネットで何を検索するか調査したデータがあります。

その内容を見ると、

GoogleやYAHOO!などの検索エンジンで、「障害者+○○」の検索数で、最も多いのが「障害者+求人」です。

障がいを持った方は、自身が働く環境に強い関心があります。

ではなぜ働くのか?

いろいろな価値観があるとは思いますが、ボランティアで無いのであればお給料は重要です。

事業所作りの戦略として、就職実績や定着実績にフォーカスするのではなく、就職後の収入実績をPRする必要があります。

この信用力を勝ち取り、HP等に記載することで、長期安定的に利用者の問い合わせが入る事業所となります。

元々、売上単価は事業所の運営が安定するように制度設計されているため、「利用者数」が安定することで、長期安定的な利益を残すことができます。

これは就労支援事業所の大きなメリットであると言えます。

就労支援事業は、労働集約型ビジネスとの親和性が高い

就労支援事業を開業後、大変大きな力を手に入れることになります。

それは、紛れもなく「人の力」です。

就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援の全てで共通するのは、「働く意欲のある障がい者」が集まります。

定員の考え方は規定がありますが、

メジャーなのは20名定員の事業所です。

成人が20名集まったら、凄く大きな事業にトライできると思いませんか?

しかも、事業所の家賃や、福祉のプロであるスタッフ、光熱費や消耗品などの設備経費は「給付金」として、国がサポートしてくれるのです。

これほど大きなビジネスチャンスはありません。

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なるほど、制度ならではのメリットもあるんですね!
この様なメリットを活かすために、私はまず何をすべきなのでしょうか?

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ビジネスの基本は、先ず「相手を知ること」にあります。
つまり、障がい者の国内環境について知る必要があります。

マクロ環境文献から紐解くプログラム作成戦略 を読んで見てください。
全国的な障がい者数や、障がい者の就労意欲について把握することができます。

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分かりました!
先ずは読んでみます。

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まとめ

就労支援事業を開設するには、先ずはこの特徴的な福祉事業の全体像を把握する必要があります。

経営視点で言えば、資金繰りの難易度が高いことがあります。

福祉視点で言えば、様々な障がい個性に対して、柔軟に対応できる仕組みが必要です。

これらを踏まえ、開業に向けた工程を進める必要があります。

当サイトでは、良質な就労支援事業所の開設をサポートできるよう、私自身が現場で経験したことや、実際に経営した中で培ったノウハウをお伝えしていきます。